前作(>プロ野球スピリッツ3)で堅実な進化を遂げたプロスピ。
だが、ゲームバランスの不自然を見ればリアルにはまだ遠く、完成したとは言えなかった。
そして今回、4の発売ということで、
しかし一見、前作のように目に見えた新システムや新モードの追加は見当たらない。
せいぜいが応援歌作成や各モード、オプションの細かい充実程度だ。
ただのいちゲームとしてこのシリーズを遊ぶ人にはあまり変わっていないように見えるだろう。

が、しかし、実は今回“リアル野球”としてのバランスこそが、大幅に強化されているのだ。
もはやコアなプロ野球ファンにしか評価されないような些細な修正ではあるが、
逆に野球ファン視点で見ると致命的でさえあった前作までの欠点を完璧に克服している。
断言しよう。3までの野球ゲームとは比較にならない。
昔、エモやんの10倍プロ野球というゲームがあったが、プロスピ4はプロスピ3の10倍面白い

20年以上の年月の果て、野球盤まで遡れば50年か、
ついに野球ゲームは完成したのだ。

推奨難易度

CPU打撃 強い+
CPU走塁 スピリッツ


他は好みで良いが、この二つはリアルなバランスを楽しむにおいては絶対と言える。
打撃“強い”以下ではCPUの長打率が低く、CPU走塁は基本的に積極性が薄い。
ホームに還れそうでも気弱なことにストップしてしまう。
そのため、この二つの設定を弱くすると被安打15で余裕の完封等、変なバランスになるのだ。
打撃は慣れるまでは好みで下げても良いし、強い+でも弱いと感じるならさらに上げても良いが、
走塁だけは最強設定にしておくのがベストだろう。

後、確証はないが、CPU投球カーソルは“表示しない”で打つ方がリアルに三振を獲れる気がする。
この設定を“表示する”にすると恐らく、CPU打者にもこちらの投球カーソルの動きが見えており、
良いコースに決め球を決めても空振りを獲り難いように思われるのだ。
根拠は失投して見当違いの場所へボールを投げてしまった際、
“表示する”なら本来投げたかったコースにCPUが空振りし、
“表示しない”ならしっかりと弾き返して来ることから。
“表示する”の場合はどんなに良いコースに投げてもそれこそCPU投手がそうするように、
リリース直前にカーソルを動かして惑わす必要があるのではあるまいか……

と、感じるので以下の記事もこの設定を前提とする。

完璧な進化

では、何が進化したのか? 細かく見ていこう。

■ゲッツー周りのバランスが完璧になった
3では転ばせばまずゲッツー。俊足だろうが左が引っ張ろうがゲッツーゲッツーゲッツーまみれ。
およそ“プロ野球”のバランスとは言えなかったのだが、ここに大幅修正が施されている。
基本的に、3のレビューで書いていたそのままの進化が成された。

つまり、

・ゲッツー崩しのモーションが入った
・捕球体勢が悪いと肩が落ちるようになった


二塁でクロスプレイ気味になるとランナーの妨害スライディングが出るため守備側の体勢が崩れ、
一塁転送が逸れたり弱くなったり、ワンバウンドしたり、最悪、悪送球になったりとする。
打球も野手の正面から逸れれば捕球体勢補正でゲッツーは捕られ難くなるし、
そもそもゴロのバランスも改善され、弱い打球や高いバウンドになれば
ゲッツー崩れ、進塁打を期待出来るのだ。
さらにゴロで野手の間も抜き易くなっているため、
ランナー一塁で右に転がす、という作戦がリアルに、大きな意味を持つようになった。完璧だ

これにより足の速い選手の価値が現実通りに、大幅に増すことになった。
左の俊足打者なら“強い打球が野手の正面を突く”というシュチュエーション以外では
まずゲッツーを逃れられるので、強気に一二塁間へ引っ張れる。作戦の幅が増える。
逆に言えば左の俊足でも強い打球が正面を突けばゲッツーになってしまうこのバランスがまた凄い。
加えて、一塁ランナーの足が速ければ二塁で
ゲッツー崩しスライディングが発動し易いのも言うまでもない。
盗塁、ベースランニング以外でも足の活きる場面が圧倒的に増しているのだ。
少々打力が低くとも足が速いなら充分に使う価値のある選手だ。

守備側の視点で見れば、打球を正面で捕れる守備適正、
体勢が崩れても送球が逸れないスローイング、肩の強さの重要度が増した
ことになる。
今までいまいち実感し難かった内野の名手の存在感を現実さながらに感じられる。完璧だ
ゲッツーを獲り難くなったため、逆にゲッツーに仕留めた際の爽快感も劇的に増している。
低めに集めて狙い通りにゲッツーを打ってくれるとTVの前でガッツポーズを抑えられない。
よっしゃァァァァッ!!

