ついに北斗の拳を題材にマトモな2D対戦格闘がアーケードで放たれる!
しかも制作はギルティギアシリーズを手掛けるArcSystemWorks、超一流の格ゲーメーカーだ!
今までのような、対戦? 格闘? ゲーム? ていうかコレ、ゲーム?
ゲームって娯楽だよね? でもこれは娯楽じゃないよね? といった物を掴まされる心配はない!
マトモな格ゲーがあれば対戦が出来る! 毎年毎年、北斗が出来るんじゃ!
そう、今度の北斗は北斗ファンのみならず、全ての2D格ゲーファン待望の新作として登場したのだ!
しかし……

てめぇらの血は、ギルティギアァァァァ!!

スクリーンショットが公開され、まず最初に我々が目にしたのは
「北斗百裂拳」の字幕と共に繰り出されているケンシロウのハイキック
ケンシロウの昇龍拳

・間違いその1

やはりいつもの北斗ゲーらしく、技を間違っている
一応、超・好意的に見ればアニメ版では殴る蹴るといったシーンがなかったわけではないし、
昇龍拳も有情猛翔破のまま跳び上がったのかなぁ? と解釈出来ないでもないが、
他にも天翔十字鳳が鳳凰形の飛び道具だったりするので結局、間違ったのだろう。

だが、それはまだ良い。
これだけ美麗なグラフィックで、かつてないほどスムーズにケンシロウ達を動かせるのだから、
多少、技の解釈を間違っている程度、笑って許せるというものだ。
というか、今までと比べればこれでも間違ってない方と言えよう。
そう、これだけならばまだまだ充分、北斗好きの格ゲ好きとしては許容範囲だったのである。
しかし……

・間違いその2
システムがやたらオシャレである。


グレイヴシュート、バニシングストライク、ヘヴィストライク、アジリティーディフェンス……
映画化された最新の新訳シリーズでも子供の一人称が「オイラ」の原作に一体何が。
世紀末の風を微塵も感じない。
北斗の拳のどの要素を取り入れればこのようなオシャレな横文字が出て来るのか。
試合開始時にTHE TIME OF RETRIBUTION!! DECIDE THE DESTINY!! と言われても弱る。
PS北斗の「リアルタイムあべしシステム」等を見習って欲しいものである。

・間違いその3
ギルティギアツクールで作られている。


そしてコレが何よりの間違いであり、大問題と言えよう。システムがギルティベースなのである。
つまり、ケンシロウだろうがラオウだろうが、二段ジャンプに空中ダッシュで飛び回り、
せわしなく動き回りながら小技をペシペシ当ててチェーンコンボ、
浮かせた相手をハイジャンプで追ってエリアルエリアル、タコ殴りにしてやっと目に見えるダメージ、
といういわゆるコンボゲーである。言うまでもなく、北斗の拳とは対極に位置するゲーム性だ。

低空ダッシュから必死に小足を挿し込む世紀末の漢達、
空中バックダッシュから空中剛掌波で牽制するラオウ、
しゃがみパンチをペシペシペシペシ10発くらい入れるラオウ、
全編通してまるで剛の道に踏み込めていない。
ぶっちぎりの最強キャラと言われるトキの行き過ぎた機敏な動作を見せられれば
お前はどれだけ健康なんだと目を疑いたくもなる。
二千年の永きに渡り受け継がれて来た小足から浮かせる拳法か。

そして当然、見た目の問題だけではなく、ギルティベースは難しい。
高速操作で長い長いコンボを延々入れ続けなければならない。
他のオーソドックスな格ゲーの経験があったとして、さほどの役にも立たないくらいに難しいのだ。
とても原作に惹かれて気軽に遊べるゲームではない。
どう考えてもパチスロやってる北斗世代がプレイ出来るゲーム性ではない
この取っ付き難さをカバーするためか家庭用にはレクチャーDVDが付属、
ゲーセンのインストには各キャラの技コマンドと一緒に基本コンボまでが載っていたが、
どの道、多くの北斗ファンはまともに動かすことすらままならないだろう。

なぜこのような、明らかに不自然なゲームになってしまったのかと考察するに、
まず、システム関連のネーミングは無い。ラオウの一人称がオイラ以上に無い。
ここまで無いのだから、これは他のゲームで使おうとしていたシステムの流用ではなかろうか?
ギルティツクールな基本システムもボツになった別のゲーム、システムの流用ではなかろうか?
そんなことさえ考えてしまうくらいに、このゲームは不自然な点が多過ぎに思う。

