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忌まわしい思い出……
この季節になるとふとあのタカラ餓狼を思い出す……

当時のボクはまだヨチヨチ歩きの小学生だった。
スト2にハマったものの行列ゆえに思うようにプレイままならず、
なんとかその渇きを癒そうとメガドラのストリートスマートや
変な宇宙人がプロレスするゲームを購入してしまった。そしてとても後悔した。
特に宇宙人プロレス(キングオブモンスターズではないです)には痛い目に遭わされた。
もうほとんど致死量に達さんばかりのダメージだった。

その後、発売されるSFC版スト2をデパートで予約の末、発売日購入に成功。
当時、人気ソフトを発売日に入手するのは非常に困難であり、
見事それに成功したボクはちょっとしたヒーローになった。
連日連夜行われる友達との対戦祭り。
飛び交う波動拳。唸る昇龍拳。そして悲鳴を上げる親指

そんな酒池肉林の饗宴がひと段落付いた頃にソレは発売された。

タカラ餓狼

家でやり狂った結果、スト2熱は落ち着いたものの格ゲー熱は冷めることを知らず、
当然、ゲーセンでプレイしてそのスト2にはない独特の魅力に
ノックアウツされていた餓狼伝説もターゲッティング範囲内。

というよりも、当時はスト2以外に“格ゲー”とカテゴライズ出来るゲームは餓狼しかなかった。
スト2をパクろうにもパクれないほどスト2は偉大であり、
一見似たようなゲームでもおよそ格ゲーと呼べる代物ではなかったのだ。
よくわからない宇宙人格闘(買ってみたらプロレスだった)を買ってしまった
ボクが言うのだから間違いない。

すでに格ゲー狂となる兆候を見せていたボクは餓狼もいささかの迷いもなく予約購入を決行。
濃いぃテリー、アンディ、ジョーの目線が威圧感を放つ箱をドキドキしながら空け、
新品カセット独特のシャキッとした箱の感触。
今も嬉しい匂いとして記憶されているカセットを包むビニール、
そして染み折れ目ひとつない綺麗な取り扱い説明書をキラキラと見つめる。

ついに…… ついに餓狼がプレイ出来るんだな……

そんな思いに胸を詰まらせながら、SFC本体へとカセットを挿入。
スイッチを入れて、タイトル画面とにらめっこ。まだドキドキしてる。

さぁプレイだ!

自分をじらしながら、その感覚を楽しみながらも気合一閃!
ついにボクの指はスタートボタンを奥まで押し抜き、
そしてゲーセンで見慣れたお馴染みのキャラクター選択画面が登場した!
ドキドキ感は最高潮!

実はこの初代餓狼伝説はゲーセンで最後までクリアした初めてのゲーム。
いつもは大きなお兄ちゃん達がたくさんいてプレイできなかったんだけど、
お父さん、お母さんによく連れて行ってもらったデパートの
寂れてるけど暖かみのあるゲームコーナーだけはいつも空いてて、
そこでボクは初めてアーケードゲームをクリアしたんだ。
ギャラリーはお父さんだけだったけど、
あの感覚はテストで100点を取った時とも違う不思議な優越感に満ちていた。


キャラを選ぼう!

選択キャラクターはあのときと同じ、斬影拳のアンディ!
何度も練習してやっと出せるようになったアンディの斬影拳で
並み居る強豪達をたちどころに血祭りにするんだっ!

ラウンド1! 始まる!

さぁまずは斬影拳を出して遠い間合いから斬影拳で接近して斬影拳で転ばせて起き上がりに斬影拳を重ねてまた倒した相手に斬影拳を重ねて起き上がったところにまた斬影拳を出して……



………………



出ねぇよ! 斬影拳!!


ちょっと待て。なぜ最も簡単なコマンドであるはずの斬影拳が何度やっても出ない。
パッドか? パッドだから出ぇへんのか? パッドがあかんのか?

ほな、ゆっくり入れてみよ。
正確に左ナナメ下、右て入れれば出るようになっとんや。
そういうメカニズムなんやから出んほうがオカシイ。絶対出るはずやで。
ほら斬影〜〜〜ッッ!!


出ねぇよ!!


出ない。どう足掻いても出ない。
何をどう間違ったらあの二方向コマンドが天覇封神斬超えの難易度になるんだ!

何事も理詰めで考えるボクでも“正確に入力したら出る”という
永久不変のはずの理論から崩されてはどうしようもなく、当時導き出した結論が、

完全に左下ではなく、
やや真左寄りに指体重を預けながら十字ボタンを押し込むと出やすい


という、攻略というよりも一種の信仰に近い、
友達に伝授してもサバンナ辺りの部族が崇める現代人には縁遠くおよそ馴染みのない
壁画の絵文字程度の信憑性として流されるとても屈辱的な結論に至ってしまった。

無垢な心を粉々に叩き刻まれ腐土と化されたボクはその時、血の涙を流しながら誓った。
もうタカラのおもちゃは買わない。
もうどんなに暇でもシルバニアファミリーは観ないし、買わない。
たとえシルバニアファミリーがエポック社の商品でも関係無い。絶対買わない。
もうおもちゃは卒業する。強く生きる、そしてボクは絶対、

奴らを、許さねぇ……


――――――

しかし時は流れ……

何か、300円だったのでタカラ餓狼2を買っていました
例え300円でも高いだろうと思われるかも知れませんが、出てたの。フェロモン
つい手に取ってレジへと運んでいましたよ。



必殺技凄すぎる

箱からしてこの飛ばし様。飛ばしぶり。
もう箱だけで元が取れてしまった。300円、安すぎるこれが本当の箱ゲー
そりゃあ起き上がりに必殺技くらい完全再現して貰わないと困りますよね

で、タカラ餓狼は1しかやったことがない――
というか、1でもういっぱいいっぱいになってしまったので2には手を付けていなかった、
そのおかげでNEOGEO購入に踏み切れた、
つまり今回がタカラ餓狼2初プレイだったわけですが……



あ、あれ? 意外とまともじゃない? これ。
ちょっと当たり判定がおかしくてヒットバックもおかしいだけで
充分雰囲気出てると寛容な精神でタカラを見つめられるのは
ボクが1で受けたダメージがあまりに重いトラウマだったからですか?
相対的に許してしまえるのですか?

餓狼2だし当然喰らいポーズ無敵だから、でヒットバックもおかしいから
端で小技当てると逆にうやむやに投げられたり、
斬影拳当ててもうやむやで投げられたり、
技後、明らかに立ちポーズに戻ってるのにうやむやな攻撃判定持ってたり、
一部キャラは当たってるのかガードされてるのかうやむやでよく判らなかったりするけど
ちゃんと技も出るし、意外と普通。
それを普通と呼んで良いのかはボクには解らないけども驚くほど普通に感じた。
その時の気持ちは、本当だと思うから……

でも冷静に考えたら誤植一文字に300円は高かった
あとこのゲーム持って店内をウロウロしてたら手違いか何かで盗難防止のブザーが鳴って
店員さんに駆け寄られてすげぇ迷惑した。
もう絶対タカラのゲームは買わん