なまり会議
「ぃよっしゃー! わいが龍虎の拳のなまりキャラ、
 人呼んで誇り高きヤングタイガーことロバート・ガルシア様や」




「オイラは餓狼伝説のなまりキャラ、ホンコンの九州男児ことホンフゥやね」




「そしてアッシがKOFのなまりキャラ、
 華の脇役、輝く助演男優賞、チョイ・ボンゲでヤンス。
 よろしくお願いしますでヤンス」



「おっぱい! おっぱい!」




「そんでまぁ、今日はなまり業界について色々と話し合うわけやけども、
 わいはそない語尾に“ヤンス”付けとるだけのキャラをなまりキャラとは認めとうないわ」




「い、いきなりなぜでヤンスか!?
 アッシも立派ななまりキャラでヤンス! 立派になまってるでヤンス!」




「それただ語尾に“ヤンス”付けとるだけやね」




「まずお前をなまりキャラと認めてええんかっちゅーところからわいは入りたいわ。
 それただわざと語尾に“ヤンス”付けとるだけちゃうんか?っちゅう。
 気になってしゃーないねん、わいくらいのキャリアになると」



「そやね、オイラもそれば気になっとーばい。
 お宅、別にわざわざ“ヤンス”付けんでも普通に喋れるんやなかと?」




「そ、そんなことないでヤンス!
 アッシと“ヤンス”は一心同体でヤンス! 立派になまってるでヤンス!」




「せやかて何やわざとらしいねんな、お前の場合」




「わざとらしくないでヤンス! 極めて自然でヤンス!」




「こげんうさんくさか喋りもそうそう聞かんばい」




「そんなことないでヤンス!
 ていうか、うさんくささではいい勝負でヤンス! お互い様でヤンス!」




「わいかてホンマはそない細かいこと言いたないねんけど、
 そこはケジメとしてやな」




「悪りぃ! 遅れちまったかな?
 ここでジャニーズ系中性的二枚目会議ってのをやるって聞いたんだけど」




「? ジャニ…… 何ね? 何言いようと?」




「おっぱい! おっぱい!」




「ああ、ええんや。わいが呼んだんや。
 おう、待っとったで。NBCのなまりキャラ、ユウキ君やな。
 今日はなまり会議やっとるさかいに、
 気兼ねせんとぎょうさんなまって行こうやないかい」


「な、なまり…… 何だ!?
 な、何で俺がなまりキャラになっと、なってるんですか?」




「そら、お前さんがなまっとるからやろ」




「な、なまっとりゃーせんが!」




「なまっとるやんか」




「なまっとるね」




「なまってるでヤンス」




「い、いや違っ! ジャニーズ系中性的二枚目会議はどうなったんだよ?
 まさか、デタラメだったのか!?」




「それはまぁ嘘も方便、わいらは方言っちゅうことでな(笑)」




「上手いこと言いよるね」




「面白いでヤンス」




「ちぃともおもろぉないんじゃ!
 話が違ぅんじゃったらわしゃいぬるけぇな!」




「……?」




「あ、ジャニーズ系中性的二枚目会議じゃねぇんなら俺は帰るぜ!」




「ああ、何やそういうことかいな。
 ちょっと今のはなまりすぎとっていくらわいでも
 何言うてんのかわかれへんかったわ」



「なまりすぎやね」




「な、なまっとりゃーせんが!」




「まぁジャニーズ系中性的二枚目会議やってもええんやけども、
 せやかてわいとお前さんだけでやってもしゃーないやろ。
 今日はほら、ホンフゥとチョイ・ボンゲも来とるさかいに、
 なまり会議でええやないかい。なまって行こうや」


「だから俺はなまってねぇんだってば!
 俺はいつでも若者らしい東京弁ですよ!」




「おっぱい! おっぱい!」




「そげん言うんやったらオイラも入れて三人でジャニーズ会議ってのはどぎゃんね?」




「……それはちょっと難しいと思うでヤンス」




「あぁ!? しゃーしぃったい! 何言いよるくさ!?
 そぎゃんことなか言うとろうもん! くらすぞ、キサン!」




「まぁまぁまぁまぁ、待てや、お前ら。
 そら議論にエキサイトは付きもんやけどもやな。
 せやかてエキサイトしすぎよったら何言うてんのか
 もうわかれへんねんな、お前らの場合。何や怒っとるなぁくらいしかわかれへんねんな」


「その通りでヤンス! ちょっとビックリしたでヤンスけど、
 具体的には何を怒られたのかよく解らなかったでヤンス!」




「なしてね? こんくらい解ろうもん」




「で、チョイ・ボンゲがなまりキャラか?っちゅう問題やけどもやな」




「そこに戻るんでヤンスか! 誰がどう見てもなまりキャラでヤンス!
 こんなになまってるキャラなんてそうそう居ないでヤンス!!」




「確かに、個性的な喋りだよな」




「それや! ええところに目ぇ付けたな、ユウキ君。
 つまりわいらなまりキャラはなまっとることによって、
 ナチュラルになまりキャラっちゅう個性が演出されるわけやな」



