バレンタイン救世主伝説
2008年、2月14日――世界は、バレンタインの炎に包まれた!
海は涸れ、地は裂け、あらゆる生命体が甘い香りに包まれたかに見えた!
だが、その軟弱極まりない甘ったるい荒野に、無糖の救世主が舞い降りた!
神か悪魔か! 地獄に現れたニンテンドーDS、北斗の拳 〜北斗神拳伝承者の道〜!
秘孔突きタッチアクションが発売されたのである!
バレンタイン北斗の拳――森羅万象、対極に位置する存在である!
さあ、うぬら無糖の荒野を行く漢達よ! 今、バレンタイン救世主伝説が幕を開ける!!

秘孔突きタッチアクションとは!!

秘孔突きタッチアクションとは、原作漫画をデジタルコミック形式で振り返りつつ、
要所でタッチペンにより秘孔を突いたり、擦ったり、こねくり回したりするアクションである!
ニンテンドーDSが誇る新機軸の操作デバイス、タッチペンをやにわに利用し、
「あた!」「あた!」と叫びながら悪党共の秘孔を突いたらさぞ面白いのではないのか!?
そんな発想から生まれたゲームだと言えるだろう。
画期的というよりは、誰もが思い付きつつも実際、誰もやろうとはしなかった系――

どきどき魔女神判! 特典 お守り型携帯クリーナー「どき魔女、まほの開運お守り!」付き

ともすれば、コレに近い系統ではあるが、その致命的な違いは、
どきどき魔女神判がロリロリの魔女っ娘達の弱い部分にタッチするのを目的とするのに対し、
今作、北斗の拳はムキムキの悪党共の弱い部分を荒々しく突き倒すことを目的としていることであろう。
ロリロリの魔女っ娘をひゃあひゃあ言わせるのではなく、
筋肉質の悪党共に「あべし!」「がべれぇ!」等、断末魔の悲鳴を叫ばせるのだ! ほぉうわったぁ!

デジコミ部分は原作漫画が徹底的に着色されており、
着色が極めて難しい原哲夫タッチにありながらこれが異例の完成度を誇っているため、
原作をすでに何度も読み倒しているであろう、
うぬら猛者共であってもなかなか超人的に興味をそそられる代物となっている。

さりとて、その全て、全ページがデジコミ化しているのかと言われればさすがにそうではなく、
かなり端折った突拍子もない展開が連続する。
そのため、素人には突飛なストーリーにしか見えないであろうが、
バレンタインの日にわざわざ北斗ゲーなぞをプレイしているうぬら猛者共にとっては
逆にテンポ良く進むと感激に咽ぶことすらあろう。
ここらで原作漫画の着色付きダイジェストが楽しめるとあらば、いささかの問題もあるまい。

原作に沿いつつ、秘孔を高速で突きまくり、擦り、なぞり、撫で回し、新たに構築される北斗ワールド!
この爽快感、臨場感! チョコレートなどという軟弱な食料とは換えられぬ!
換えられぬ美味であろうぞ、ほぉうわったぁ! あちゃ! あちゃ! へぁたぁ!



神谷ケンは死なず! 死を知らず!

今作ではケンシロウ役神谷明、ラオウ役内海賢二、
ナレーション千葉繁というキャスティングを大々的に謳い文句、宣伝文句としている。
近年、ケンシロウ役から半ば引退している神谷明氏の事情や、
真・北斗シリーズで大不評を呼んだ芸能人起用によって不信を募らせる北斗ファンの心を掴む、
タイムリーにしてキャッチーな売り文句だったと言えるだろう。

だが、裏を返せば、このお三方以外はオリジナルの声優は起用されていない。
では、どうなっているのかと言えば、せいぜいレイの代役の人が頑張る程度で、
他の主要キャラはほぼ無言である。親兄弟を野盗に目の前で殺されたが如く、言葉を発することはない。
当然、フルボイスには程遠いばかりか、実は上記お三方のセリフもとても多いとは言えない。
決め台詞的な名台詞にはすかさずボイスが入るのかと思いきや、
そのほとんどが無に転じて生を拾う、スルー状態である。
これがニンテンドーDSの限界なのか、むしろ、稀にボイスが入ることもあるよ、とした方が表現に近い。

BGM関連も、アニメの曲が使われていないのは著作権絡みか過去の北斗ゲー事情から見ても当然、
今作では「テレッテー」もなく、秘孔を突いたときの「ピブー」もない。
オリジナル声優起用を武器にしながら、音関連でアニメ的なニーズは一切満たしていない。
テレッテーをBGMにあたたた! と叫びつつピブーと秘孔を突けないのならば、
いくら神谷ケン起用と言えども潜在能力を僅か30%使ったのみ。残りの70%を取りこぼしている。

北斗ゲーは作り込めば作り込むほどバカゲーになる
というのはすでに歴史が証明した事実であるが、
ならばさしずめ今作は、バカゲーになり損ねた良佳作ゲー、といったところであろう。
他、クイズモード等も搭載されており、適度にマニアックで北斗狂には程々に楽しめるゲームである。
実に珍しい、割と普通な北斗ゲーと言えるだろう。