パチスロに堕し、与えられたあぶく銭をただ貪っていた北斗ゲーに、ついに鉄槌が下された!
格ゲーの炎が再び全土を覆い、地上を席巻し、PSPを呑み込んだのである!
力こそが正義であり、力ある者が全てを手に入れる! 北斗格ゲー世紀末、再来!

天の覇王とは!

天の覇王とは、北斗の拳のスピンオフ作品で、ラオウが主人公の外伝ストーリーである。
まず絵が原哲夫作画ではないし、違和感があるのも事実だが、
ラオウの子孫辺りが書き残した書物とでも思えば戦記物としてなかなかに面白い。
特にアニメ版は原作の不備を根こそぎ修正しているので北斗ファンには推薦したい一品だ。

北斗の拳 ラオウ外伝 天の覇王 第一巻

わが赴くは天の道!

その天の覇王の格ゲー化に当たって、まず登場キャラクターだが、
ラオウ、レイナ、ソウガ、サウザー、ユダ、サクヤ、ウイグル、
リュウロウ、リュウガ、アミバ、ジャギ、トキ、ケンシロウの13人となっている。
基本、アニメ版ベースのゲーム化なのだが、ラオウのみ声が違い、宇梶剛士から小山力也に変更。
また、アニメ版ではカットされたアミバやジャギがなぜか出演している。
なのにあって、アニメに出ていたジュウザはいない。

そのアミバも、



自分に激振孔を突くなど、およそ正気とは思えない性能となっている。
それ血管が破れるほど心臓を活動させる秘孔だから!
ムキムキになる秘孔とは別だから! 自分に突いちゃ駄目だから!

そんな13キャラを選ぶと、まず体感することになるのが
その場で発狂して死んでしまいそうになるロード時間の長さだろう。
誇張なしに、NEOGEOCDの再来と言える。
野猿牙殺拳の人がお手玉を始めても何ら不思議はない。
最新ハードに堕し、与えられた高速ロードをただ貪っていた人類には耐えられない。
気の短い漢はPSPを叩き刻んで腐土と化してしまわないように注意だ。

この画面ばかり観ることになる。

そのまま白骨と化しそうな長いロードに耐えてもストーリーモードは極短く、
OPアニメもなく、主題歌もなく、ポリゴンモデルによる3Dデモもなく、
ただテキストが流れる中、淡々とバトルが続くのみ。比類なき、残虐非道のボリュームのなさと言えよう。
グラフィックとモーションこそ一流の出来栄えだが、
当てても反撃を受ける技や、軸ずれでフルヒットしない技がちょくちょく目に付くのも困る。
値段相応と呼ぶには少々高い一品だ。

――奴らのために、祈る言葉はない……

なんと! この拳を受け止めおったか!!

では、格ゲーとしてどういうゲーム性なのか分析してみよう。
このゲームは、

「北斗の拳らしさ」を出すために「正面からの打ち合い」、「生死を賭した戦い」をゲーム内で表現。
全力の、漢気あふれるプレイが楽しめます。


と、売り文句にある通り、肉弾戦推奨なので投げはない。
決して手抜きではなく漢気あふれるプレイのために投げはないのである。
さらに上中下段の区別もない。
ガードボタンを押していれば基本、削りダメージしか受けないことになる。

しかし、ならば削りで葬ろうと思ったなら考えが甘い。
実はこの削りダメージは肉眼で判断するのが困難なほどに少ない。
顕微鏡で見なければ判別出来ないほどに少ない。すでに秘孔瞳明を突かれているのかと我が目を疑う。
削りのみで倒そうと思ったなら、必ずその前に時間切れとなってしまうだろう。



体力リードを取ってガードボタン押しっ放し。
これで全キャラ、華山鋼鎧呼法よりも硬くなることが出来る。
さらに、万能の空中ガードもあるし、
ギリギリガードで完全にノーダメージとなるパーフェクトガードシステムも導入されている。
グフフ……鋼鉄の鎧と化したこの身体、傷ひとつ付けることは出来んぞ!

ならば砕いてみせよう!!

ではどうやってガードを崩せば良いのか?
答えは簡単、ガード破壊技というのが各キャラに2つずつ存在するのである。
ガード破壊後に発生の速い技を出すか、ガード破壊技にキャンセルで奥義を出せば当然、
そのまま連続ヒットとなる。

そこで、今作の連続技の概念を分析してみた。
今作は、わざわざヒット数表示が出るくせに連続技はほとんど繋がらない。
地上コンボも連続ヒットしないし、空中コンボを狙おうにも
すぐに相手が空中ガード可能になってしまうので連続ヒットにはならない。浮かせる意味がない。
一見、どう見ても繋がっているように見えても、しかし連続ヒット表示は出ない。謎だ。

そう思って調べてみたところ、実は今作は通常技のヒットバック後半をキャンセル出来るのである。
通常技でも奥義でもキャンセル出来るし、ガードでもキャンセルが可能である。
仰け反りキャンセルガードで防げる場合、仰け反りモーションに連続ヒットしていてもヒット数表示は出ない。
そして重要なのが、奥義を喰らった場合のみ仰け反りキャンセルが出来ないという点だ。
これにより、ダウンしない奥義>発生の速い奥義、もしくは究極奥義が繋がってしまうのである。

ならばまず華山鋼鎧呼法を使う相手にダウンしない奥義を当てるべく、
ガード破壊技キャンセルから出してみよう。
つまり相手ガード時限定で、

ガード破壊技≫ダウンしない奥義>発生の速い奥義、もしくは究極奥義

と繋がることになる。これが天の覇王の連続技の基本だ。
ケンシロウなら ガード破壊技≫岩山両斬波>交首破顔拳or北斗百裂拳or無想転生等々、
なかなか面白いコンボを繋ぐことが出来る。(ただし交首破顔拳は当てても反撃を受ける)
ガード破壊技からダウンしない奥義が繋がらないキャラは、ヒット確認は出来ないが、
ガード破壊技キャンセルでそのまま発生の速い奥義(究極奥義)を出せば良いだろう。
もしくはダウンしない奥義を生で当てて、さらに奥義を繋いで行くと良い。
ラオウならダウンしない闘気弾で牽制して、当たったら北斗剛掌波が有効だ。

つまるところ、対戦の要はガードとガード破壊技なのである。
通常技からキャンセルでガード破壊技を出し、相手のガードをこじ開けて大ダメージコンボを叩き込む。
これが今作一番のダメージソースであり、常に狙って行くべき行動だ。
これが公式の言う、漢気あふれるプレイということなのだろう。
全霊の拳で打ち合い、ガードなど叩き壊す。
確かにガードは万能で硬いが、破壊技をガードしてしまうと大ダメージを受けるため、
実はガードという行動はリスクも大きいのであった。

あれ? ちゃんと格ゲーとして成立してる。
特別面白いというわけではないが、天の覇王独特のルールが解ればそこそこは遊べる北斗ゲーだろう。