満月を雲が靄のように横切る。
もう動かない柏崎理香を見守る三宮芳弘の表情は嘆きに満ちていた。

「死なせる必要など、どこにもなかった……!」

悲しみと、自分への怒りで言葉も荒く佇む。
麻宮アテナは強力な精神波と共にテレポートで消失。追撃部隊の編成許可を。
その報告を聞いた三宮芳弘は屈み込み、もう一度、柏崎理香を見つめたまま、
もう何も口にすることはなかった。

柏崎理香はどうやら本当に死んでしまったらしいが、
私のプレイだと彼女はすでに三度も恐竜に捕食されているのでいささか今更感がある。
こうなってしまっては、むしろ今まで生きていたことに
軽い違和感を感じていたのを告白せざるを得ない。
しかし、親友を失ったアテナの叫びは天を衝いたまま、どことも知れぬ場所へ体を移していた。

「理香っ! 理香ーっ!!」

荒れ狂うサイコパワーを収めようともせず、アテナは叫び続けていた。
それを、静かな声が止める。
コードナンバー AE-Sb10 コードネーム『ペロプス』
声の主はマサトだった。

ここは、かつて夢で見た場所。WADの地下研究施設―― E.A.R.F。
全てが始まった、今は誰もいない場所。
アテナの無意識はなぜかこの場所へと向かっていた。

「柏崎理香を傷つけられたという怒りが、無意識の内に君をここに飛ばしたんだ。
 それほど君は柏崎理香のことを思っていた……」


なぜ柏崎理香を思っていたら無意識にWADの地下研究施設へ飛ぶのか
正直、意味が解らない。ここまで来て意味が解らない
意味が解らないが、柏崎理香の名を聞き、彼女のことを尋ねるアテナ。
だが、柏崎理香がどうなったのか、マサトは答えない。答えられない。

「理香は関係ないじゃない……」

このE.A.R.Fの最深部にはタンタロスがいる。マサトは決意を込めて言った。

「この街の支配者。そして、君の本当の敵」

タンタロスを倒せるのはアテナの力だけ。タンタロスはアテナが倒さねばならない。
それを拒めばアテナは一生追われ続け、そしてまた柏崎理香のような犠牲者を作る。
誰かが止めなくてはならない。マサトはそう、力強く語る。

「今こそ考えてごらん。君が力を持って生まれた、その意味を……」

自分一人で逃げて、それで生きていくなんて……
「あたしにはできない!」

それがアテナの答えだった。
どうにも“脅迫”“洗脳”という単語の浮かぶ強引な理論だが、アテナは戦う決意を固めた。

しかしアストライオスは彼自身に問題(欠陥)があったと見れるし、柏崎理香は自爆。
タンタロスは街を支配してるだけで特別何も悪いことはしてないと思うが……
別に圧政を強いているでもなし、むしろ病院や水族館を管理して発展させているような気が……
しかも人類の歴史を根底から覆す壮大なバックボーンを持ちながら支配しているのが街一個
実際、あまり害はないような気がするが……

だが、横暴により狙われているのは事実。ならばアテナとしては黙っているわけにはいかない。
かくしてアテナとタンタロスの割と個人的な生存競争は始まった。
階段を下るとほどなくてして、ゴキブリのような黒い学ランの男、椎拳崇を発見。
恐るべきストーカー技術。椎拳崇はテレポートをしてすら振り切れない。

「わいはアテナのナイトや!! どこまでも、一緒やで」



そして肉まんをくれた

かくして椎拳崇がついにパーティに加わり、アテナが一歩歩くと椎拳崇も一歩歩き、
踏み込んで走ると椎拳崇も走り出すという非常に恐ろしい状況が生まれた。
RPG等で普通によく見られる光景だが、
今作の場合なぜか尾けられているようにしか見えない

