魔王復活
刺客散華の章

舞台は香港から始まりました。

「へぇ 初めてきたけどいい(とこ)じゃないの……」

この街にはどんな格闘家(おとこ)がいるかなぁ

そう言ってとても嬉しそうな顔をしたテリーは、



プロレスの靴を卒業していました。

そのずっと頭の上にある大きなビルの一室では、背の高い東洋人が仁王立ちをしていました。
芸術品がたくさんあって、とても赴きのあるビルでした。
そこでは、同じ服を来た二人の子供がNEOGEOCDで遊んでいました。



人知を超えたロード時間で有名なNEOGEOCDの中でも
ことさらロードの長い風雲黙示録を文句ひとつ言わず、
笑顔さえ浮かべながらプレイするこの二人は、それだけでとても気の長い、
やさしい少年であることが伺えました。

反対に、部下が不明瞭な情報を持って来ただけで、
室内なのにも関わらず気弾を撃ち込んだ長身の大人の人は、とても気が短いことが伺えました。



大人の人は自分の名前は山崎竜二だと自己紹介をしてくれました。
山崎竜二に不確かな情報を持って行くのはやめた方が良いと思いました。

報告に来ただけで気弾を撃ち込まれてしまった部下の人は、
今度は子供二人に呼び止められました。



子供達はNEOGEOCDのパッドをまるでゴミのように放り捨てて言いました。

「におうんだ」



ゲームの餓狼伝説では崇秀と書いてチョンシュウ崇雷と書いてチョンレイと読むのですが、
二人は兄弟であるにも関わらず互いに読み仮名を間違えていました。
これは最後まで訂正されることはありませんでした。

「さすが食の都といわれる香港(とこ)だけあるよなぁ
 高級店から屋台までうまそうなとこがいっぱい なにたべよかなあ……」


強い男(テリー・ボガード)は香港の食品街を歩いていました。
すると、

しかめっ面のおじさんに呼び止められました。

強盗だと思ったテリーは、
「悪いけどさ オレは旅行者じゃないんだ
 金はあんまりもってないぜ」

と言いました。お金を持っていないのに食事を取る気だったことが判りました。

おじさんの名前はフランコ・バッシュと言いました。
港へ場所を移して、二匹の狼の闘いが始まりました。
だけど、テリーは「あんたじゃ俺に勝てないよ」と、闘う前からダメ出しをしました。
すると本当にフランコの攻撃はテリーにはまったく効きませんでした。
蹴られてもテリーは「ぷふう……」と言うだけでした。

テリーはその原因を説明しました。
キックボクサーのフランコ・バッシュは、ルールのある試合しかしていないから駄目だと言いました。
「命のやりとりをしてきた分だけ俺の方が上だ!」
テリー・ボガードは血みどろの死闘を繰り広げて来た過去を自慢し、
殺人技の限りを尽くしてフランコを痛めつけました。
でも、フランコはめげませんでした。



フランコは贅沢に2ページも使って必殺技を出しました。
でも、餓狼伝説のフランコの使う必殺技はダブルングであってダブルングではないので、
絵の迫力がかえって悲しく見えました。

テリーはフランコはこの闘いに命を懸けていると感じました。
追い詰められたように必死なフランコには何か事情がありそうでした。
そうは思ったものの、あまりにもフランコが調子に乗ってパンチやキックを出すので
テリーはついに怒ってしまい、バーンナックルを出しました。
フランコは吹き飛んで海に落ちました。

夜の海はとても危険です。
「し しまった ついー」とテリーも慌てました。
海面ではフランコが吹き出した空気がゴボゴボとまるで溶岩のように暴れていました。



だけど、夜の海は危険なので、テリーは助けようとまではしませんでした。
テリーは事なかれ主義でした。
やがて、海面から泡すらも消えました。



妖僧幻戯の章

サウスタウンエアポートでは、何事もなかったかのようにフランコが歩いていました。
港の方ではまた別の東洋人のお兄さんがサウスタウンへやって来ていました。



どことなくキム・カッファン(クローンの方)を思わせるお兄さんはとてもハンサムでした。

パオパオカフェ2号店ではダックがヨダレを垂らしながら、だらしなくお酒を飲んでいました。



こういう大人にはなりたくないと思いました。

そこへ、マスターのボブ・ウィルソンというお兄さんが現れてさらにお酒を勧めました。
でも、ダックは飲み過ぎはいけないからと断りました。
テリーが留守の間のサウスタウンは自分が守ると言いました。
「テリーが命がけで作ってくれた平和だぜ 大事にしなきゃ」
色々な面を考慮して説得力がありませんでした。

