1992 102M 
無敵の龍がいた。最強の虎がいた。
言わずと知れた名キャッチコピー、100メガショック!の第一弾です。
当時はセガマーク3版北斗の拳の箱に誇らしげに1Mと大きく記されていた頃から
ドラクエ4の4Mが話題となる時代へと進み、
そこからさらに倍になったSFC初期の標準8Mがまさに超・大容量だったので、
この唐突な100メガ超えというあまりの贅沢っぷりにドケチ家族は白目を剥きました。

さて、スト2ブーム真っ只中の発売となったこの龍虎の拳。
後発ならばそれを超えなければならない。ではもっと凄いスト2とはどんな物か?
それを考えたらば行き着く先は、とんでもなくキャラの大きいスト2でした。

大ヒットしたスト2や、その前のファイナルファイト(共にカプコン)の
一見しての格の違いは実にマリオサイズ的なキャラが主流だった時代の中での
そのキャラサイズの異常な大きさであり、
当時はキャラの大きさ=ゲームの迫力の全てと信じられていたのです。

そこで100メガ使って作ってやろうじゃないかと生み出された龍虎の拳は、
それすらもさらに凌ぐ、ものすんぎゃあキャラのでけぇ格闘ゲームとして、
結構流れてたCMで、実際のゲームで、これでもかと度肝を抜いたのです。

それはもう度肝を抜かれました。抜かれましたともさ。
もう上の体力ゲージにめり込まんばかりのビッグサイズの猛者達は
とても見づらく、ジャンプでもしようものならどこ行ったか判りませんでした。

どうやら龍虎は少々やりすぎてしまったらしく、
以後の2D格ゲーは闇雲にキャラを大きくする進化をストップさせ、
むしろキャラを小さくして全体のバランスを取るようになります。

しかしもうやってしまった龍虎の拳。後にには退けない龍虎の拳。
このままではフィールドが狭く、迫力以前に窮屈に感じてしまいます。
そこで登場したのが、後の格ゲーに大きな影響を与える
ズームインズームアウトです。

離れればキャラが小さくなり、フィールドが広く、
しかし一度近づけば頭突きで天井を壊さんばかりの大きさにズームするド迫力。
そのウヨウヨと画面が迫ってくる迫力は、
当時のアーケードゲーム全体で見てもあまりに圧倒的でした。

この初代龍虎には他にも後のゲームに影響を与えたシステムが山ほどあります。

★ゲージを消費して放つ必殺技
★超必殺技
★隠し技
★前後ダッシュ
★中段攻撃
★空中後ろ蹴り
★空中で2回出せる跳び蹴り
★削り(小技)負けで崩れ落ちる
★挑発
★乱舞

と、ビックリするくらい近代的なシステムの元祖なのです。

とはいえ内容的には近代格闘とはほど遠く、対戦はオマケでCPU戦がメイン。
不確定要素が大きく、強パンチ一発でぶっ飛んで気絶等が度々起こりました。
さらにそこに必殺技でも当てようものなら 気絶⇒気絶 も日常茶飯事。
でもそれが良いのです

バチーン!という爽快な効果音と共に拳一発でぶっ飛んで気絶する敵。
CPU戦メインだからこそ許される要素ですが、本物の格闘技のようでこれが面白い。
殴られると顔がボコボコになるのも、
スーパーリアル対戦という売り文句に偽りなしでした。

拳一発でそれなのだから、全て気力ゲージを消費して繰り出される必殺技は、
まさに必殺の名に相応しい破壊力&迫力です。
大味なだけでなく、ゲージの量に比例して威力が変化して行く細かさも持っていました。
しかし、必殺技が一方的に強いのかと言えばそうでもなく、
CPU戦で使用出来る二人の主人公の技は
全て現代では考えられないほどに出るのが遅いのです。
「虎煌拳!」なんて有り得ません。「こおぉーぉうけぇん!」です。
そのため逆に、いかに隙を突いて必殺技を出すか、
という戦略を練る必要性が生まれます。これがまた面白いのです。

挑発されると気力が減り、また溜めなくてはならず、
ゲージを巡った駆け引きも大きなウエイトを占めました。

ゲタでバイクを乗り回すリョウ

CPU戦がメインだけあってストーリーが用意されており、
敵を一人倒すごとに何と声入りのデモが入ります。
当時は声が入っているだけでも驚きで、
そしてゲタでバイクを乗り回すリョウにもまた驚きでした。
こんな硬派は見たことない

さらにCPU戦を面白くする要素として途中のボーナスステージで修行ができ、
そこで体力ゲージを増やしたり、超必殺技を覚えたりといった要素がありました。
この超必殺技、覇王翔吼拳は出は遅いが出てしまえば無敵の強さという
龍虎の拳を象徴するような飛び道具系必殺技で、
なんとガードしているのにぶっ飛ばされて気絶なんてこともありました。
当時はその気弾の大きさにも圧倒されたものです。

またこのゲームの今と比べて一風変わった部分として、
飛び道具の弾速が反応出来ないほど速いことが挙げられます。
童夢くんのサンダーバキュームボールより速いです。
しかしこれらは通常技を当てることで掻き消すことが可能で、
前述の覇王翔吼拳ですらも通常技で打ち消すことが出来ました。
その際にまた凄いSEが鳴るのでこれがまた爽快です。

最後にボーナスステージを紹介しますと、

体力強化の氷柱割り。

これが気力強化のビール瓶切り。
このなんとも言いようの無い濃さ、暑苦しさ、そして男臭さに、
KOFのサワヤカ愉快な龍虎キャラしか知らぬいたいけな少女は
白目を剥いて倒れることでしょう。

重い拳を全力で打ち込み、さらに重い必殺技を充分に気を練って打ち込む、
業界最大サイズのキャラクターを駆っての熱い漢勝負。
レトロゲーながらそれをまた独特の味として、
今の格ゲーとは違った面白さを体感出来るゲームです。

数え切れないほどクリアしたのでお気に入り度は高めで。

PICKUP
100メガ
ロバート・ガルシア
 
決め台詞 ギニャー!

