この世で最強は無。されど人の無はまた無力。
その無より転じて生を拾う。それがウイルスキラー北斗の拳。
ならば、哀しみを知る前に納めねばなるまい。
Norton Internet Security 2008 質実剛健。
その重厚な存在感で関東一円に知名度を誇るノートンを北斗とするならば、

表裏一体、陰と陽。
刃が如き切れ味で華麗に舞うウイルスバスターは南斗。
ウイルスバスター2008 1年版

さすれば一拳に全エネルギーを集中し、
ウイルス駆除の荒野に颯爽と現れた我等がウイルスキラー北斗の拳は、
大乗南拳くらいだと思う。

いや、されど大乗南拳を侮るのは早い。
かのアサム国王は両の角で人を串刺しにしたままこれみよがしに現れた
象のような巨躯を誇るバイオレンスな牛を前に、

とまで言い放つ荒武者。
その後「ぬ――ん 大乗南拳!!」の一息と共にこの牛を荒々しく二つに裂くシーンは北斗の拳中、
一、二を争う名シーンとなっているのはすでに熱心な読者の皆さんにはご存知の通りと思う。

あの北斗神拳伝承者選定のためにケンシロウ、ラオウの前に
巨大な虎を用意したリュウケンの心境になって考えてもみよう。
色目を使って闘いを回避したケンシロウ、首をもいだラオウ。
共に性情を反映した毛血荒ぶる対処だが、その場にアサムがいたとしたらどうだ。
「ぬ――ん 大乗南拳!!」の一息と共に虎を縦に裂いたのは間違いない。
その様を見せられてはリュウケンも伝承者をアサムに、いや大乗南拳の話はいい
ウイルスキラー北斗の拳の話をせねばなるまい。

このウイルスキラー北斗の拳はとにかく安い。
なんと税込み1980円という有り得ない安さで充分なウイルス駆除ソフトとして働いてくれるのである。
しかも北斗の拳。数々の漢達が宿命に揺り動かされ購入に走るのも解ろうと言うものだ。

しかしキャラモノソフトとしてはどうか?

新・北斗の拳 第壱話 「呪縛の街」 まず、声が新・北斗の拳準拠なのである。
つまりケンシロウのボイスが神谷明氏ではなく、子安武人氏なのである。
他のラオウ、ジャギ、ハート様らお馴染みの登場キャラクター(ウイルス)達も
旧北斗の拳アニメ版とは似ても似つかぬボイスで襲い掛かって来るために
どうしても違和感を拭えない。
違和感と言えばメールボックスを開く度に襲い掛かって来るハート様(ウイルス)を相手に
「北斗柔破斬!」と叫びながらの百裂拳のアニメーションも違和感を拭えない。
北斗ソフトらしく、やはり間違えている

さらにファイアウォールのアイコンはトキである。
この人はすでに病んだ人だろう。
侵入を防げていない。むしろわけわからんババァにシェルターへの進入を防がれた人だ。
否応なく不吉な予感を煽られる。
北斗の拳というだけでうさんくさいのにこの仕打ちである。
こうなるとセールスポイントであったはずの不自然な安さをすら怪しげな眼で見つめざるを得ない。

ういるすきらぁ2007 ハローキティー 同キャラクターシリーズの二作品目がハローキティというのもうさんくさい。
北斗の拳の次に持って来るのがハローキティ
幅広いターゲットへ向けてウイルスキラーブランドを定着させようという意図は
なんとなく理解出来ないでもないが、この公式サイトの製品情報を見て欲しい。
普通のウイルスキラー、ウイルスキラー北斗の拳、そしてういるすきらぁハローキティ

…………

「ウイルスどもに祈る言葉などない」の下に、
「キティちゃんで、キレイなパソコン やさしく、安心。セキュリティ対策」

驚くほど説得力がない

主に「キレイなパソコン」「やさしく」の部分に説得力がない。
「ウイルスども」とまで書いた下で
「ういるすきらぁ」などとひらがなで書いても全くかわいくなどない。
むしろ腹黒い。解らぬ、ハローキティ。うぬはその能面の目で何を見ておる?

そして、何と言ってもこのソフト最大の欠陥は、
ウイルス駆除アニメーションを見たいがためについつい自らウイルスを探してしまう
甘んじて受け入れてしまう、といった部分にあるだろう。
事実、自らウイルスを探し、その後、音信不通となった漢(※)を私は知っているし、
やりすぎで再セットアップを強いられた漢も知っている。
参照 その後ブゾリ氏は帰って来ることなく、HPも人知れず抹消された。

彼らは最強のウイルスたるラオウ様に会えたのだろうか……?
それは誰も知らない。

しかし、このような欠点を抱えながらもやはりその安さと、
安さにそぐわないしっかりとした内容は賞賛に値するものと思う。
ノートンやバスターと比べるとさすがに最新ウイルスへの対応は一歩遅いようだが、
それでも値段相応以上の安心は得られるだろう。
ウイルスキラー北斗の拳。間違いなくオススメのセキュリティソフトである。