sagittal画伯
REALBOUT美形会議
「やぁ! 餓狼伝説の美形キャラ、アンディだよ」




「わざわざ説明せんでもええやろうけど、
 わいが龍虎の拳の美形キャラ、ロバート様や」




「…………」




「右京さんや」




「サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだね」




「で、うら若き乙女達を熱狂させる
 そうそうたる美形キャラ三人がすでに揃ってしもたんやけど、
 何やもう会議なんぞやる気おきへんな」



「ちょ、ちょっとロバートさん、いきなり何を言ってるんですか!」




「いや、なんちゅうか素で仕事ないねん。
 極限流ブランドはリョウとユリちゃんがおればええみたいな風潮が
 カプエスとポリキンで出来てもうた気がする。
 今の時代、美形キャラなんぞ必要とされてへんのや」


「そんなことないですよ!
 どうしたんですか、ロバートさんらしくない!」




「せやかてこれはもう逃れようのない現実なんや」




「そんなネガティブな発言、ロバートさんらしくないですよ!」




「…………」




「そんなロバートさん…… 見たくない! 同じ美形キャラとして幻滅ですよ!」




「……せやな、アンディ。お前の言う通りや。
 わいはちょっと思案の袋小路に迷い込んどった。
 そんなん誇り高きヤングタイガーやあれへんわな!」



「そう! その通りですよ!!」




「アンディなんぞ、お前キャラ被りもあれへんのに
 カプエスもポリキンにも呼ばれへんしな!
 こないなことで悩むなんぞわいはホンマどうかしとったわ」



「……まぁ、そうですね」




「…………」




「すまん、KOF MAXIMUM IMPACTの収録で遅れてしまった。八神だ。
 まだ美形会議はやっているか?」




……!?




……!?




「何だ……?」




「ちょ、誰やねん、お前!」




「こ、ここは美形キャラが重要な会議を行う場だ! お前は何をしに来た!」




「何って…… だから美形会議じゃないのか? 俺だよ、俺。
 貴様にお前呼ばわりされる覚えはない」




「オレオレ詐欺かいな!
 いくらわいが金持っとるからて、そないな詐欺に簡単にかかる思うなや!
 お前なんぞに渡す金はビタ一文とて存在せんのや!」



「……空気読め!」




「な、何だ? 俺が悪いのか? 詐欺はしていない。
 これは各シリーズの美形キャラが会議を行う集まりではないのか?」




「ん? もしかしてキミは…… 八神君かい?」




「だからそう名乗っただろう。何を言っている」




「どこが八神や! 八神はそないポリゴンのツラはしとらんわい!」




「そ、そうだよ、ロバートさん! ポリゴンだ!
 この八神君はKOF MAXIMUM IMPACTの八神君なんだよ!」




「ああそうか、すまんな。
 収録から直接だったものだから、2Pモデルのまま来てしまった」




「ポリキン? それに2Pやて!? どういうこっちゃねん、これは!」




「ポリゴン作品であるKOF MAXIMUM IMPACTでは2Pモデルという物が存在していて、
 そこでは従来の1Pモデルとはおよそ掛け離れたビジュアルのキャラクター達が
 2Pモデルとして登場するんだよ!!」



「な、なんやて!? つまりはこういうことか!
 八神の2Pとしてわいも出れるチャンスがある!?」




「いや、それはないだろう。
 あったとしてもなぜ俺なんだ。リョウ・サカザキの2Pにしてもらえば良い」




「だ、誰がリョウの2Pカラーや!
 お前、リョウをマリオとしたらわいはルイージて、
 言うてええことと悪いことがあるやろが!
 さしづめ師匠はワリオかいな! こら傑作やで!」


「ちょ、ちょっと待て。話が飛躍しているぞ。
 それに任天堂的なことは一言も言っていない」




「言い逃れは見苦しいで!
 その顔はリョウがクッパやったらわいはハンマーブロス辺りなぞと思うとる顔や!
 クラッシュ・バンディクーにも劣るて主張しとる顔や!
 アンディ、お前もせやろ!?
本音ではわいのこと、ノコノコの羽が生えたヤツ程度に思っとんねやろ!」


「お、思ってないですよ! 何を言ってるんですか!
 ロバートさんは誇り高きヤングタイガーだと思ってますよ!」




「……そか、それならええんや。ホンマはそないヤングやないねんけどな。
 どうもわいは八神のポリゴン顔を見て焦っとったらしい。
 ポリキンではどうも、極限流ブランドは
 リョウとユリちゃんがおればええみたいな空気があったさかいな。
 それをわいは敏感に感じ取ってしもうた」


「あ、そ、そうだ! リョウさんはメインの主役だし、ユリさんはヒロイン!
 作品を象徴するに当たって美形キャラは必ずしも必要というわけではないんだよ!
 だから僕も呼ばれていないし、右京さんも呼ばれていない!」



