第三章 元斗は死なず

リンを求めて、ケンシロウの旅は続く。
いつの間にかザキと別れ、当然また歩いているケンシロウ。

行き着いた場所は地に堕ちた元斗の縄張りだった。
元斗皇拳伝承者バレビは自ら築いた中央帝都から圧制を振るい、
自分ただ一人の贅を極めていた。
かつて元斗皇拳伝承者だった金色のファルコの遺児は、魔道に堕ちてしまったのか。

だがそれは別にスルーして、ひたすら西へ歩くケンシロウ。
情報を求めたのは酒場だった。

そこに居たのは……



ゲェー! 猴拳、またの名を猿拳、その流れを汲む野猿牙殺拳の人こと木人形狩り隊似がー!
ハブとギュウキもこの時代に子孫を残していたのだろうか。
かつての木人形狩り隊と同じく、ギュウキ系の人と勝負して勝ったら
食料をやると誘惑するハブ似の男、その名はザノス。

チキン野郎画伯

名乗り出たのはまた誰かの面影のある男だった。


「オレがやろう」

そして原作通り腕相撲を始めるのかと思ったらいきなり殴り掛かるギュウキ似。
男は容赦なく元斗皇拳を繰り出し、ギュウキを惨殺した。
酒場に辿り着いたケンシロウの目が驚愕に歪む。
その強さに慌てるザノス。

「お前、名前は何て言うんだ!?」

「オレの名はミッシュ。拳法は自己流。後は何も覚えていない。
 オレは記憶を失った男だ……」


別に聞かれていない記憶のことまで語り明かし、哀愁を誘うミッシュ。
ザノスはミッシュに帝都勤めを提案したが、拒否。
食料さえあれば良いと食料を担いで店を出て行った。

ん? あれ……? ミッシュ? ミッシュって……


*「おれは ミッシュ
  ぎんいろに かがやくてをもつと
  いわれた おとこ

ゲェー! 北斗の拳4 七星覇拳伝 北斗神拳の彼方へのファルコの息子と同じ名前!
こ、これはもう、SS北斗の拳は東映動画のスタッフが関わっているのは確定か!?
時間の流れは 原作⇒SS北斗⇒北斗4なのか!?
い、いや、まだ早い。東映動画の息がかかっているなら必ずあの漢が生きて現れるはず。
あの漢がまだ現れていない以上、ただSS北斗スタッフが原作ではなく
北斗4をベースにストーリーを作っただけかも知れない。まだあの漢の出番がなくては……

そう、黒夜叉の。


「ケン!」と呼び止められるケンシロウ。
振り返るとそこにはバットがいた。
ゼピアが来なかったのでまたバットも最後まで来ないだろうと思っていたのだが、
意表を突かれた格好だ。

「妙な噂を聞いた。女だけを閉じ込めた牢獄があるという」

そのバットの言葉で(短絡的に)リンも居るかもしれないと思ったケンシロウは、
牢獄、中央帝都へまた歩き出した。




バット車乗って来いやァァァァァ!!
何で追って来るのに非能率的に徒歩なんだ、お前はァァァァァァ!!


車もないんだったら何しに来たのか解らないバットを引き連れ、歩き続けるケンシロウ。
噂の牢獄は海の向こうの人工島にあるらしい。海、涸れてない
早速、兵隊集めの船に乗り込み、人工島へ赴くのかと思ったら、
それ以上の情報を得てしまったケンシロウは人工島行きをキャンセルして北へ向かった。
トキが生きているというのだ。

いや、そんな馬鹿な。曲がりなりにも武論尊監修なんだから、そんな。



「おお、ケンシロウ。よく来たな」

武論そォォォォんッッ!!
名前だけ貸してセコイ商売してんじゃねェェェェ!!
あと作ったヤツも一度で良いから原作読めェェェェ!!

明らかに死体を焼かれた男まで現れた。

「北斗無明拳はお前にとってかつてない大敵。
 ケンシロウ、七つの拳を会得せよ! それなくば、北斗無明拳を倒すことは出来ぬ!」


七つの拳、それは北斗神拳奥義 水影心に他ならない。
強敵と闘い、その拳を身に刻むことにってケンシロウは無敵になるのだ。

ただ会ってそんな話を聞かされるだけでトキとの対面は終わり、
再び港へと歩き出すケンシロウ達。
画面上には『再び港へ急ぐ、ケンシロウたち』と表示されているが、
相変わらずの緩やかな徒歩が10秒ほど続いた。

全く涸れていない海からタイミング良く兵隊集めの船が到着する。
早速乗り込む、ケンシロウ、バット、そして突然現れたミッシュ。
最後に案内役のハブ様似が乗ろうとしたところで、バットが彼を蹴り落とした。

「フン! 誰も兵隊になるなんて言ってないぜ! 船を借りるだけだ!」

怒り狂い、服を破り飛ばしてマッスルボディを披露するハブ様似のザノス様。
どうやら彼はハブとは違い、筋力で闘う漢のようだ。
獣となりて襲い来るザノス。
流れ的にバットが闘うのかと思いきや、彼を倒したのは結局ケンシロウだった