■普通に一試合2つくらい四球を出してしまうようになった
今回、高難易度でもCPUが適度に四球を出すのは当然、自分もついつい歩かせてしまう。
どういうことかと言うと、ストライクゾーンの枠線上に投げるとストライクかボールか、
プレイヤーには判別が付かない
のだ。ランダムなのか? というほど判定がバラける。
しかし、枠線上に投げないと抑えられないため、
意図せずしてボール先行してしまうケースが一試合に二度三度は必ず訪れる。
そこで妥協して真ん中寄りに投げれば待ってましたと長打を喰らうのだ。

ということで、ボール先行してしまったケースにこそ枠線上に投げる必要性が生まれる。
しかし、狙い難いうえにどちらに判定が転ぶのか解らない。よって四球になってしまう。
そう、本当にリアルに、どうしても四球を出してしまうのである。
また、今回、CPU打者がかなりファールで粘るようにもなっているので、
フルカウントから投げる球がなくなって結局、四球覚悟で
ボールになる変化球やコーナーを狙うしかない、というケースも多々発生する。
ここまで自然に四球になる野球ゲームなど存在すまい。完璧だ

■CPU打者のAIがかなりリアルになった
とりあえず、フォークで空振りを獲れるようになった。むしろフォークが強い。
決め球に使えるのは当然、初球から狙って来る打者にいきなり投げると
現実さながらに空振りが取れたりする。もちろん、フォークのみでなく落ちる球全般が有効だ。
(ただし露骨にストライクからボールではなく、低めギリギリストライクかボールか、自分でも解らない場所へ落とす)
反面、ストレートがやや弱体化したようで、
そこそこ程度の球威の投手が決め球に使うのは難しく感じる。
高めストレートで勝負出来る投手は現実通りに限られた印象だ。

適度にボール球を振るようになったのも大きい。
そう度々振ってくれるものではないが、見せ球に外したボールを
「えっ? 振ってくれるの!?」とばかりに空振りされると非常に得をした気分になる。
ボール球を振らせて三振を獲るともう堪らない快感だ。

実際のところ現実の打者はもっと高確率でボール球を振るし、
とんでもないクソボールに手を出すことも度々とあるのだが、
ゲームバランスを考えれば致し方のない妥協点か。
そういうシーンが見たければ難易度を下げろ、ということなのだろう。
さらに先にも書いた通り、ファールで粘るようになったのもリアルだ。
粘られながら、これでもかッ! これでもかッ! と決め球を投げ込むのが熱い。

で、尚且つ気を抜くとボコボコに打たれ、集中すれば二桁奪三振を狙えるという
絶妙のバランスに仕上がっているのだからもう、完璧としか言い様がない。完璧だ

■配球を考える意味合いが増した
打者AIの続きとして、今回、ピッチングを行っていて、“詰んだ……”と思うことが多い。
もうベストピッチだろうが何だろうが、何を投げても打たれるという状態になってしまうのである。
しかしそこでピッチャーを代えると、不思議と単純な配球で打ち取れたり、
失投してもあっさりと打ち損じてくれたりする。偶然ではない。

これは恐らく、先発投手が投げたコース、球種を打者は記憶し、
二打席目、三打席目と回が進むごとに対応力、ゲーム的に言えば難易度が上がっているためだろう。
さらに当然、終盤に行けばスタミナが目減りし、球威や目押しの難易度が上がるのも要因か。
しかしここで投手を代えると、このCPU打者の強化された対応力がリセットされるのだろう。
だから投手を代えれば意外と簡単に連打を止めることが出来る。
旧作からそういった傾向はあったが、今回、かなりリアルにそれを実感している。

