ゴリるる画伯
バトルファイターズ美形会議
「やぁ! 餓狼伝説の美形キャラ、アンディだよ!」




「もうわざわざ説明すんのもたいがいにせぇよ!っちゅう感じやねんけど、
 わいがNBCの美形キャラ、心はいつも誇り高きヤングタイガーこと
 ロバート・ガルシア様や」



「…………」




「右京さんや」




「サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだね」




「まぁまぁ、アンディ、右京さん、今日はうちからテレビ持って来たさかいに
 ちょっとこっち座ってNBCで対戦プレイしようやないかい。
 いやぁ、ホンマおもろいで、NBCは。特にキャラがええな、キャラが」



「……はぁ」




「…………」





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「こらしょっと。おぅ、ちょうそこ座って。座布団あるから。
 まぁとりあえず二人ともわいは確定として、相方はどないするんや?
 格ゲーはキャラセレ画面からもう闘いやさかいな!
 ここでのカーソルの動かし方でだいたい相手のレベルが見えるよってな、
 わいくらいになると」


「いや、それなんですが、フッフッフッ……
 僕が使うチームはもう崇秀君と楓君に決まっているんですよ。
 同じ弟キャラですからね、弟チームで。フッフッフッフッ……」



「そ、そか? まぁええねんけどな。(何や笑い方、気持ち悪いな……)
 右京さんはどないでっか? わいと、あ、それからわいがカラーエディットで作った
 右京さんカラーの御名方守矢でええか。まぁ似たようなもんやしな」



「ガハァ!」




「血を吐いた!?」




「フッフッフッ…… どうしたんですか? ロバートさん。
 早く始めましょうよ。僕は相手が右京さんでもロバートさんでも構いませんよ。
 フッフッフッフッフフフ……」



「い、いや、右京さんが血をな…… (何や笑い方、気持ち悪いな……)
 ま、まぁ、ええわ。NBCはまた今度でええわな。
 剣サムや! 今日は今が旬の剣サムやろうやないかい!
 これなら右京さんも出とるさかいな! わいらで右京さん限定戦や!」


「……おお!」




「いやぁ、申し訳ないんですが、フッフッフッ……
 僕は剣サムでは風間火月君を使うことにしているんですよ。
 同じ弟キャラですからねぇ。フッフッフッフッ……
 ここは譲れませんよ、フッフッフッフッ……」


「あ、そ、そか。い、いや、さっきからどないしてん? アンディ。
 何や歯の隙間に詰まったコショウを数日後に噛んでもうたような笑い方しとるで?
 プライベートで何ぞあったんかいな?」



「いえいえ、そんな笑い方はしていませんよ、フッフッフッフッ……」




「…………」




(はっ! もしやアンディは、NBCにはわいが出とって、
 剣サムには右京さんが出とるにも関わらず、
 自分は影も形もないんを気に病んで気持ち悪い笑い方しとるんやないやろうか……?
 右京さんが血ぃ吐いても全然からんで来よらんし)


「フッフッフッ…… 早く始めましょうよ。
 地元でウザがられた僕の天火月を見せてあげますよ、フッフッフッフッ……」




「せ、せや! アンディ、PS2版の剣サムには
 黒子っちゅうキャラが追加されたんを知っとるか!?」




「それが何か? フッフッフッ」




「せや! その黒子っちゅうオッサンがやな、わいらの必殺技を使いよるねん!
 ほら、わいらはナウな現代人やからサムスピには出られへんやろ?
 せやから技だけがその黒子のオッサンの技としてゲスト出演しとんねん。
 これはもう実質わいらがサムスピにゲスト出演しとると考えてええんやないやろか!?」


「な、何だって!? もしかして僕の技も!?」




「あったり前田のクラッカーやがな!
 わいの覇王翔吼拳から龍虎乱舞まで使いよるねんで?
 技表見てみ、これ。ジェノサイドカッターに花蝶扇に……」



「ぼ、僕は!? 斬影拳ですか!? 超裂破弾!?」




「それからパワーゲイザーやろ?
 レッグトマホーク、真空投げと来てやな……」








「こう、大蛇薙にMAX大蛇薙に…… それから、あー……」




「…………」




「…………」




「…………」




「……僕は?」




「ま、まぁ、ええやないかい!
 ゲームはもうしまおう。テレビも。座布団もな。今日は会議やねんからな。
 対戦プレイはいつでも出来るさかいに、 
 今は今しかでけへん事に全力を傾けるんや。
それが今を生きるわいら美形キャラの美学みたいなもんやからな」