船の中。
また聞かれてもないのに「オレには記憶がない」と哀愁を漂わせ、
ケンシロウに語り掛けるミッシュ。ただ一つ覚えているのは、母のぬくもり。
ミッシュの母の名はミュウと言った。



やはりミッシュはファルコの遺児。
となると最低15くらいには成長しているこのミッシュ。
SS北斗の舞台は原作終了から10年以上は流れていることになるだろうか。
何故10年も経った今更、リンとバットが結婚式をやっていたのか非常に疑問である。
10年ほどリンがゴネたのだろうか。

そして、今現在、元斗皇拳正統伝承者を名乗るバレビとは一体……?
光り輝く黄金の帝都内を歩き歩き、歩き倒すケンシロウ達三人。



ミッシュと途中で別れ、ケンシロウとバットが歩いた先には囚われの女がいた。
彼女こそが、ファルコの妻にしてミッシュの母、ミュウだった。
女ばかりの牢獄という淡い幻想がケバい熟女の眼差しによって壊れて行く。
息子の自慢話を始めるミュウ。



北斗の世界の一体どこにこんな美しい風景があったのだろうか?
幽閉され、記憶の改ざんが進んでいる様子のミュウ。
ミュウはさらにバレビとミッシュの関係を語り始めた。

総督バレビは元斗の伝承者にあらず。
その正体はジャコウの血筋を引く卑劣漢。
バレビはミッシュを恐れ、まだ少年のミッシュの記憶を奪い、島流しとし、
さらに母ミュウを人質に取った。

何故か命は奪わず、記憶を奪うだけという処遇が謎だが、
北斗の世界ではバットですら他人の記憶を消せるのだから、
記憶を奪うことが命を奪うより簡単なアクションだったのだろう。

総督の間では、別れたミッシュが一足先にバレビと対面していた。



ジャコウの従兄弟か何かだろうか、よく似ているバレビ総督。
バレビはファルコのマントを取り出し、未だ記憶の戻らぬミッシュに
自分はファルコより正式に元斗を託された男だと主張した。
確かに父のぬくもりを感じるマント。ミッシュの心が動く。


「嘘だ! 騙されるな、ミッシュ!」

割って入ったのは実はもう三十路過ぎであることが発覚したバットだった。
お前が一番、人を騙している

憤るバットだったがケンシロウに止められ、「し、しかし……」と口どもった。
ここぞとばかりにバレビが口を開く。
「お前の父、ファルコを殺したのは、そこにいるケンシロウだ!」

直接は砂蜘蛛なのだが、確かにケンシロウが殺したとも言えないことはない。
ケンシロウは何も反論しなかった。怒りに震えるミッシュ。

「ミッシュ…… お前の記憶を元に戻す手立ては一つ。
 オレの拳で、お前の闘いの本能を目覚めさせることだ」

バレビ如きが奪った記憶、秘孔を突けば簡単に戻りそうなものだが、
ケンシロウは拳で心に語り掛ける道を選んだ。
そして連射パッドの前に呆気なく倒れるミッシュ。
尚、記憶を失い、拳法は自己流と宣言して憚らないミッシュだが、
戦闘シーンでは「元斗皇拳奥義!」と高らかに名乗りあげて技を撃っていた。

互いに拳を止め、闘いは終わる。
そこにミュウが現れると、ミッシュはハッキリと母の顔を思い出した。

「ミッシュ…… 闘うことによって、お前の父ファルコの血が目覚め、
 お前の記憶が甦ったのだ」

もはや敵は一人。闘うべきは偽の伝承者バレビ。
一歩一歩、バレビへと踏み込むミッシュ。
バレビは闘うでもなく命乞いを始めた。
だがその言葉とは裏腹にバレビの手元にはスイッチがあった。
あのジャコウ総督が駆使した突然落とし穴か!?



と、思われたがボタンを押すことで起こった現象は
椅子から針の群が飛び出すという実にセコいものだった。
あっさりとミッシュの皮膚で止まる針。



恨みなどという言葉ではなまぬるい!
歴史は繰り返し、永きに渡った元斗の騒乱は終わった。

「父上! 我が父、金色のファルコよ! 元斗皇拳、このミッシュが伝承しました!」


その様を見届け、今は暖かい輝きを放つ帝都を外から眺めるケンシロウ、バット、ミュウ。
ミュウはリンの情報を持っていた。

「ケンシロウ様…… リンという女の子は、一度確かにこの帝都に運ばれて来ました」

面識があるのに「という女の子」扱いなのは
「てめぇを追っ掛けて行ったせいでファルコが死んだんじゃ、ボケ!」
という私怨が入っているのだろうか。
奥深い演出ではあるが、ミッシュがここまで成長している以上、
リンはすでに女の子とは呼び難い年齢であるという現実の前にはいささか霞んで見えた。

その後、リンが移されたのは修羅の島。
今再び、修羅の荒野がケンシロウを呼ぶ。



第三章 完