しかもまたしても引っ掛かるため歩き難い。
本当にこの男はどうしたものかと困り果てながら辿り着いた資料室で、
驚くべき事実が発覚した。

麻宮アテナ 私立清嶺学園1年A組 生年月日 2002年3月14日
身長163cm 体重49kg 血液型B
椎拳崇 私立清嶺学園1年B組 生年月日 2001年9月23日
身長172cm 体重61kg 血液型B

以上、2名のW市内の高校生は、全市民の定期的な機能チェックの結果……
古代種人類の遺伝子配列に酷似したパターンを持つ人間であると確認された。


椎拳崇も、この世界でもサイコソルジャーだったのである。
三宮芳弘はこの“二人”を監視するために派遣されたエージェントだったのだ。
その割には拳崇の方は完全スルー。
マサトはマサトでタンタロスを倒せるのはアテナ“だけ”としきりに言っていたが……
やはり椎拳崇の評価は使えない男で満場一致なのだろうか。

意味を理解していない拳崇はそんな事実に驚くでもなく、二人はさらに地下へと進んだ。
するとイベントが起こり、拳崇がはりきって先走った結果、
彼はドアの向こうに閉じ込められ、二人は二手に別れることになった。
歩き易くなったのは良いが、結局彼は何のために仲間になったのだろう。

進むアテナが辿り着いた先は、コールドスリープルームとの看板が掲げられていた。
凍える寒さの向こうで一人の女性が眠っている。
氷結されたカプセルの中、声は届かない。アテナはテレパシーを行った。
第一声は、「大丈夫ですか……?」 大丈夫ではないだろう

アテナは彼女を知っていた。女性の名は高沖―― 高沖清乃。

古代人の素体を基にした初期原始人工生命から十数年の年月をかけて遥かな進化を遂げ、
自我も、自己防衛本能も、征服欲すらも身につけてしまったプログラム。
複数の意識と自我、そして古代人の意志を持った存在。
第千三百五十六世代ニューロコンピュータプログラム AL-X00Es 『タンタロス』

肉体を持たぬタンタロスは自分の手足となる、超能力を持った人間を求めた。
それがアストライオスとペロプス。
だが、人為的なそれらでは僅かな生体パーツにしか成り得なかった。
アストライオスは狂人と化し、ペロプスの命はあまりにも儚い。

高沖清乃がやがて過ちに気づいたときにはもう遅かった。
「研究を阻害するものは、除外する。かつてあなた自身が行った様に」
皮肉か、信望か、そんなメッセージと共に、タンタロスは母を氷の中へ封印した。

話も終わりに差し掛かったとき、突如警報が鳴り響いた。
タンタロスに気づかれた。アテナは再び走り出す。
アテナが部屋を出た後で、マサトと高沖清乃は最後の語らいを持っていた。
本当に最期の、別れの会話。それは本当の母と子のようだった。

一方のアテナは最後のセーブポイントを通過し、ついにタンタロスと向き合っていた。
ムービー。いつかのモニター(ゼーレ)から、曇った何人もの声が聞こえて来る。
だが、本当に何を言っているのか聞き取れない
生体パーツとされているペロプスの本体の口が動いた。
だが、それも何を言っているのか聞き取れない
結局、何を言われているのか聞き取れないままに戦闘に雪崩れ込んだ。

マサトがパーツにされているというのに全く容赦せずサイコボールを打ち続けるアテナ。
モニターを一つ、また一つと破壊して行く。

尚、このゲームは体力と超能力ゲージが共有なので、
超能力を使えば使うほど死に近づくことになる。
つまりタンタロスの攻撃でもダメージを受けるし、
自らサイコボールを撃ってもダメージを受けるのである。
よって必然的にアテナは回復アイテムを食しながら戦うことになる。

回復アイテムと言えば…… そう、肉まんだ。肉まん片手にサイコボール。
肉まんを食べながら超能力を打ち続けるセーラー服の少女vs機械。
こんなラストバトルは見たことない

