這炎画伯 親子〔OYAKO〕会議
「よぉ、みんな! テリー・ボガードだ!
 今日は二回目の親子会議ってことで、はりきって行こうぜ!
 いやぁ、ずいぶん空いちまったが、なかなかメンバーと連絡取れなくてなぁ」



「メンバーが死人だと苦労するぜ、ったく」




「いやはや、申し訳ない」




「あ、いや、ジェフさんじゃなくて……」




「ハハハハハッ!」




「アンタだよ! アンタに連絡付かなかったんだよ! 何笑ってんだよ!」




「リョウ・サカザキだ。押忍!」




「儂が父の不敗の格闘家よ。押忍!」




「藤堂竜白が娘、藤堂香澄!
 故あって父様は欠席するが、だからといって極限流!
 藤堂の名を軽んじることは私が許さないからな!」



「故あってって、親父さんはどうしたんだよ……?」




「クッ……!」




「ど、どうしたんだよ!? 泣いてんのか!?
 聞いちゃマズかったのかよ……(やべ…… やっちまった……)」




(また失踪か)




(失踪したんだな)




「まぁ元気だせよ、カスミ!
 リュウハクのオッサンもその内、フラっと帰って来るさ!」




「はい…… お見苦しい所をお見せしました。
 お心遣い、感謝します」




「まぁそう固くならずにな。
 今日はその、何だ。親子会議ってことで、
 あー、親子関係のあり方をだな、えーっと、よしっ!
 後はロック頼む」


「お、俺かよ!?
 俺、今ちょっと発言し難い空気だろうがよ! よしっじゃねぇよ!」




「ハハハハハッ!」




「アンタは全然笑うとこじゃねぇんだよ!
 何も面白くねぇんだよ!
 俺は今ちょっと女の子にマズいこと言っちまって…… ああ、もう察しろよ!」



「うむ、だからこそ逆に、私はここはロック君に頑張って貰いたいな。
 汚名返上というほどではないが、自然と話しをする中で、
 香澄さんとも打ち解けられれば、
 親睦を深めるという意味でもそれが一番良いのではないかな」