同門で主人公の親友兼ライバルというどこかで聞いたような設定のキャラである。
リョウと同じく極限流空手の使い手で、華麗な足技がメイン。
リョウもそうだが、飛び道具に突進技に昇龍拳もどきまで持っていてモロにアレだ。
世が世なら裁判突入は間違いなかったであろう。

しかしその実、このロバートはガルシア財団という財閥の御曹司で大富豪なのだが、
そうするとあちらの人もいつの間にか富豪(アニメからZEROにかけて?)で
しかも足技使いになっていたり、その内サイ●ョー流なる怪しい人まで出て来たりと、
色々あちらにも食い込む危険な漢でもあったりもする。

そんな彼はスティーブン・セガールをモデルにしたルックスに長い脚、
ゲタでバイクという闇雲に雄度の高いデモを見せるリョウとは違って
スマートでカッコイイ美形キャラ担当のはずなのにあって……
なぜか関西弁で話すところが人気爆発。

かくいう自分もロバートにハマったクチだ。
2の挑発「どないしたんやぁ?」は最高のボイスである。
KOFでの脇役化、その他超美形キャラ達の台頭で
今でこそ外した美形キャラという印象が強いロバートだが、
彼はアンディとは違い、当時は本当に本当に作品中TOPの人気があったのだ。
一度でも龍虎ロバートに触れてみれば、その理由も理解出来ることと思う。

関西弁の秘密を紐解くとイタリア訛りの英語を表現したかったそうだが、
なにも美形に関西弁付けなくても良いだろうとツッコまざるを得ない。
どこまで本気か解らない時代のSNKが生み出す奇妙な味が大好きだった。

しかしスティーブン・セガールがモデルと公言されているこのロバート、
志村けんにしか見えないのは
狙っているのだろうか。
それとも偶然だろうか。
そんなツッコミも後を絶たなかった。
いずれにしても肖像権で訴えられないように気を付けてもらいたいものである。
訴えようにももう会社がないのだが……

PICKUP
100メガ
キング
 
決め台詞 ハン!なっさけない!

どうにも硬派でとてもつもなく濃い龍虎の拳だが、女性キャラも存在する。
今もKOFやカプエスで大活躍の、言わずと知れたキングである。

しかしこのキングは初めは男という設定で現れ、
そして普通に倒すとそのままなのだが、必殺技で倒した場合のみ、
服が破れて女性だと発覚するというイベントキャラになっていた。
これが世に言う脱衣KOの元祖である。硬派の極みである。

普通に倒した場合はその後のデモでも男言葉で雄弁にユリへの手掛かりを語るだけ。
しかし脱衣KOを浴びせると「くやしいけれど……私の負けよ……」と彼女は豹変し、
今では違和感のある女言葉でしおらしく語ってくれるのだ!
もはや選択肢はひとつと言って良いだろう。
(※もちろん脱がさない方です。本当です

尚、勝ち台詞は2のものです。1は狂ったように「あはははは!」
ライバルはかつて闘って敗れたターナー氏。

ターナー氏 今では有り得ない設定……

PICKUP
100メガ
Mr.KARATE
 
決め台詞 覇王翔吼拳を会得せん限り
お前がわしを倒す事など出来ぬわ!

重厚な世界観と共にストーリーにも重きが置かれている今作。
さらわれた妹ユリを助け出すというベタなストーリーも単純なようで入り組んでいて、
裏設定を知るとなかなかに面白い話になっていることが解る。
>参考 サウスタウン小説

ともかくユリを救出する為に組織と戦うリョウとロバートだが、
首謀者であるMr.BIGを倒してもまだ戦いは終わらない。
最後の舞台、カラテジムにて最強の、不敗の格闘家が待っているのだ。
koya画伯 この不敗の格闘家、
Mr.KARATEはリョウと同じ技を使い……
というか、顔以外、リョウと同じ絵であり、
公開ストーリー中の失踪した父親であることは
すでに語られるまでもなかった。
しかしその素顔は心を殺したように
仮面で隠されてあり、顔を隠すにしても
なにも天狗じゃなくても良いだろ
言わざるを得ない威圧感を備えていた。
気力を一瞬で溜め、リョウよりも格段に速い動作で拳、
必殺技、覇王翔吼拳を打ち込んで来る絶望的な迫力は、
ストーリーにのめり込んでいると映画のような高揚感を得られるだろう。

だが、実はこの男を倒してもその正体は明らかにならず、
ユリ迫真の、「お兄ちゃん…… その人は…… その人は、私たちの……」
というセリフの途中で、“TO BE CONTINUED?”のテロップが現れて終了。
スタッフロールが始まってしまう。

そんなものだから、これは真のエンディングではないのではないか?
という憶測が広がり、何か途中で、点数やラウンド、ボーナスゲームで、
あるいはキングを脱がしたか否かで最後が変わるという夢、
そして婦女子を脱がしてしまった罪と与えられたEDの罰に漢達を苦悩させた。
だが結局、脱がしても脱がさなくても全然関係なかった。

空耳の拳

▼みのむしフライ


なんともゲテモノの香りのする空耳だが、
本当は「ベノムストライッ!」と言っているのは言うまでもない。