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シャワーを終え、曇ったガラスを手で払う不知火舞。
ふと目を落とすと、趣味の悪いヘビ皮のイヤホンに「KOF」の立体ビジョンが浮かび上がっていた。
彼女がアンニュイな表情でそれを耳に当てると、世界は一変した。



洗面所だったはずの場所は広大な冷蔵倉庫に。
バスタオル一枚だったはずの不知火舞はゲーム版でお馴染みのポニーテールとなり、
ゲーム版の面影が一切ない青いドレスにガーターソックスという姿に“変身”していた。

そこで待っていたのは二本の棒を操るコートの男――



似ても似つかないがMr.BIGなのだろう、多分。棒持ってるから多分。
あまりにも面影がないためゲームでのMr.BIGを一瞬思い出せなくなってしまったが、
一応、本来のMr.BIGはスキンヘッドでヒゲを生やしたサングラスの中年であったはずである。(>参照

問答無用で始まる不知火舞vsMr.BIG? のバトル。
サマーソルトキック等でMr.BIG? を圧倒する不知火舞。
終始、稲妻のエフェクトを纏っているのでこれは「KOF」ではなく「鉄拳」なのではないか? と錯覚する。
それにそもそも私の記憶が確かならば不知火舞は炎の使い手だったはずである。

そんな中、敗北を受け入れ難いMr.BIG? は蛇の塊のような物体が宙に浮いているのを見付ける。
不知火舞には見えていないようだ。
結局、Mr.BIG? に圧勝した不知火舞が宙に浮く、「KOF」のビジョンの浮かんだ球体を手に取ると、
舞台はバスルームに戻り、姿も濡れた髪のままバスタオル一枚に戻っていた。

ゲーム版の予備知識があってさえ謎が謎を呼ぶ不可思議なオープニングであるが、
そもそもこんな映画を撮ろうと思った外人自体が謎である。



不知火舞がホテルから出ると、そこにはちょんまげ頭の東洋人がニコヤカに待っていた。
そしていきなりのキスシーンである。二人は恋人関係であるようだ。
とすると、東洋人なのが気になるが、彼はアンディ・ボガードということになるだろうか。



二人がボストン文化博物館に入ろうとしたとき、笑顔満開だったアンディ・ボガード? は、
受け付けの警備員に呼び止められ、「俺は顔パスだろう?」といった風にムッとした。
そこで警備員が驚くべき言葉を発した。

八神さんでしたか、お通り下さい」――

どうやら不知火舞とキスシーンを演じていた笑顔の男性は八神庵だったらしい。
不知火舞のファンが涙目となり、アンディ・ボガードのファンが涙目となり、
そして何より八神庵ファンの怒りゲージが開始8分15秒ですでにMAXを突破した瞬間である。
庵のファンは彼のレアな幸せそうな笑顔を拝めたことで何とか矛を納めて頂きたいものだ。
あんな笑顔の八神庵はKOF乙女ゲー、Days of Memories 〜彼と私の熱い夏〜ですらも見たことがない。

ちなみに今映画日本語版の庵のイントネーションは今現在定着しているものではなく、
一貫してKOF'95のラウンドコール時の――と言えばファンには通じるだろうか。
懐かしいアクセントで呼ばれている。

不知火舞と意味深な視線を交わす警備員の男。
よく見ればこの男、先程のMr.BIG? である。これは一体どういうことなのか。



それにしても物々しい警備体制である。
そして、その警備の目を掻い潜り、監視を行う存在もあった。
この博物館に展示されている物は、ただの美術品などではないらしい。



その謎は年甲斐もなくマリリン・モンローのようなドレスに身を包んだおばちゃんから明かされた。
八神庵の呼ぶこのおばちゃんの名は神楽ちづる。肩幅だけは割と再現度が高い。
この博物館では何でもKOFの大会スポンサーであるイワタ・タカオ(誰?)の意向で
「八尺瓊勾玉」「八咫の鏡」「草薙の剣」からなる、三種の神器を全て展示しているらしい。
それは警備も念入りになるはずである。

不知火舞と八神庵は特等席に座り、そして会話は自然と三種の神器の話題となっていった。
「八咫の鏡」は八咫一族――神楽ちづるの先祖が創った“扉”の神器。
そして八神一族が二千年前に創った「八尺瓊勾玉」は“鍵”。
“扉”に“鍵”を通すと、別の次元への扉が開く――

天才科学者である神楽ちづるの父親はこのエネルギー波を凝縮させ、「KOF」のイヤホンを創った。
冒頭で不知火舞が耳に当て、世界を一変させたあのイヤホンである。
不知火舞はこのイヤホンにより別次元で行われる格闘大会「THE KING OF FIGHTERS」に出場し、
すでに一年も予選を闘い続けているらしい。