テリーを大親友だと褒めちぎるダックがまるで同性愛者のようだと思ったボブは
「あやしい」とからかいました。
「うほ ダックさんしあわせだね」と言いました。
ボブもまた同性愛者のようでした。

その後、二人は説明口調でリチャード・マイヤはビリーに棒を刺される前に
街の皆に助けられてブラジルに避難していたこと、
今はダックが街に無法者が入らないように頑張っていることを話しました。

帰り道、ダックが夜の住民街を歩いていると、



とても胸を張った黒い男が1ページ丸々使って立っていました。
ダックはこの男に見覚えがありました。
次のページでダックはもう「ひいい―――っ!!」と言ってやられていました。
この街の治安にまるで役に立っていませんでした。クソの役にも立たない男でした。

ダックが運び込まれたサウスタウン総合病院ではテリーが面会に来ていました。
テリーは寝たきりで目を覚まさないダックへ心の中で、
「まさかこんな姿のおまえと再会するとは思ってもいなかったぜ……」
と言いました。でも、1と2も読んだぼくにはあまり珍しい光景でもありませんでした。
ダックはこの後、出て来ないキャラになったので、実質ここで死にました。

なにがある 平和になったこの街に またなにが……
おしえてくれねぇか…… サウスタウンよ……
なにか不穏なことがあるんだろう…… 笑顔がひきつってるぜ……
妖気だ 妖気が風とともに…… こっちだ!!


まるで詩のような美しい言葉を並べてテリーは夜の街を歩きました。
誰かがこの詩にメロディーを付けてくれれば立派な挿入歌が出来あがると思いました。
歌うのは尾藤イサオさんが良いなぁとぼくは思いました。

テリーが感じた妖気の先には、



ウォーズマンがたくさん居ました。
誰かの親衛隊であることは間違いないとぼくは思いました。
囲まれているのは編笠のお坊さんでした。
お坊さんが何かお経のような物を読むと鬼が出て来て、ウォーズマンは全滅しました。

鬼を見てしまったテリーはお坊さんにイチャモンを付けられました。
「おまえも“秘伝書”にひかれてこの街へきたくちか」
テリーは違うと主張しましたが、お坊さんはまるで聞く耳を持ちませんでした。



お坊さんの名前は望月双角と言いました。

別に闘うつもりはなかったテリーですが、
双角の言った「逃げる」という言葉に酷く腹を立てました。
「逃げるだとォ…… このオレが逃げるだとォ……!?」
テリーは簡単に挑発に乗る男でした。

「ふざけるなよ…… てめぇの言ってるこたぁなにがなんだかわからねぇが……
 ひとつだけおしえてやるぜ このオレはどんな奴にも“背中”は見せねぇ!!」


戦車を前にしても背中を見せなかった男の誇り(プライド)が
テリーを闘いへと駆り立てました。
望月双角の錫杖捌きは一級品でしたが、ビリー・カーンには遠く及びませんでした。
すると双角はまた呪文を唱え始め、望月流の秘術を使いました。



餓狼伝説のゲームでは邪棍なのですが、
字がちょっと似ているのでまた間違えてしまったようでした。
数の増えた双角にテリーは袋叩きにされました。
ぐあ ぐああーっ!! がぶっ おがあーっ がっ ぐっ ほしゃああっ ぐうう ぐはっ ぐはぁっ!!
いくつもの奇声が夜の街に響きました。

テリーが倒れて動かなくなったので、双角は念仏を唱えました。
こういう所は律儀にお坊さんでした。
それを見てテリーはチャンスと思いました。
一人に戻った双角の足を掴み、バーンナックルを浴びせました。双角の仏心が仇になりました。
テリーは調子に乗ってもう一回バーンナックルを出そうとしました。
しかし、双角も怒っていたので貫手で目潰しを狙いました。
もう双角に仏の慈悲はありませんでした。外道と外道の闘いになりました。

「おもしろすぎんぞ この野郎ーっ!」とテリーが叫び声を出し、
二人同時に踏み込んだ所で足元にナイフが飛んで来ました。
投げたのは金髪の女の人でした。画風のせいか、あまりかわいくはありませんでした。
双角は女の人が来ただけで「ジャマがはいったか」と言い、煙を出して消えました。
初めから複数(ウォーズマン達)と闘っていたのに、敵が複数になっただけで逃げるのは
何かおかしいなぁ? とぼくは思いました。
でも、女の人が投げたナイフは易々とコンクリートに突き刺さっていたので、
懸命な判断だと後から思い直しました。

