DEATH-TINY 5
野獣の復活

クラウザーの城、ヴォルフガング城の地下に佇むビリー・カーン。
落ちてくる水滴をゆっくりと棒で突いている。
ゆっくりゆっくりと突き出されるビリーの棍は少しずつ、しかし確実にスピードを増し、
怒号一閃、「ハリャアア――――ッ!!」という奇声と共に
流れ落ちる水滴を全て突き弾き、掻き消した。
歩く凶器、ビリー・カーン復活である。

そこに現れるあごヒゲともみ上げが繋がった男、ローレンス・ブラッド。
ビリーの復活を確認したローレンスだが、
クラウザーに会わせるにはその資格があるのかどうか試す必要があるらしい。
ナメられたと感じ、「どうせいまさらだれにもつかえる気はない」
帰ろうとするビリーをローレンスが挑発する。

「あわれだな ほんとうにすぐれた指導者につかえたことのない男は
 ギースのようなゲス……
 いまだに忠義をつくすほどの男ではあるまいに……」


これでブチギレるビリー!
「ギースさまを愚弄するとゆるさんぞ!!」

それなら初めから付いて来るなよ、ドイツまで
という気がしないでもないが、そこまでしてでももう一度、テリーと闘いたかったのだろう。

そして、

ギース様

こんなギース様でも今でもビリーにとっては大切な主なのだ。


結局、なし崩しに妙な洞穴へと連れていかれるビリー。
その中から出て来たのはこれまた妙な男、チン・シンザンだった。
ビリーを案内するチンだったが、
目で合図するように「ひょひょ」とローレンスと笑い合うなどなんとも怪しげな雰囲気だ。

洞穴を下る二人。古城でよくある逃走用の抜け道なのだろうか。
本当にただの洞穴かとビリーが拍子抜けした頃にチンが不吉なことを言い出した。
「ここには鬼がいるアルよ」
「なに!?」
ビリーが振り向く。そこではチンが大量に息を吸い込み、腹を膨らませていた!

「きええーっ 大太鼓腹打ちーっ!!」

が、あっさりと雀落としで落とされるチン。
怖い怖い殺傷力満点のビリーの棍を後頭部に突きつけられ、早々にチェックメイトである。
チンは「ジョ〜ダンアルね〜っ」とおどけて逃げ出し、ビリーの相手は自分ではないと宣言した。

「いっや〜っ あんたさんは強い! こんな強いお方のあいてはわたしじゃないアル」
チンの口笛に合わせ、岩陰から謎の黒い影が不気味に笑いながら出現した。

「へへ…… やっと出番かい」

!!? この声は!?



ダック!?


いや、こいつじゃダメだろ
チンよりもっとダメだろ。
ていうか、もうこいつボンボン餓狼的に戦力外だろ。
少なくとも鬼じゃないだろ。

そしてアッサリと倒されるダック。
しかしその小心者のダックがひとりで向かって来るはずがないと、
ビリーは他の鬼の存在に気付いた。

そこでまた岩陰から黒い影が!

タ…… タン大人!?

ま、まさか、生きて……
あの火曜サスペンス劇場から生きて……!?

そしてまたさらに黒い影! 次々と現れる黒い影の鬼達!
今度はなんと…… アンディ! ジョー!
なぜこの男達がここに!? そしてなによりも、クラウザーの手先になっているのか!?

驚いているビリーの隙を突き、「ジャンプソードキーック!!」を放つダック!
そしてこれがなんと当たった!  しかもヨロけるビリー!!

その間に密かににっと笑い、バリバリと服を破いているタン大人。
ここで飛び出したのは……!
「旋風剛拳―――っ!!」
これで浮いたビリーの背中から空中コンボ! ジョーの「タイガーキック!!」
そして地面に急降下するビリーを下から突き上げるようにアンディが――

「超裂破弾!!」 4HIT COMBO!!

超技連発エリアルレイブ炸裂ッッ!!(ダックはただの跳び蹴りだが
もの凄い勢いで血を噴き出して倒れるビリー!!