「……僕の技はどこですか? 次のページですか?」




「い、いやいやいや、今は今しかでけへん事に全力を傾けるんや。
 それが今を生きるわいら美形キャラの美学みたいなもんやからな」




「…………」




「すまん、KOF MAXIMUM IMPACT 2公式サイト用の
 写真撮影で遅れてしまった、八神だ。まだ美形会議はやっているか?」




「お、おおぅ! 八神! ええタイミングやで、お前さん!
 お前さん、ごっつ空気読めとるでぇ!」




「む? そうか」




「ああ、MAXIMUM IMPACTに続編が出るんだってね」




「ああ、発売日が4月27日に決まったのでな。
 今、急ピッチで撮影が行われているところだ」




「それはリンク先を見れば解るけど、また僕がいないようだね。
 出演依頼の連絡もまだ入っていない」




「まぁまぁアンディ、これからやろ。
 見たところ美形キャラはまだ公開されてへんみたいやし?
 わいらはトリもトリの大トリっちゅーこっちゃ」



「ま、まさかロバートさんにはすでに出演依頼が!?」




「いや来てへん」




「…………」




「初回生産版にはアニメ版KOFのDVDも付くとの話だ。
 社運が懸かっているからその辺をよく宣伝しておいてくれと頼まれた。
 貴様等も自腹で買うと良い」



「あ、せや。アニメKOF言うたらお前、第一話で年端も行かん女の子ドツきよってからに、
 ファンの間で大論争を呼んだそうやないかい」




「むぅ、急いでいたんでな」




「何だって!? その話、詳しく聞かせてくれないかな!?
 これは美形キャラ業界全体に関わる問題だよ!?」




「何や、アンディ。アニメ観てへんのかいな。
 Web配信やから何回観たってもタダやで?
 一話は舞ちゃんも出とるよってからに、これぞまさしく必見っちゅうヤツや」



「ま、まさかロバートさんもアニメKOFに出演を!?」




「いや出てへん」




「……あ、そうですか」




「まぁせやから八神がこう、年端も行かん女の子をやな、
 女子供はすっこんどれぇ! 言うてドツきよってからに、
 ファンの間で大論争に発展してやな。
 何や知らんリョウのやっとる極限流の公式サイトも荒れる荒れる」


「何だって!?」




「待て! 子供を手で払ったのは認めるが、
 女子供はすっこんどれ! などとは言っていない。
 急いでいたのでよく覚えてはいないが、確か無言だったはずだ」



「無言だろうが清少納言だろうが関係ない!
 無抵抗の子供を突き飛ばすだなんて…… 美形キャラ失格だよ、八神君!」




「せやな、わいも常日頃から子供には優しくするよう努めとるさかいな。
 知り合いの子供に金渡したり…… 知り合いの社員の子供に金渡したりとかやな、某社の。
 アニメに出て浮かれてもうたんはそらそうやろうけど、
 そういう美形キャラとしてのイメージを保つ日々の努力も怠ったらあかんで、お前」


「くれないの 命をからむ 桐一葉  右京」




「カッ! その通りだ! 僕も北斗丸に優しくしているし、
 子供を大事に出来ない人間はもう美形キャラとは言えない!」




「こら美形キャラ業界全体のイメージダウンやからな。
 わいも厳しく言うたらんと」




「別に子供を大事にするのは美形キャラだからだとか、そんな問題ではないだろう。
 それに、サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣のときの橘右京はどうなる?」




「斬紅郎無双剣だろうが僕の超必殺技の斬影流星拳だろうが関係あるものか!
 僕ら美形キャラは子供達のヒーローなんだ!
 誰よりも子供達に優しいのが美形キャラだろうが! 右京さんだろうが!」



「せや! なに知識人ぶってんのや!」




「ほろよいの しらねの美酒に べにはがね」




「何だ、記憶にないのか……
 仕方がない。貴様等が忘れているなら俺が当時の映像を持って来よう」




「何をしても無駄だ。僕は元より、ロバートさんや右京さんだって子供達を愛し、
 また子供達の模範となる行動を常日頃から心掛けている。
 この深き伝統、お前如きがとやかく言って良い問題ではない!
 冒涜は許さんぞ!」