「あ、はい…… そうかな」




「その通りだ、ロック!
 実は俺もそう思ったからこそ敢えてお前に振ったんだな、OK!」




「マジかよ…… 嘘くせぇな……」




「ロックさん、私は何も気にしていませんので」




「あ、ああ…… 悪かったよ、ごめんな」




「で、今日は集まって何を話し合うんだ?」




「あ、えーと、テリーが言ってたように、その、今日は親子……」




「ヒュー! ハキハキしろよ、議長!」




「議長じゃねぇよ!
 だから、俺たち親子キャラが上手くやっていけるように……」




「ここの親子は一癖ある連中ばかりだからな。
 一概に上手くと言っても、なかなか……」




「リョウ、まだ議長の話の途中だ」




「だから議長じゃ……
 ま、まぁ、その、上手くやっていけなくても良いから、
 人気が出れば良いわけで、でも偏りとか、それで…… あー、もうワケわかんねぇよ!」



「いやいや、私には解るよ、議長。
 親子キャラとして売り出す以上、確かに人気が偏るのは良くないな」




「あ、はい。そうです。
 でも、正直、俺に議長は荷が重いっていうか、ジェフさんの方が……」




「フハハハッ! どうやら私の人の上に立つ天性も遺伝したらしい!
 ボガードや極限流を押しのけて私の息子が議長とはな!」




「押し付けられてんだよ! 話聞いてんのかよ!」




「議長、続きを」




「ああ…… もう議長でいいよ。ちくしょう……」




「よし、じゃあ親子で人気の相乗効果を生む方法について話し合うか!」




「結局テリーが仕切んのかよ! 俺の議長は何だったんだよ!」




「ハハハハハッ!」




「何も面白くねぇんだよ! アンタもう帰れよ!」




「笑いの絶えない家族…… 良いものですね」




「良くねぇよ! 見るに耐えねぇ家族なんだよ!」




「…………」




「あ……」




「あちゃー またやっちまったか?」




「あ、だから俺は別に……」




「……ロックさん、貴方はなぜお父上を敬う気持ちを持てないのでしょうか?
 何か原因があるのなら、私は訊いてみたい」




「いい機会だ、聴いて貰えよ、ロック」




「あ、いや、俺はガキの頃、お袋が病気で親父のビルに……」




「ちゃんとギースタワーと呼べ、ロック。親父のビルではない」




「ああ、もう! 何で俺のカウンセリング大会みたいになってんだよ!
 今日は親子会議だろうがよ! 議題も決まったんじゃねぇのかよ!」




「ああ、相乗効果か…… これまた難しいな。
 格闘家である以上、拳を交わすのが一番だとは思うが、
 親子で殴り合うだけってのもなぁ」



「所詮、武に生きし男は拳でしか息子を説けぬものよ。
 そんな男が男親となった以上、己が業もろとも地獄まで持って行くしかあるまい。
 例え、息子にまた同じ業を背負わせることになってもな」



「ほぅ…… 深いですな」




「親父……」




「確かに、武を志した以上、ただの馴れ合いの親子であっては
 成長がないのかも知れません。
 しかし、安らぎを持たない親子関係というのも、リョウさんも言う通り私としては寂しい。
 これは、私が実子を持っていないからそう思うのかも知れませんが」


「ああ、さすがに父さんの言葉は俺にも染み入るものがあるな。
 あ、そうだ、ロック。
 父さんがいる内にこないだ言ってた悩みを聴いて貰ったらどうだ?
 最近、寝るときに毎晩うなされるっていう」


「い、いいよ、そんなの! 会議と関係ねぇだろ!?」




「ふむ、何か不調があるなら聴きましょうか」




「あ、はい。じゃあ、後でということで……」




「遠慮することはあるまい。私も聴いてやろう。
 最近、夢まくらに立ってもいつも不快な表情をしているではないか。
 ストレスを溜め込むのは私の経験上も好ましいことではない」



「知るかよ…… って、アンタが立ってたのかよ! アンタのせいじゃねぇか!
 アンタが夢まくらに立つから俺がうなされてんだよ!
 今、気付いたよ! 何でテメェ立つだけで何も喋らねぇんだよ!
 ナイトメア・ギースじゃねぇよ! 気味が悪いんだよ!」


「狼は眠らない、か……」




「……ロックさん、お父上は貴方が心配で……」




「待ってくれよ! 寝る度に頭に親父が無言で立ってんだよ!
 俺の身にもなってくれよ!」




「……何か、問題があるのでしょうか……?」




「いや、問題あるだろ! 寝れねぇんだよ、俺は! 汗ビッショリ掻くんだって!
 俺ん家が変なんだと思ってたけど、アンタん家も充分に変なんだよ!
 気付いてくれよ!」



「ハハハハハッ!」




「笑い事じゃねぇんだよ! そうやって上から笑ってれば
 大物みてぇに見えるなんて思ってんなら間違いだからな!」




「!?」




「痛いトコ突かれてんじゃねぇよ! 俺は恥ずかしいよ、ホント!」




「……笑いの絶えない良い家族だと思いますが……」




「いや、だから見るに耐え…… もういい。
 俺が枕元に線香でも置いて寝れば良いだけだしな、ハハッ。
 たったそれだけのことじゃねぇか。俺は大丈夫さ。何も変わっちゃいない。
 そうさ、俺は何一つ変わっちゃいない。今も、そしてこれからも」