ていうか、これは死んだだろ

と、ダック達も判断し、その場から去ろうとしたのだが、そこにまだ朽ちぬ、呻くような声が……!

「あ…… あまいな」


ガッ!

ダックの背後からビリーの拳が炸裂!!
さらに血を吹いて倒れたダックの口にカカトを抉り込むと、
歯が砕け折れる生々しい音と共に洞穴に悲鳴が木霊し、彼はほぼ死体となった
お馴染みの光景である

気をつけな……
おれはビリーカーン
歩く凶器だぜぇ……
うっかりさわると
ケガじゃあ……

「すまねぇ!!」

その怒声と同時に響いたのは肉に棒が刺さる音……
ビリーはまたしてもタン大人に自慢の棍を突き刺していた。
これで二人。
焦ったアンディとジョーは、
ジョーとアンディのダブルアタック! 「同時攻撃(ダブルアタック)だーっ!!」

と、ビリーに同時攻撃を敢行。
「同時攻撃(ダブルアタック)」というネーミングからも焦りの色がありありと窺える

空中から襲い来る両名をビリーは冷静に……

叩き落とす!!

けど、強襲飛翔棍てこういう技でしたっけ?


そして前哨戦が終わったところで、ビリーがあの男の名を叫んだ。

「さあて…… でてこい…… テリーッ!!

き、来たッ! 岩陰から黒い影!!


そりゃアンタよりはな、という感じだが、本当に現れるテリー・ボガード!!
なんとテリーまでこの場所に! 一体、この洞穴はどうなっているのか!?


「おれにぶちのめされた男にしてはずいぶん強気だわね……」

「いわなかったか? 敗けることでさらに強くなることがある――と……」

「そういうのはな 負け犬の遠ぼえってんだ」

「なんとでも…… だがいまのおれはあのときとはちがうことはたしかだ」


ビリー絡みだと妙にカッコイイ会話シーンが多発するこのボンボン餓狼。
テリーがオカマ口調ですが盛り上がって参りました!!
さぁテリーvsビリー! ラウンド2!!

まず仕掛けたのは恨み積るビリーだった!
しかしテリーはそれを軽快に躱し、必殺のバーンナックル!!
さらに例によって技名を叫びながらバックスピンキック!!

「ぐほ ぐほほ」とさらに血を吹き流すビリー。
そこに追撃のぉ……

サニーナックル!!

サニーナックル!? サニーパンチじゃない!
新技か!? サニー系の新技か!? サニー系は色々あるのか!?

しかしこのサニーナックルを喰らい、感じていた疑問が膨らみ出すビリー。
地面に這いつくばりながらも、彼は何かに気付いた。

「おれが負けたのはてめえじゃねぇ…… おれとおまえは"初対面"だ!!」

テリーじゃ…… ない……!?
やっぱりサニー“パンチ”じゃないからか?

そんな気が動転してしまっているビリーに引導を渡そうと、
テリーはトドメのパワーウェーブを繰り出した! しかし!!
飛び上がって躱すビリー! さらに棒を回転させながら下降し――

「おまえのような下っぱがおれをたおそうなどと――― 十年はやい!」

超火炎旋風棍――――っ!!

パワーウェーブの硬直中であるテリーは成す術もなく超必殺を喰らい、
うぎゃああーっ!! と悲鳴を上げ、灰となって焼失したのだった。

それを見届けると、合格宣言と共にどこからともなくローレンスが現れた。
しかしビリーにはそんなことはどうでも良い。

「こいつらいったい…… なん……だ?」

見かけは確かに、ダック、タン、アンディ、ジョー、テリーだった。
しかし違う。
これだけの相手と戦い、あれだけの技を喰らってはさしものビリーとて
今、この場に立っていることは出来ないだろう。
彼らにあるまじき技の軽さが、ビリーに疑問を抱かせていた。
あの5人は一体“何”なのか?コスプレか?

「クラウザーさまにあえばわかる」
それがローレンスの答えだった。

ならば会おう、クラウザーに。
そして教えよう、本物のテリーを殺るのは自分だということを。
今、危険な狼が再び牙を取り戻した。
でもダックは本物と大差なかった