美形会議2 新たなる美形
「やぁ! 餓狼伝説の美形キャラ、アンディだよ」




「まいどお馴染み、わいが龍虎の拳の美形キャラ、
 最強の虎ことロバート・ガルシア様や」




「…………」




「右京さんや」




「サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだね」




「で、乙女からマダムまで幅広い年齢層を熱狂させる
 そうそうたる美形キャラ三人がすでに揃ってしもたんやけど、
 今度は八神の奴は来ぃへんやろな?」



「大丈夫、今度は紅丸君に30mほどFAXを送っておいたから間違いないよ。
 ポケベルにも何度も連絡入れたしね」




「ポケ……ベル……?」




「ああ、右京さんの時代には存在しないけど、
 今、僕らのようなナウな若者は常に携帯しているんだ」




「ほな安心やな。
 はよぅ紅丸を呼んで、前回すっぽかした理由を聞き出さなあかん。
 元はと言えばあいつのせいで
 八神なんぞと無駄な時間を過ごすハメになったんや」


「ヘェ〜イ! 俺様のための会議ってのをやってるのはここかい?」




「紅丸君だ!」




「ほんまに二階堂紅丸が来よったで!」




「おいおい、呼んだのはお前らだろ?
 美形の冠を冠したからにはやっぱり俺様がいねぇと締まらねぇってな!」




「おお、ほんまに紅丸や! なんや安心するわ!」




「ああ! このうだつの上がらなさ具合がなんとも居心地良いね!」




「あんまり嫉妬すんなよ」




「ははは、よう言うわ。お前のそういうとこ好きやで。
 ところで早速で何やが、前回は何で会議に来ぃへんかったんや?」




「ああ? 何でこの俺様がこんなムサ苦しい会議に出なきゃなんないの?
 カワイコちゃんもいないのに、こんなの八神の野郎で充分じゃねぇか」




「ん? SNK世界を代表する美形キャラが一同に会しているんだ。
 ムサ苦しくはないだろう」




「は? 何言ってんの?」




「まぁまぁ、そう絡むなやアンディ。
 せっかく美形キャラが揃ったんやさかい、楽しゅうやろうや」




「俺様以外のどこに美形がいんのよ?」




「ああ? 何やと」




「ロバートさん、落ち着いて。
 今回は八神君のちゃちゃも入らないことだし、きちんと会議を進めようよ」




「ん、ああ、せやな。
 わいら美形キャラにかて時代の波は来よる。
 今後それにどうやって乗って行くかを真剣に考えなあかん時期が
 もう来とるんかも知れんしな。こういう会議の場は貴重やで」


「来とるも何も、おたくらとっくに波に飲まれた沈没船だぜ?」




「何やアンディ、こいつ調子乗っとるで」




「ああ、紅丸君、FAXが少し長すぎたのは謝るけど、
 ちょっと私語は謹んでくれるかな」




「すまん、新曲の収録が長引いて遅れてしまった。八神だ。
 まだ美形会議2新たなる美形は…… ん?」




「……きっ!?」




「……来た!?」




「何だよ、八神。今更来てもてめぇの出番はないぜ」




「何だ貴様、前回俺に押し付けておいて今度は参加しているのか」




「へっ、やっぱり美形会議にゃ主役がいねぇと始まらねぇって
 先輩方が必死に説得するんでな。
 それにこんな仕事でも俺に会いたいっていう
 カワイコちゃん達が後を絶たないらしい。満を持してってヤツさ」


「そうか、なら俺がここに居る理由はないな。
 実はまだ歌にリテイクが入ったままなんだ。失礼させて貰おう」




「おう、帰れ帰れ。この会議は俺様が仕切っといてやるからよ」




「ちょう待てや、お前ら! なに勝手に話進めよるんや!
 それに歌て何や、歌て! 格闘家の本分は格闘やろが! どつき合いやろが!
 チャラチャラ遊んどるとすぐに時代の波に飲み込まれるで、アホが!
 これだけ言うてもまだ解らんのか!
わいら美形キャラかて安泰やない時代が来るんや!」


「はぁ? 何、おたく長いこと格闘家やってんのに
 CDデビューもしてないわけ?」




「ま、まさか、紅丸君もすでにCDデビューを?」




「何? 知らないっての? これだから潰れたシリーズのキャラは……
 ちょっと歌ってやるから耳かっぽじって聴きな!1、2、3!HEY!!
 痛いほど♪ 俺を見ろよ♪



「痛いのはお前や!!」




「ちょ、ちょっとロバートさん、
 気持ちは解るけど、そんなケンカ腰にならなくても……」




「いいや、この際、言わせて貰う!!
 わいはお前らのようなハズレ美形キャラ共とは違うんや!!
 わいは
主役一本持っとるんや!! 万年脇役のお前らとは違うんや!!」


「ガハァ!」




「血を吐いた!」




「右京さんに謝れ!」




「謝らんわ、どアホ!!」




(謝らないのか……)




「お前らに主役やのにカプエスに呼ばれん哀しみが解るんかいな!?
 わいが主役張った瞬間、シリーズが終わってしもた哀しみが解るんかいな!?
 唐突に溜めキャラにされる哀しみが解るんかいな!?」