「だがな、こうギース達を見てて思うんだが、反目し合う親子っていうのも、
 それはそれで相乗効果になってるんだよな、不思議と」




「ほぅ、因縁が人気を生むとは、これまた皮肉な……」




「……父様を尊敬していては駄目なのでしょうか?」




「いえ、そういうことではありません。
 香澄さんのお父さんを想う気持ちもたいへん素晴らしいものですよ。
 それもまた立派な相乗効果になっていると思います」



「お為ごかしだな、ジェフ。
 そもそも私に言わせれば相乗効果などを求める行為こそが惰弱。
 互いに自立した先にしか拳の内に残る物はないのだよ」



「ふん、我が子に修羅を授けしときより支え合おうという腹など毛頭ないわ」




「それもアンタの生き方だろうし、否定はしないが、
 一家は支えろよ、親父の務めとして」




「うぐっ! 右胸の古傷が……!」




「左だろ」




「あ、左胸の傷が……!」




「だいたい、親父が口ばっかで働かねぇから
 ユリがギャルゲーに出稼ぎに出るハメになったんじゃねぇか!」




「リョウ・サカザキ! それは聞き捨てならん!
 父様の書き置きにはギャルゲー出演も心の修行だと書かれていたぞ!
 雑念を断つにはまず雑念を知ることが必要だと!」



「そ、そうか? そういうことは俺には解らんが……」




「思い出したが、そういえば先日、通帳におりた私の出演料が全部なくなっていた。
 父様はきっと敢えて痕跡を残すことで自分を追って来いと言っているに違いない。
 解ったか、ここまで考えられての修行だったのだ、リョウ・サカザキ」



「ふむ、藤堂のにはもったいない出来た娘よ」




(騙されてる……)




「まぁ、親子関係にも色々あるんだろうな。
 何か色々思い出しちまったよ。懐かしいな、アルカディア vol.1
 ロック、まだ俺のやった帽子持ってるか?」



「ほぅ、後で私の袴も譲ってやろう。
 もしもし、ビリーか? そうだ、縞々の入ったヤツを一着……」




「大丈夫だ…… 俺は何一つ変わっちゃいない……」




「ふむ、なかなか一つの結論に、というのは難しいということでしょうか。
 ただ言えるのは、様々な家庭があって、家族があって、親子関係がある。
 ただ親子であるという絆さえあれば、
 そこにもう相乗効果は表れているのかも知れません」


「どこまで行っても親子の縁ってヤツはそうそう切れるもんじゃないしな。
 親父がいない間も、俺はどっかで感じてたよ。
 闘う度に、ユリと顔を合わせる度にな。血を分けた絆ってヤツなのかな」



「……苦労をかけたな」




「家族ってのは良いもんだな、やっぱり。
 俺も、リョウ達に水を差すつもりはないが、血は繋がってなくても、
 俺も父さんとの絆を感じることが出来たよ。
 ああ、この人が俺の親父なんだなって、いつの間にか感じてた。
父さんが生きてた頃は俺もヒネてて言えなかったけどな、HAHAHAHA!!」


「……その言葉だけで充分だよ、テリー」




「父様……」




「しかし何だな。ぶっちゃけた話、私の息子が一番モテそうだな」




「うるせぇよ! もう俺を話題の中心に置くなよ! 空気読めよ! 帰れ!」




「HAHAHAHA!!」




「いやいや、儂の子らも侮れんぞ、ギース。
 ユリはギャルゲーでがっぽり貢がせて来よったし、
 リョウのヤツもKOFXIでは両手に花チームではないか」



「片方は妹だろ」




「リョウ・サカザキ!
 色事にうつつを抜かして拳を曇らせるとは、
 藤堂流を舐めているのか!」



「いや、別に曇ってないし、うつつも抜かしてないし。
 というか、雑念を知るのも精神修行じゃなかったのか?」




「お、おのれ父様がいないからと藤堂流を言いたい放題……!
 もう許せん! 表へ出ろ、リョウ・サカザキ!」




「お、俺が何か言ったか?
 まぁ、稽古なら付けてやらんでもないが…… 仕方がない、出るか」




「ふむ、良かろう。儂が立ち会ってやるとしよう」




「私もそろそろ時間ですかな。
 今日は楽しかったよ、テリー。アンディにも身体に気をつけるよう言っておいてくれ。
 あの子は昔から真面目が過ぎて、何か一人で抱え込んではいないかと心配なんだ」



「ああ、次のKOFのときにでも伝えておくよ。
 父さんも、もしまた機会があれば」




「私も時間だな。フンッ、軟弱な息子に喝を入れる良い機会だったのだが、
 どうやらその必要はないらしい。Good-bye!! HAHAHAHA!」




「二度と来んな! 成仏しろ!」