もう一つ考えれば、人気コミック原作のゲームとして信じ難いことだが、
今作は当初、アーケードリリースのみの予定で家庭用移植の計画はなかったのだそうだ。
なるほど、アーケードの格ゲーマーのみをターゲットとするならば、
このギルティシステムにも説明が付く。敢えて誇り高きコア格ゲーにしたのかも知れない。
家庭用移植が異様に遅かった割に追加キャラもいないのだから、
本当に移植の予定がなかったのだろう。

何にしても、せっかく完成度の高い北斗格ゲーが制作されたのに、
想像だにしないポイントから原作を叩き刻んで逆走しているのだから、
プレイすればするほどに落胆を感じてしまうのである。
面白いだけに余計に、もっとどっしり構えて闘えたらなぁ……なんて思って。
加えてやはり、キャラゲーとしてはキャラが少な過ぎる(10人)し、
エンディングも全キャラ共通デモで見るべき点がない等、作業的な造りが哀しい。

才兵衛画伯

北斗らしい格ゲーとは

では、原作北斗の拳におけるバトルの概念はと問われれば、まず当然、一撃必殺ありきである。
何ページも何ページも殴り合うのではなく、両者が交差する回数は、
少なくともラオウ編までは、バトル漫画としては異例と言って良いほど少ない。

しかし、だからといって大味なわけではなく、むしろ一撃必殺ゆえに繊細、
微妙な心の動き、精神論が勝敗に直結する。
しかも気合だ! 根性だ! といった子供騙しの熱血パワーではない。
弱気、恐怖、大男には似つかわしくないほどの、細やかな心の揺れで勝敗が決するのである。
ラオウ曰く「死を思う故、敵との間合いを恐れる」
死への恐怖を無の境地や絶対の自信で封じ込み、間合いに踏み込める漢が強いのだ。
だから「俺に後退はない!」「制圧前進のみ!」と自らを鼓舞して前に出るのである。
物凄い勢いで冷や汗を掻いていたレイはラオウを馬から降ろすことさえ出来なかったし、
ケンシロウの無想転生に自信を失い、恐怖を知ってしまったラオウは格下のフドウにさえ敗れた。
北斗は一見筋肉バトルに見えてその実、他のどんなバトル漫画よりもメンタルバトルなのだ。

というわけで、格ゲーで北斗のバトルを再現するにはやはり、一撃必殺の拳を恐れず、
達人同士じりじりと間合いを奪い合い、勝機と見るや踏み込み、闘気の乱れに夢想の一撃を放つ!
こんなタイプのシステムが良かったのではなかろうか。
サムスピまで行くと制限され過ぎだが、スト3を本命に、いっそ少々無茶でも良い、
拳一発で吹き飛んで気絶する龍虎1のような北斗がやりたかった。

尚、ケンシロウさんは怒り、哀しみといった具体的にはよく解らないパワーで度々強くなりますが、
そこは主人公補正ということで……

こんなゲーム性でも発売されて良かったと
思うことが出来る!!

と、ここまで書いては来たが、キャラゲーとして丸っきり駄目なのかと言われればそうではない。
各キャラのモーションは細かく原作を再現、また原作から膨らまされてあるので、
ケンシロウやラオウがせせこましく小足を出しても一枚絵としてはいささかの違和感も見えぬ。
この通常技はあの場面のあのモーションだ! と判る物もあったりして楽しい。
技名もアニメ版オリジナル奥義が採用されていたり、声も一部除きほぼ旧アニメ版キャストである。
ただし、レイは当然、ケンシロウも神谷明氏ではない)
セリフの数が格ゲーとは思えないほどに多く、各シュチュエーションで名台詞がバンバン飛び出す。
お馴染みのテレッテー♪ が流れる一撃必殺技等、凝りに凝った演出も派手で見応え満点だ。
全体的に、よく資料を見て作られてある印象である。



ただ、悪く言えば教科書通りとも言え、そのせいか先の通り解釈に対する違和感も多い。
ユダが部下を使って攻撃したり、ジャギが自分の石像でガードしたりと、
確かに教科書的にはそんなイメージなんだろうなぁ、といった部分を感じてしまう。