「せや! もっと言ったれ、アンディ!!」








「遊んでいる子供達の目の前で人に斬り掛かっている」




「…………」




「…………」




「…………」








「母親が必死で手を引いて逃げているな。
 この状況が子供の模範となる行動とは俺には思えん」




「……まぁ江戸時代やからな」




「よくあることですよね」




「……うむ」




「そうなのか!?
 俺でも手を汚すときは子供の目に触れんよう路地裏等を利用するが……
 だがまぁアニメの件は確かに俺が悪かったな。
 貴様、一緒に居た女共と親交があるなら俺が悪かったと伝えてくれ。
とにかくあの時はアッシュ・クリムゾンを捜して急いでいたのだ。
あの男は本当に思い出すだけで腹が立つ!」


「そうか? 話してみたら案外ええ奴やったで?」




「俺はそうは思わんな!
 京以外でここまで腹の立つ男がこの世に存在することに俺は驚いているくらいだ!
 他人の力を勝手に奪っておいて謝りもしない! あの男だけはマジ許せん!」



「ま、まぁ、確かに他人の技をパクリよるんは良ぅないわな」




「今の俺は奴の顔を思い出すだけで腹が立って仕方がない!
 次に会ったら二度とその目で月を拝めんようにしてやる!」




「お、お前、そない顔のこと言うたったらアカンで!
 いくら梅酒…… アッシュ・クリムゾンがブサ顔や言うても、
 それかてご両親から授かった大事なブサ顔やねんからな!
 確かにわいらは美形キャラかも知れんけども、
ああいうブサ顔の引き立て役あってこその美形キャラっちゅう部分もあんねやから。
こう、光あるところにブサ顔ありっちゅうかな?」


「顔の造りを言っているのではない!
 奴の人を馬鹿にした態度が気に入らんと言っているのだ!」




「そ、そか。そら悪かったな(何や荒れとるな、今日の会議……)」




「ん? 待てよ。アニメ化されているのは言うまでもなく八神君だけでなく、
 僕やロバートさんも近年はDVD化されているわけだが、
 そこで当然僕らは主人公と並ぶヒーローとして描かれている。
 そこへ来て八神君はどうだろう?
彼は実は美形キャラではなく、悪役キャラだったんじゃないのかい!?」


「ふぅ…… ここで怒っていても議論に水を差すだけだな。
 なるほど、確かに俺は悪役を演じることもあるが、
 だからと言って必ずしも美形キャラの定義から外れるということもあるまい。
 主人公の対比として美形の悪役キャラを置くという手法は
古来よりアニメのみならず各メディアで多用されているポピュラーなものだ」


「いや、それはもう別ジャンルだと僕は思うね。
 美形キャラはアニメの世界でも視聴率を最も左右する花形なんだ!
 主役と悪役では当然、出演時間に埋め難い差が生じる。
 現に八神君! 君は美形キャラとしては
出演時間があまりにも短すぎるんじゃないのかな!?」


「…………」




「あ……」




「あ……」




「そう言えば、サムライスピリッツ 破天降魔の章では、
 橘右京はエンディングのスタッフロールにしか出演時間を与えられていないな。
 ストップウォッチで計ってみたのだが、時間にして実に35秒程度しか出番がない。
 さらに言えば一言もセリフがない」


「ガハァ!」




「あ、謝れ、八神庵!」




「右京さんに謝れ!」




「な、何だ、貴様等!?
 今はアニメーションにおける美形キャラの役割りと出演時間の関係、
 それに伴った視聴率の推移を論じているのではないのか?」



「そ、そらそうやねんけど」




「……空気読め!」




「解らんな。
 そもそも、本当に美形キャラが視聴率に大きな影響を与えるのであれば、
 何故、貴様等はThe King of Fighters:Another Dayに出演していない?」



「な、なんちゅうことを!」




「おま、お前は何を言っている!?」




「だから、社運を懸けたプロモーションで視聴率の取れる
 美形キャラを外す理由が俺には解らんと言っているのだ」




「実はもう誰もこの人達を美形キャラと思ってないからなんじゃない?」




……!?




……!?




……!?




「キャラクター戦略も良いだろうが、練り込まれた脚本や演出があってこそ
 美形キャラの動きに華が…… ん?」




「ウフフフ…… それじゃ、バイバイ」




「!? ま、待て! アッシュ・クリムゾン、貴様……!」




「…………」




「…………」




「…………」




「……あー、会議も終わったみたいやし、NBCやりますか?」




「……ええ、ロバートさん使いますよ、僕」




「すまんな、何や気ぃ使わせたみたいで。
 わいも後で剣サムで右京さん使うよってな」





「……うむ」




「……ホンマおもろいなぁ、NBCは」




「……ですねぇ」




「そいやー」




「あ、強いなぁ、ロバートさんは」




「まぁなぁ」




「大きいですね、このテレビ。何インチですか?」




「高かったんやでぇ」