トック氏が送る
ホラー映画レビュー


サスペリア(Suspiria・1977)





「秘密の部屋……アイリスが3つ……青いのを回して!」



ホラー映画紹介、第2回はチョー怖い映画ってことで、−決して1人では見ないでください−のコピーで有名なサスペリア!
監督はイタリアホラー界の鬼才ダリオ・アルジェント。不条理な死。おどろおどろしい音響にドギツイ色彩。しかし圧倒的に美しい映像。
デビッド・リンチの映画が「まるで悪夢を見ているような」と表現できるならば、ダリオ・アルジェントの映画は音楽付きの絵画を観ているような、と言い表すことができる。
凶器を様々な角度からとらえたカメラワーク。恐怖に歪む女優の表情。妥協のない殺しにゾクゾク来てしまうのだ。
代表作は本作を初め「サスペリア2」「フェノミナ」「シャドー」。「フェノミナ」はゲーム「クロックタワー」のモトネタ。
墓標に来る人は知ってるのかな?ゲーム好きだもんね。「クロックタワー」が好きな人は「フェノミナ」も観て。きっと満足できるはず。
もしサスペリアでダリオ・アルジェントの世界にハマってしまった方がいるのなら、上の3つだけと言わず全作観ることをオススメします。


ちなみに「サスペリア2」は本作の続編ではありません。「サスペリア」の2年前に撮られた映画です。

え?どーして「サスペリア2」なのに「サスペリア」の前なの?

「サスペリア」が「サスペリア2」よりも前に日本で上映されたことも原因のひとつですが、
本当の理由は「サスペリア」が予想以上にヒットしたから。
当時「サスペリア」は公開されるや否や12億を超える興行収入を記録。ホラー映画としては異例とも言える大ヒット。

サスペリアバカ売れじゃん!

味を占めた映画会社側は2年前に撮られた「Profondorosso(DEEP RED)」に「サスペリア2」という邦題をつけ上映に踏み切ったのです。
「サスペリア」が問答無用で迫ってくる動の恐怖なら、「サスペリア2」は背筋にぞぞぞ、と来る静の恐怖。
両作ともにダリオ・アルジェントの名を一躍日本に知らしめたのでした。




あらすじ

ドイツの古都に響く雷鳴。降り注ぐ雨粒。真夜中、スージー・ヴァニオンは空港に降り立った。
バレエ名門校に入学するため、アメリカ・ニューヨークからやってきたのだ。
雨の中、ずぶぬれになりながら拾ったタクシーに乗り込み、バレエ学校へ向かうスージー。