「ロ、ロバートさん、落ち着いて!」




「お、俺もちょっと調子に乗りすぎたよ。落ち着いて会議しようぜ」




「うっさいわい!お前らみんなハズレじゃ!
 わいも含めてみんなハズレなんじゃ!時代遅れなんじゃ!
 長髪オールバックはもう10年古いんじゃ!!」



「じ、自分を傷つけるのはやめてくれ、ロバートさん!
 なんとか…… なんとかしなければ……
 そ、そうだ!ユリさんなら!
 ロバートさんが想いを寄せるユリさんならあるいは!」


「ユ、ユリちゃんだな! よし、八神連れて来てくれ!」




「そ、そうだ、八神君! またHOW TO PLAYのように連れて来てくれ!
 今頼れるのはキミしかいないんだ!」




「わ、わかった!」








「何や、こら! どこがユリちゃんや!!」




「八神、てめぇ!
 どこの世界に2001のユリを連れて来るバカがいんだ!」




「だ、駄目なのか!?」




「今日もユリちゃんは絶好調!」




「喋るな!」




「何や、逆に落ち着いたわ……
 すまんかったな、ちょい熱ぅなってもうて。わいの悪いクセや」




「良いんだよ、ロバートさん。僕らは同じ美形キャラ仲間だろう?
 僕らの絆はそんなことでは傷つきはしないよ」




「ああ、その通りだぜ…… 俺も仲間の前でハメを外し過ぎた部分があった」




「いや、今回の件は全面的にわいが悪いわ。すまん、この通りや。
 せめて会議だけは責任持ってやりとげるさかい堪忍やで。
 許したってくれ」



「気に……するな……」







「さぁ会議再開だ! 僕達で濃密な時間を過ごそうじゃないか」




「また有耶無耶になると意味がない。
 ここはまずテーマを決めてから会議を進めるのが得策ではないか?」




「ああ、キミに言われなくてもそんなことは解っているのだが、
 今日はテーマを絞ることにした。ずばり美形キャラのファッションについてだ」




「美形キャラのファッション。こらまた興味深いテーマやな」




「やっぱり、ファッションにも気を使ってこその美形キャラだからな。
 顔、スタイル、ファッション、これらが俺のように完璧に揃わないと
 これからの美形業界は生きていけないぜ」



「うむ、その通りだ。
 美形キャラのファッションは時代の最新流行を取り入れなくてはならない。
 だから、
各作品で頻繁に衣装が変わるキャラこそが美形キャラ
 と言えないだろうか?」


「そ、それや! わいもKOFで昔風の衣装と外伝風の衣装を
 最新流行に合わせて行ったり来たりしとる!」




「俺も最新流行へ合わせて胸を空けたり、2003では豹柄に着手したりしたな。
 あっと、EDで髪を下ろす芸も忘れちゃいけない」




「そうなんだ! その通りなんだ!
 僕も流行に即した炎の形や髪のまとめ方を模索しながら
 毎回のようにコスチュームチェンジを行っているんだ!
 つまり
頻繁に衣装の変わるキャラこそが美形キャラなんだよ!!」

「…………」




「あ……」




「あ……」




「あ……」




「そう言えば橘右京は毎回全く変わらんな」




「ガハァ!」




「血を吐いた!」




「右京さんが血ぃ吐きよったで!
 せ、せや!あかんかったんや!毎回毎回何の変哲もない袴姿の一張羅っちゅうのを
 指摘されたらあかんかったんや!
 リンゴくらいしかアクセントがないんを指摘されたらあかんかったんや!!」


「ウゴハァ!」




「謝れ、八神庵!」




「右京さんに謝れ!」




「謝れ!」




「な、何だ、貴様等、何を言っている。
 俺はどちらかと言えばアンディ・ボガードの意見には反対の立場だぞ」




「そういやてめぇもストライカー以外一張羅で通してるな」




「なるほど! つまり八神庵は美形キャラではないということか!」




「いや、そうとは限らんだろう。こういう考え方は出来ないか?
 人気がないからこそ衣装を変える必要が出て来る」




「な!?」




「なんちゅうことを!」




「おま、お前は何を言っている!」




「だから、各シリーズの不人気キャラに少しでも人気を与えるべく、
 頻繁に衣装を変えて四苦八苦しているという考え方は出来ないのか?
 というのが俺の主張なのだが。人気があれば衣装を変える必要もないだろう」



「ガハァ!」




「ア、アンディ!」




「ぬばたまの 闇にうかぶる不知火の かぼそきいのちの あはれなりけり」




「だ、大丈夫…… 大丈夫だ……
 僕は負けない…… 僕達は負けちゃいけない……」




「そ、それより八神はいつまでここに居座る気だ?
 歌の収録はどうなったんだよ!」




「それもそうだな。じゃあ俺はここらでお暇させて貰おう。
 後で会議のまとめをプリントして俺の机の上にでも置いておいてくれ」




「それは…… 私が引き受けよう……」




「ああ、すまんな。そうして貰えると助かる」




「…………」




「…………」




「…………」




「……わいらも、帰ろか」




「……そうだね」




「……ああ」