そこで先発投手を長いイニング持たせようと考えたところ、
一番打ち取り易い配球、相手の苦手コースにこちらの得意の球種を投げて追い込む、
というパターンは温存しておく必要を感じた。
余裕がある場面では使わず、回の先頭打者のとき、ピンチのときに取っておくのである。
そうすると“詰み”難いのだ。
つまり、苦手な球種も投げる必要があるし、相手の得意コースにも投げる必要がある。
ボール球から入る必要もある。結果、打たれるのを覚悟してでもだ。

安全な配球ばかりを繰り返すのではなく、
一発喰らっても問題のない場面で強打者のインハイを責めることにより、
逆に絶対に一発は喰えない場面で低めに集める効果が増す。“詰み”を避けられる。
どうしても詰んだら投手を代えて流れを切る。

経験上の推測ではあるが、恐らくここまで考える意味のあるゲームである。
ピッチングが抜群に面白い。

■まとめ
ゲーム的に見れば確かにこれらは本当に些細なバランスの微修正であるのかも知れない。
しかし、その微修正でどれだけ、どれだけ圧倒的に3から完成度が増したのか、
野球ファンにはもう語るまでもないだろう。
私には冒頭の通り、“野球ゲームはここに完成した”という結論以外に見出せないのである。
難点としては、プロスピ4をプレイする方が現実の野球中継を視るよりも面白いため、
視聴率復権には貢献出来そうもないというのが問題と言えば問題か。

進化の余地はまだあるのかい?

正直、後はもう、ロード時間、セーブロード、ブラックアウトの短縮やバグ処理落ち撲滅、
選手データアップデートの対応、パスワード関連の見直し、
応援歌は(著作権絡みで)無理でも自作選手くらいは個別ファイルでWebを介して交換可能に、
グラフィックの強化、モーションの追加修正、
演出強化といった肉付け部分しか手を入れる場所がない気がする。
ゲームバランスに関わる部分ではせいぜいがCPU監督のAI強化といったところだろうか?
技術的に難しそうだが、バット(グローブ)とボールが滑らかに連動するようになれば
本当にもうリアル野球中継にも匹敵しよう。
それでもまだ細かい要望がないわけではないので最後にちょっと書いておくね。

・球種別に球速設定と調子の変動を!
ヌァムコの方では設定されている球種別の球速設定は絶対必要。
140km/h半ばのフォークが武器の斉藤和巳がシステム上、
どうあっても135km/hしか出ないのはリアルからかけ離れている。
後はせっかく調子くん? のキャラを売ってるのだから球種別に調子の設定が欲しい。
今日はストレートは悪かったけど、カーブが良かった、のようなよく聞くコメントの再現を!
打者側としては今日はスライダーがストライク入ってないから直球一本で狙おう、とか。

・キャッチャー動いて!
先のバット(グローブ)とボールの連動と少しかぶるが、
敬遠指示してるのに捕手の人が立ち上がりすらしないのは如何なものか。
もっとちょこちょこインコース寄ったり外に構えたりと動いて欲しいし、
城島ばりに捕手から牽制が来ればフィールドプレイの緊張感も増すはず。動いて、捕手の人!

ハーフスイングを!
ハーフスイングを入れるとバッティングのレスポンスが変わってしまうかも知れないが、
いっそCPU専用の演出でも良いのであの、
振ったか!? 止まったのか!? 一塁塁審どうだ!? という緊張感の再現を!

・バット折りを!
バット折りはそろそろ入ってないことの方が不自然ですらあると思う。
バットをヘシ折るシーンはやはりピッチングの華、三振と双璧のあの爽快感が存在しないのは寂しい。
是非とも次回はバット折りの再現を!

・バット投げを!
中村ノリのバット投げが昔はあったような気するんだけど、気のせいかしら?
やはり小久保、中村らフォロースルーから流れるように放たれる
美しいバット投げ専用モーションは当然、
後は空振りやファールの度にバットをフェアグラウンドに放り投げるS崎捕手の殺人技も再現を!

・自打球を!
自打球を!

・乱闘を!
ファイティング武術(ウーシュ)辺りからモーション流用を!