「なるほど…… い、いや、俺はなまっとりゃせんですけども」




「おっぱい! おっぱい!」




「せやから、チョイ・ボンゲの“ヤンス”には何や、
 やらしいモンを感じてまうねんな、わいは。
 わいくらいのキャリアになると。わいの言うとる意味解るか?」



「あくまでナチュラルやないといかんのやね」




「せや! わざとなまらして個性を演出しようっちゅう根性があざといねんな!
 チョイ・ボンゲがなまりキャラっちゅうんはわいらと比べてフェアとちゃうやろ!?
 どないやねん、そこんとこ!?」



「おっぱい! おっぱい!」




「……そうは言うでヤンスが、アッシもこの芸風で10年メシを食って来たでヤンス。
 たとえアッシの“ヤンス”がナチュラルじゃなかったとしてもでヤンス。
 10年経てば嘘から出た誠でヤンス! アッシを認めて欲しいでヤンス!
 アッシの10年は常に“ヤンス”と共にあったのだ! でヤンス!」


「おっぱい! おっぱい!」




「なぁ? 何だかよく解らねぇけど、その人にも事情があるみたいだし、
 そがぁいっさんきに詰め寄ったら少しかわいそうじゃないですか?」




「? 曽我いっさん…… 何ね? 何言いようと?」




「何やわかりそうでわかれへんねんな」




「え、あれ? 標準ご…… なまっとりゃーせんが!」




「なまっとるやんか」




「なまっとるね」




「なまってるでヤンス」




「な、なまっとらんゆっとるじゃぁなぁんか! I'm not BOY!」




「いや、I'm not BOYはええねんけども。
 まぁええわ、しゃーない。100歩譲ってチョイ・ボンゲのことは認めたるわ。
 何や美女ならともかく、オッサンをこれ以上イジっとってもしょーもないしな」



「寛大な措置やね」




「ありがとうでヤンス! これでアッシも晴れてなまりキャラを名乗れるでヤンス!」




「まぁつまりチョイ・ボンゲから“ヤンス”を取ったら
 ただの小汚いオッサンしか残れへんっちゅうことで、
 逆説的に言えばここに“なまりパワー”みたいなんが発揮されとるっちゅうわけやな」



「“ヤンス”なかったらただのこすいオイサンやもんね。
 そげん考えると、単純になまりば言っても影響力バリ強かっちゃ」




「……“ヤンス”やめたらそこまで堕ちるでヤンスか」




「しかぁしや! わいらのなまりパワーは確かに凄まじいもんがある。
 しかしやな、その強すぎるパワーには弊害が付きもんやねんな。
 例えばや! わいなんぞイントネーションが関西弁に似とるっちゅうだけで
 イロモン扱いされるケースが稀にある。
これどないやろ? わいはその辺、たまに納得いかへんねや。わいくらいのキャリアになると」


「確かに、関西弁にはお笑いのイメージがあるからな……」




「せや、そらわいかてお笑いは好きやねんけども、
 わいはお笑い好きである前に龍虎の拳の美形キャラやろ?
 そういうイメージ先行についてわいは憤りを感じとんねん」



「オイラもちょこっとなまっとるだけで三枚目扱いやもんね。
 そげん言われても到底、納得いかんくさ」




「まぁ…… お前の場合はせやな。
 それはあながちなまりだけが原因とも言えんかも知れへんけども、
 一翼をになっとるんは間違いないわな」



「そやね」




「だったら、標準語も勉強して、人前でなまらないようにするとか?」




「お前さんみたいにかいな」




「お、俺はなまっとりゃーせんが! I'm not BOY!」




「I'm not BOYは知らんけども。
 せやかて、わざわざなまり隠して生きるっちゅうのも何や腹立たしいやん?」




「そうでヤンス! ユウキ君も自分のなまりに誇りを持って欲しいでヤンス!」




「そ、そうですか? でもやっぱり、変じゃないですか?」




「そぎゃんこつなかよ。
 ちかっぱなまっとぅお前さんがナチュラル言うもんくさ。
 人間、自然体がいっちゃんよかったい」



「で、でも、俺一応、NBCの主人公だし…… 主人公がなまってるっていうのも……」




「そない言うたら、わいかてなまったままで龍虎の拳 外伝の主人公やっとったがな」




「そん通り。気にすることなかよ」




「おっぱい! おっぱい!」




「せやな、わいも軽く神経質になっとったんかも知れんな。
 人間、自然体が一番や。わいらが不自然に自分を抑えることあらへん。
 わいらでこのなまり業界そのものをより良くして行けばええねんな。
 市民権を勝ち取るっちゅうの?
せや、しょーもないレッテルに怯える日々にバイバイや」


「そうでヤンス! その通りでヤンス!」




「そ、そうか…… 俺はなまってても良いんだ!
 わしゃあなまっとってもええんじゃ! 主人公じゃけぇだとか気にするこたぁない!」




「せや! 主人公がなんぼのもんじゃ!」




「もう自分を偽ってくたぶれるんはこりごりじゃ!」




「こりごりっタイ!」




「かばちたれよるやねこい輩にいごいごしとる自分にバイバイじゃ!
 わやくそ言うとるうずろしい世間にもさいならじゃけぇ!
 こがぁに清々しいなぁ久しぶりじゃ! わしゃあ今日から生まれ変わるけぇのぅ!
 ぬしらぁわしのケツに付いてけぇー!」


「…………」




「…………」




「…………」




「…………」




「……やっぱ、主人公がなまりすぎはよぅないわな」




「……それみんさいや」