とは言ってもやはり、キャラゲーにおいては飛び抜けた完成度の2D格ゲーであるのは間違いない。
ある程度、動かせるようになれば、ジャンプや小技からは当然、
投げ、単発必殺技や浮かせ、壁吹っ飛ばし等々、ありとあらゆる状況からコンボが繋がり続ける。
これが何だかんだで面白い。
こんなに繋がって大丈夫か? と思うほどに繋がるし、実際、大丈夫ではないのだが、
ここまでコンボ始動の選択肢が多いとパターン化せず、要求される使い分けが面白いのだ。
CPUをボコボコにしてボイス、必殺技演出を楽しむのはキャラゲー的にも実に楽しい。
他のマンガのファンはさぞや羨ましかろう。



他、格ゲーとして特筆すべきはやはり、唯一北斗らしいシステムである死兆星システムだろう。
これは特定技を当てることによって相手の北斗七星ゲージを減らし、その全てを奪い取り、
ついに敵の頭上に死兆星が輝くと即死効果を持つ一撃必殺奥義が使えるようになるといったもので、
これがまたあらゆる状況から連続技として繋がるのである。体力満タンでも小足から即死。

例えば、

体力1ミリ(1P)vs(2P)体力満タンだけど死兆星点灯

つまり、これどっちが有利なの? と聞かれれば、
もはやどちらとも言えないという画期的な対戦を実現しているのである。
確かにこのゲームでも、原作通り一撃必殺の拳法は、ある意味で再現されてはいたのだ。
今作で一番北斗らしいポイントはやはり、海は涸れ地は裂けた世紀末の荒野を忠実に再現した、
その馬鹿馬鹿しいまでの治安の悪さと言えるだろう。
現実で核戦争が起こらなくて本当に良かった。

尚、個人的にはギルティよりはやや単純というか、
必要知識的にも良い意味で底が浅い(ギルティが一般人には深過ぎる)感じがするので、
あの手のゲームの入門用としても悪くない気がする。
原作知らない格ゲー好きにもオススメ。ボタン配置もオーソドックスで解り易い。

審判の双蒼星の鋭いゲーム性は
ディスクの中に意外と面白い特典を生む!!

北斗の拳というネームバリューで掴ませるにはあまりにも複雑なゲームだという自覚からか、
今作には基本のレクチャーDVDが付属されている。
と言ってもそのDVDの内容さえ一般の北斗ファンには理解に苦しむ内容だとは思うが、
実はこのDVD、それと一緒に今までの北斗ゲーの紹介と映画等のプロモーション映像、
それから何と斬新なことに、「21世紀のケンシロウ決定戦!」と銘打たれた
バラエティ番組までが収録されているのである。
きちんとタレントさんを使った本格的なバラエティである。


ゲームのオマケにオリジナルバラエティ番組。これは新しい
しかも出オチ的なイロモノ企画かと思いきや、意外に面白い

これは各界の北斗マニア達が一堂に会し、
クイズやゲーム対決等を経て21世紀のケンシロウを決めてしまおうという番組なのだが、
企画の寒さに反して出演者の方々が異様にノリが良いというか、異様に機嫌が良いのである。
最初から最後まで気味が悪いくらいにニコニコしている
そんな中、山本ユリアを名乗る山本モナ女史だけが、
「男ってバカね」と言わんばかりにだんだんと哀しい眼になって行く



そんな混沌とした雰囲気があればこそ、
佐々木健介氏がひたすら嫁(北斗晶)を武器にニコニコと内輪ネタを繰り返しても、
知らんがな! お前の嫁なんぞ! と言いたくなるどころかこちらもニコニコとしてしまう。
しかし、山本ユリアは哀しい眼をしている

何とも贅沢なお楽しみ会。
問題もなかなかマニアックかつ、参加者も健闘してくれるので観ている方もテンションが上がり、
後半、しょーもないネタや異常な奇声を繰り返すだけのシーンでも笑ってしまう。
これがゲームのオマケ新し過ぎる。僕はこれ、気に入った
これからのゲームの特典はバラエティ番組付属が業界の流れ、その要髄となるであろう!
後、購入者特典のキャンペーンの方は、どう考えても南斗賞です


一子相伝のケンシロウ争いに敗れた者はキムさんとしてスタジオを去らねばならない非情の掟の図