「せ、せや! むしろ呼ばれてしもたらそれ即ち
 美形キャラ失格の烙印を押されたも同然なんや!」




「……おお!!」




「そういえば今朝警視庁ハイテク課に行って来たんだが」




「なに盛り上がりに水を差しとんねや!
 言いたいことがあるならハッキリ言うたったらどないやねん!」




「……空気読め!」




「いや、だからこれから話す。
 今朝警視庁ハイテク課に行って来たんだが」




「何をしに行って来たんだい?」




「ん? 京のヤツを通報するというので話し合いの結果、
 俺が代表して行くことになっただろう」




「本気にしとったんかいな!
 お前、あの娘ナンパしよか言うて冗談で盛り上がっとったら
 本気で声かけ行って引かれるタイプやろ!」



「何だ、冗談だったのか? まぁ今はその話は良い。
 そのハイテク課で小板橋篤記という男から話を聞いたんだが、
 どうもこの会議は盗聴されているらしい」



「なんだって!?」




「そらホンマにサイバーテロやがな!
 お前それそういうことははよ言わなアカンで!」




「ああ、それは悪かったな。なかなか言い出せる雰囲気ではなかった。
 ところで、押収したテープを借りて来たから聴こうと思うのだが」




「ああ! 早くスタートさせてくれ!
 まったく、僕達の神聖な会議を盗聴するなんてどういう了見なんだ!」




「じゃあ行くぞ。スクリプトはONにしろ」






「こ、これは!?」




「何やこら! 開口一番盗聴されとるやないかい!」




「ロバート・ガルシアが暴れている場面もあるぞ」






「あかんあかん! 何やねんこら!
 誰が10年古い外れ美形キャラやねん、ホンマ!
 誰や盗聴しくさっとんのは! はよ出て来んかい!」





「…………」




「……結局来なかったね」




「…………」




「こういうのもある」






「ガハァ!」




「は! もしやこれはまさか……!」




「アンディ・ボガードが声を荒げているシーンもあるぞ」






「ハハハ、お前、アンディそれちょっと荒げすぎやろ。
 何も裏返るほど怒らんでもええやんかっちゅー話や」




「……フッ」




「わ、笑っている場合じゃないですよ二人とも!
 僕にはこの盗聴の犯人が判ってしまったんだ!!」




「何やて!?」




「そうなんだ! 僕の推理からいって、犯人はこの中にいる!!」




「……!?」




「つまりこん中にスパイがおるっちゅうことかいな!?」




「待て。そう決め付ける前にその推理とやらを聞くのが先決だろう」




「では話そう! 実に当たり前のことだが、
 僕達の会議を盗聴するということは、僕達の会議を盗聴、録音し、
 横流しすることによって利益を得ている人間がいるということだ。
 それにはまず、他の業界との繋がりが必要となる!」


「何や、その他の業界にわいらの情報を売っとるんかいな、そのスパイは!
 情報化社会の網の目を掻い潜っとんのかいな!」




「そうだ! そうやって莫大な利益を得ているんだよ!
 そしてその利益を裏で回し、色々な作品に出演することで
 あたかも大衆に大きな人気があるように見せかけ、
 そしてまた次の作品に出演している!」


「ま、まさか!?」




「そう! いつも他作品出演で会議に遅れて来る、八神庵!
 お前がスパイだ!!」




「せ、せや! いつも遅れて来る振りをしながらその実、
 この会場のあちらこちらに盗聴器を仕掛けとったんや!!」




「何故そうなる。
 確かに遅れて来ることは謝罪するが、俺には仕事先でのアリバイがあるだろう。
 そもそもこのテープを持って来たのは俺だ」



「何がアリバイや! 事の重大さがまだ解ってへんのかいな!
 お前スパイやで! ほうれん草食うて強ぅなるポパイとは関係あれへんねんで!」




「僕には解っているよ、八神君。
 キミが今日このテープを届けてくれたのは罪悪感に耐え切れなくなったからだ。
 美形キャラとは寛大であるべしとの訓もある。素直に白状してくれて良い」



「道理でわいらには不自然なまでに仕事がないにも関わらず
 八神ばかりがあちらこちらで引っ張りダコな理由が解ってしもたわ!
 何でわいのヤヲイ本がないんか解ってしもたわ!」



「いや、だからなぜ俺が許される立場になっている。
 貴様等に仕事がないのは単純に人気がないからだろう」




「ガハァ!」




「血を吐いた!」




「せ、せや! アカンかったんや!
 シンプルな発言は何よりも深い棘となって心のハートに突き刺さってしもたんや!
 てか、それ言うてしもたら最終回やないか!」



「謝れ、八神庵!」




「右京さんに謝れ!」




「いや、橘右京には普通に仕事があるだろう。
 サムライスピリッツ零SPECIALや、
 すでに発表されているサムライスピリッツAW等シリーズ展開もまだ続いている。
 俺が言っているのはむしろ元シリーズが打ち切られて
KOF及びNEOGEO BATTLE COLISEUMへの出場も予断を許さない状況の貴様等二人なのだが」


「な、なんちゅうことを!」




「おま、お前は何を言っている!」




「そもそもこのテープの内容に流されて困るような部分があるのか?
 せいぜいが俺達が恥ずかしがる程度だろう。
 こんな内容の物に金銭価値を見出すヤツはいない。
 それに金で人気が出るならロバート・ガルシアも金を使えば良いという話になる」


「確かにそうやな。
 その理屈やったらわいに仕事がないんはごっつオカシイわ」




「…………」




「どうも最近、極限流ブランドはリョウとユリちゃんがおればええっちゅう空気が
 ほのかに漂っとる気がしてならんねやけど、ホンマどないなっとるんやろか?
 教えてくれ、八神。わいはどないしたらええんや」



「ロ、ロバートさん!?」




「俺に聞かれてもな……
 ……新しい決め台詞で一山当てる、とかか?」




「うーん、なるほどな。一理あるで。
 確かに今のアレはちょい押しが弱いかもしれへんな」




「よっしゃ!の一言ではな」




「誰がヨッシーじゃ!!
 お前、わいが主役張ったART OF FIGHTING 龍虎の拳 外伝が
 ドクターマリオに対するヨッシーのクッキー的な位置付けや思うとったら
 ホンマ痛い目見るで!!」


「だから任天堂的なことは何も言っていないだろう! 何を言っている!」




「…………」






「つきくさの ひがんにとどむ花一りん 誰が為にとぞ あれ野をわたらん」