追い掛けようとしたテリーでしたが、足元に今度はまきびしを撒かれていたので、
双角を追うことは出来ませんでした。
鋼霊身を使えるテリーでもまきびしを踏むと痛いのかなぁ? とぼくは不思議に思いました。

女の人はテリーが秘伝書を持っていると言い、そして組もうと言い出しました。
テリーは女の人が自分の名前を知っていたのに腹を立てて、メンチを切りました。



若鷹飛翔の章

女の人はブルー・マリーという名前でした。
ギースを倒して秦の秘伝書を持ち出したテリーを調べていたと言いました。
でも、テリーは秘伝書を持ち出してはいませんでした。
するとマリーは怒って、去り際のテリーの側頭部へスピンフォールを打ちました。
テリーはこれも「ぷふう」と止めました。
1と2も読んだぼくはこの後、女の人はライジングアッパーで殴られると思いました。
でも、テリーはまるで好青年のように微笑むだけでした。
それを見てマリーもテリーの言うことが本当だと信じました。

テリーは次にパオパオカフェ2号店へやって来ました。
するとそこにはアンディ、ジョー、舞の3人が揃っていました。
プロレスの靴を卒業したテリーですが、ジョーは黒マントのままでした。
ジョー・東は未だ大人になりきれない男でした。ぼくは悲しくなりました。

3人はボブからダックのことを聞いてやって来たと言いました。
ダックの話をするとパオパオカフェ2号店はまるでお通夜のような雰囲気になりました。
「ああ見えてもダックはそうとうな実力者だ
 ……あそこまでぶちのめせる奴はそうはいないはずだが……」

アンディは大人の気遣いを持ち合わせていたので、そう言ってダックのことを庇いました。
でも、ぼくはこの発言を読んでますます悲しくなりました。

テリーは皆に秘伝書の話をしました。
秘伝書を求めて強い格闘家が集まっていると言いました。
大事な話が終わると、それどころではないのにボブはテリーと闘いたいと言い出しました。
ボブは空気の読めない男でした。

ジョーは「カポエラは強いぞ テリー
 カポエラは昔黒人奴隷が両手を鎖につながれ自由にならなかっ〜」

とカポエラへの思いを聞いてもないのに語り出しました。
でもそれは心の中での語りだったので、テリーの耳へは届きませんでした。
昔、ジョー・東は「どの流派が最強かなどどうでもよいこと」と言っていたので、
ぼくはカポエラの強さを語るこの発言を訝しげに思いました。

屋上でテリーとボブの闘いが始まりました。
この闘いはストーリー的にどうでも良いと思いました。
とにかくテリーが勝ちました。
テリーは手を叩いた衝撃でビックリしているボブへパワーダンクを浴びせました。
相撲で言う猫だましというセコい技でした。

ジョーはセコい技の件には触れず、パワーダンクを、
「ああっ 跳ねた!! 狼が鷹より高く!!」
「な…… なんて技だ…… あんな技見たことがない……」

と大絶賛しました。
でもぼくは客観的に見て別にそんな珍しい技でもないと思ったので、
ジョーのやや無理のあるゴマすりに悲しくなりました。

すると、倒れたボブがとあるビルに灯りが灯っていることに気付きました。
「あのビルの最上階に明かりがついてるんでーす めずらしいでーす」
とボブはちょうちょを見付けた女の子のように嬉しそうに言いました。
ぼくにはテリーに殴られたことでパンチドランカー症状が出てしまったように見えました。
でもそのビルはギースタワーだったので、テリーはそれどころではありませんでした。
「まさか…… まさか……!? まさかーっ!?」

きちんと「ギースタワー」と発言するテリーから見て、
「ギースの館」というボンボン餓狼伝説1の呼称はどこかへ消えてしまったみたいでした。

ビルの中へ入り、最上階まで駆け上がると、烈風拳が飛び掛かって来ました。
それは物凄い威力で、一部屋が吹き飛んでしまいました。



でも、やっぱりここは「ギースの館」のようでした。
自分の館なのにも関わらず、ギースは何の躊躇もなく吹き飛ばしました。
ぼくはギースというおじさんの器の大きさを感じました。

ギースは秘伝書を持っていました。
そして、それがある限り何度でも甦ると言いました。
テリーはその発言に腹を立てて、メンチを切りました。