「エッシャー街へ」

新しい街は何処か陰鬱な雰囲気を漂わせている。車の窓を通して警告のような雨音が響く。
無言のまま走り続ける運転手。重苦しい空気に不安を感じたスージーが口を開く。

「ずっと降り続くのかしら?」

「・・・・・・30分で止むさ」

運転手はつぶやくようにそう答えた。

やがて赤い館が見えてきた。バレエ学校だ。スージーは急いでタクシーから降り、玄関のインターホンを鳴らす。

「スージー・ヴァニオン、新入生です。雨が激しくて……、入れてください。手紙だってあるわ」

しかしインターホンから聞こえてくるのは拒絶の言葉だった。

「知らないわ!もう行って!」

途方に暮れたスージーは再度タクシーに乗り込む。ふと外を見ると、森の中を走る少女の姿。

見間違いかしら?いや、違うわ。何者かに追われているようなおびえた表情・・・・・・。

少女はこちらを見て何か口走りながら、そのまま近くのアパートへと駆け込んでいった。

今日は町のホテルで一泊しよう・・・・・・。

スージーを乗せて走り去るタクシー、アパートの中に逃げ込んだ少女を襲う恐ろしい影。




作品感想

ゴブリンが紡ぎだす幻想怪奇な曲調に載せて始まるオープニング。白いブラウスを身に纏った華奢な少女が不安げに歩く。
空港のロビーはやけにカラフルで、何処か機械的な印象を与える。
それがタクシーの中では一転して、暗闇に赤い照明をつかい、おどろおどろしい森の様子が映し出されていく。
この映画はファンタジーである。もっとも舞台が丸っきりファンタジーというわけではない。
古めかしい街並み、怪しげなバレー学校、プール。紛れもなく時代は現代に設定されているのだが
それらはどこか現実的な雰囲気を感じさせず、それどころかまるで自分がおとぎ話のような世界に入ってしまったかのような感覚に陥る。
ストーリーもバレエ学校に住む魔女の話、つーことで、どこかオカルト的な匂りが漂う。
ダリオ・アルジェントは「白雪姫と七人の小人」から影響を受けたと語っており、それが作品の雰囲気に関係しているのだろう。
アルジェントの映画を観る時、俺はストーリーや展開の細部について余り気にしないことにしている。
「サスペリア」を見ている時だって、突拍子に感じたり、どうしてそうなるの?と思ってしまう部分は少なくない。
例えばスージーが急にミリウス教授に魔女の説明を受けるシーンは強引に感じてしまう。
殺人鬼はどこに行ったの?なんて疑問に感じる人もいるだろうし、ラストの展開もやることやったから終わらそーぜ的な感がある。
けれどこの映画は決して駄作とは言えない。なぜなら怖いから。本当に怖いから。
恐怖が描けていて観客を怖がらせることのできる映画はストーリーがどうであろうと展開がどうであろうとそれだけで名作なのだ。
リアルの死と映画の死を、観客に相対化させること。それがホラー映画に必要な一部分であると思う。
「お前はすぐ死に会うよ!生きている死に!」と叫ぶ魔女の悪魔のような声。ドアを開きゲハハハハ!と迫り来る友人。
俺はこれをガキの頃に見てしょんべんちびった。マジで。いや情けない話ですが。
俺がしょんべんちびったのは後にも先にも「サスペリア」を見た時とドリフ大爆笑で階段落ちのコントを見た時だけでーす。
それから、恐怖描写の中でも特に殺人シーンに対する凝り様、死に様の凝り様は他の追従を許さないと言ってもいい。
観ていただければ分かると思う。わざとらしくない悲鳴。ナイフで胸を突き刺され首に縄を絡めて落下する女優。ぶらさがる死体。
それらを恐怖と同時に何処か美しく感じさせてしまう力がダリオ・アルジェントの映画にはある。
美しいと表現することは倫理的に不味いかもしれないけれど、とにかくそう見えるのだから仕方ない。
「サスペリア」は殺しの怖さ、美しさに全てを賭けたホラー映画職人が創った映画なのである。




  こんなのとか。





ちょっとマニアな話

映ってます〜〜!稲川さん映ってます〜〜!

 

「こんばんは。稲川淳二です。実は・・・・・・私、最近妙な体験をしたんです・・・今日はそれをみなさんにお話しようと思います・・・・・・。
 ことの初めは・・・ADのガンちゃんと映画観に行った時のことなんです。サスペリアって昔のホラー映画ですよ。
 始まった瞬間ですよね、変な、こーなんてゆーのかなー、嫌な感じがしたんですね。ええ、最初のタクシーに乗り込む場面です。
 あんまり気になったもんですから、私その後ビデオ借りて嫌なシーンを確かめてみたんだ。
 そしたら映ってんですよ!!ええ、ホントに映ってるんです!これがそのシーンです・・・・・・。カメラさん、どうぞ」








 「どーですか・・・・・・。一見しただけでは分かりづらいでしょうか・・・・・・。それではカメラさん、アップお願いします・・・・・・」





 

 

「うわ〜〜映ってるよ〜〜!映ってるよこれ〜〜!霊ですよ。生きてるもんじゃないよ〜〜!
 みなさんね、よく考えてみてください。夜中の3時にカメラ回してて、周りにスタッフがたくさんいる。本番中の明かりついてる。
 わざわざ真正面に立って映るバカはいない。それでなくても雨がざーざー降ってんですよ!?周りにスタッフ以外の人間がいて気づかないわけがない。
 ましてや首の部分に人の顔が映ってる。そうなんだ、ありっこないんだこんなこと!
 で私なんだか気になったもんですから、ええ、監督に直接行って聞いてこようということになってですね。行ったんですよ、イタリアまで。
 そしたら切符の手配した人、目覚まし時計が鳴らない。起きられない。でイタリア行けない。原因不明。
 一緒に連れてったADのガンちゃん、空港の階段で転んで膝すりむいた。めちゃくちゃ痛い。
 で私の嫁、家の鍵くれない。家入れない!」




「・・・・・・そんなこんながありまして、やっとイタリアに着いたんです。
 ところが監督がなかなか見つからない。やだな〜やだな〜やだな〜ど〜しよ〜ど〜しよ〜ど〜しよ〜。
 しょうがないんで町役場で住所調べて監督の家行きましたよ。門の前で『いや、そこを何とか』必死になって頼み込んでようやく入れてもらった。
 不気味な人でしたよ。ええ、映画の中に出てきてもおかしくない。そんな格好してた。でいよいよですね、ここまで来たら聞くしかないわけだから、
 ポケットから写真を取り出して『実は・・・・・・あなたの映画に映ってる男の首に・・・』そこまで言った時、ん?
 ・・・・・・おかしい。なにかがおかしい。よくよくじっ〜〜と監督の顔を見たら・・・・・・、
 ふぁああああっっっっ!!!!
 その写真の男ですよ、目の前の監督にそっくりなんだ〜〜〜!!!
 そしたら監督が口を開いて『ああ、これね。俺が入れたんだよ。俺の顔だもん』なんていいやがるもんだから、
 しゃれにならんぞおまー!しゃれにならんぞおまー!しゃれにならんぞおまー!しゃれにならんぞおまー!(×12)
 ・・・・・・ええ、そういうこともあるんですねえ」




 ←ちなみにこの人がアルジェント。ヒートアップすると素で『殺しのシーンは私が1番上手くやれる』なんて言い出すから要注意だ。



それではまた。次回は13日の金曜日記念!ということでジェイソン特集でも組もう。
えー今どこまで出てんだっけ?part9?いつまでやってんだテメーは。ジェイソンに一言物もーーす!


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