「麻宮アテナ。我々を完全な生命へと昇華させる、進化の鍵よ」

麻宮アテナを新たなる生体パーツとして完全な生命への進化を遂げる。
だが、そのタンタロスの目的は次第に変わって行く。麻宮アテナがあまりにも強大すぎるのだ。
過剰攻撃による殺害のリスクを捨て、
なりふり構わず麻宮アテナにガトリングガンを打ち込むタンタロス。
だが、効かない。サイコシールドと肉まんによりどんな攻撃も無力だった。

「麻宮アテナとの融合によって、我々の方が支配される確率5.09パーセント。
 過去の試算の一千万倍以上の高確率」

麻宮アテナの存在はあまりにも危険すぎる。
タンタロスの緊急裁決は、荷粒子砲による麻宮アテナの完全消去を可決した。

だが、タンタロスもまたアテナの力を恐れ過ぎていた。
どんな能力があろうと、アテナはただのポリゴンの女子高生。
肉まんも尽き、その実、彼女にも限界が迫っていたのだ。
目の前で蓄えられるタンタロスの圧倒的な火力。
膝を突くアテナはそのチャージを絶望の表情で眺めるしかない。
ここまで追い詰めての、残酷な結末――……

そう思われたその時――!!



ナイト覚醒


突如駆けつけたナイトの援護を受けたアテナは最後の力を振り絞り、
全力のサイコボールをタンタロスに撃ち込む。
それはライバル、アストライオスにも劣らぬ巨大な砲弾だった。

ムービー。崩壊するタンタロス。だが、マサトの苦しげな声が決着を否定した。
まだ、心臓部のクリスタルが残っている。それがある限り、タンタロスは何度でも甦る。
タンタロスの支配を逃れたマサトの本体が消え行く最期の命を使い、心臓部への道を開く。

「もう僕には時間がない…… 急いで、アテナ……!」

その言葉に強く頷き、一歩、また一歩とゆっくり徒歩で階段を進むアテナ。
緊張感は伝わるが、何か間違った演出を見てしまった
最後の力を使い、苦しげに、
呻くようにアテナの名を呼ぶマサトを無視してゆっくりゆっくりと歩を進めるアテナ。
軽い拷問ショーである。



美しい輝きを放つクリスタル。
それを壊せばタンタロスは全てを失い、無に還る。
当然、その瞬間にマサトの命も……

だがアテナは何の躊躇いもなくあっさりとサイコボールを打ち込んで全てを終わらせた。
ポリアテナはこういう所は非常にドライである。拳崇も忘れられている

マサトの最期を看取るアテナ。

「これが僕の運命なんだ…… 造られたモノには、これが一番、ふさわしい……
 でも君は違う……! 君の力には、必ず、意味が、ある……」


結局、何故アテナが超能力を持って生まれたのかは投げっ放しにマサトは逝った。
同じ力を持つ椎拳崇はやはりスルーである。
というか、マサトは初めから彼女らの能力の秘密は知らなかったらしい。

この後、ビルを出たアテナ達の前に三宮芳弘が現れ、
もう監視はしないという旨と、柏崎理香の死を告げる。
首を横に振る三宮芳弘を見てアテナはよろよろと崩れ、握り締めたペンダントに涙を零した。
そしてEDムービーが流れ、終了。



ゲーム自体が投げっ放しである。

オイィィ! 結局、アテナの超能力は何だったんですか、オイィィ!!
何でアテナと拳崇は古代種の遺伝子パターンを持ってるんですか、オイィィ!!

ていうか、その前にコレ明らかにバッドエンドだろ、オイ!
夢工房はなんでこんなバッドエンドなんか作ってるですか!
オレ多分どっかで分岐、間違っちゃったよ! やめて下さいよ!
今までの全てを否定するような真似はやめてくださいよ!!

うっお―――っ!! くっあ―――っ!! ざけんな―――っ!