まったく原作ゲームにはない設定だが、
おそらく「KOFはSNK世界のパラレルワールドなんだよ」という設定を耳にした監督が、
何か色々と勘違いを起こして“別次元で行われる格闘大会”という解釈になったのだろう。

そして「草薙の剣」は解き放てば無限の力を得ると言われ、
千八百年前に別次元へと封じられた悪霊、「オロチ」を斬ることが出来る――

ちなみに原作ゲームでの「オロチ」は「地球意思」であって「悪霊」ではないわけだが、
八神庵に「悪霊」と断言されてしまったからには「悪霊」なのかも知れない。自信なくなってきた。



一方、受け付けのMr.BIG? はKOFの運営委員に戦闘続行の意思を告げていた。
そこに忍び寄る不審な佇まいの男――すぐに気付いたMr.BIG? だったが、
男は何のためらいもなくMr.BIG? を銃殺した。

一気に慌ただしくなったのは、先の監視を行っていた中年男性達だった。
神楽ちづるが万全の配備をしたはずの警備員達よりも早く、男達は現場へ乗り出す。
というよりむしろ何の役にも立っていない警備員を出し抜き、
Mr.BIG? を銃殺した不審な男は悠然とした足取りで神器の間へと現れた。



ごきげんよう、ルガール

その男の名を呼んだ神楽ちづるの表情は固く、敵意に満ちて、ますます小皺が増えていた。
取っ組み合う神楽ちづるとルガール・バーンシュタイン。
そこへ乗り込んで来る監視の男達。
どうやら彼らはルガール・バーンシュタインの仲間ではないらしく、
ルガール・バーンシュタインは彼らへもサブマシンガンを乱射した。

弾切れを見計らって再びルガール・バーンシュタインと組み合い、蹴り倒す神楽ちづる。
だが、倒れた先にあったのはあの神器――「草薙の剣」だった。
舞うは刃か、血煙か。バッサリと斬り捨てられる神楽ちづる。
やはり銃>刃物>格闘技は世界の常識である。これは格闘映画のはずだが、常識は常識である。

そこに飛び掛かったのはしばらく存在を忘れていた主人公、不知火舞だった。
不知火舞は草薙の剣に布を巻きつけて放り投げると、ルガール・バーンシュタインをも放り投げた。
打ち所が悪かったルガール・バーンシュタインはそのまま昏倒した。
こんなに強い不知火舞は見たことない。

だが、辻斬りに遭った神楽ちづるを気遣っている間にルガール・バーンシュタインは息を吹き返し、
三種の神器を持ってコソコソと逃げ出した。
追うのは八神庵と監視の男達。
先に接触したのは八神庵だった。その八神庵を同士へと誘うルガール・バーンシュタイン。
答えはNO。だが、すでにKOFを引退して久しいという八神庵は簡単に組み伏せられてしまう。

そこに銃を構えてなだれ込む監視の男達。
銃には勝てないのでルガール・バーンシュタインは個室へと逃げ込み、
「草薙の剣」で手の平を斬り、血をすすって「八尺瓊勾玉」をかけた「八咫の鏡」に吹き掛けた。
するとルガール・バーンシュタインは「八咫の鏡」に吸い込まれ、鏡もろとも次元から消失した。
呆然とする銃を構えた監視の男達。



結局、このおっさん達はクソの役にも立っていない
だが、一番悪いのはこんな無謀な企画をしたイワタ・タカオ(誰?)であるのは間違いないだろう。

ルガール・バーンシュタインは「草薙の剣」だけを置き去りにしたまま消えた。
その理由は「草薙の剣」が偽物のフェイクだったからだ。
だがそれは逆に、本物を求めてルガール・バーンシュタインがまた現れることを意味する。

オロチが解き放たれればKOFは命を懸けたデスマッチとなる。
搬送中の神楽ちづるから本物の「草薙の剣」の捜索を引き受けた不知火舞は、
草薙の継承者、草薙柴舟の居場所を探すことになる。
八神庵は決して巻き込まぬよう念を押されたまま。
やはり「八神庵」と「オロチ」の接触が引き起こすモノは、実写でも――

メールを受ける不知火舞。
「Where are you? Are you OK??」
差出人の名前は「テリー・ボガード



草薙柴舟はウエストモント記念病院の入院患者だった。
そして、精神科の隔離病棟に収容されていた

聞けば十年間、誰が話し掛けても答えることはないらしい。
ちょっとした仙人のような状態だが、それなら隔離病棟ではなく、
山にでも篭って欲しいと願わずにはいられない――



完全に目がイッてる

このおっさんが柴舟なのかよ! などと、そんなことはこの際、些細な問題だ。
完全に目がイッている。この表情のまま微動だにしない。
何かの修行で煩悩を断っているわけではない。完全に病んだおっさんの目だ。
おっさんは不知火舞の呼び掛けにもやはり応えることはなく、病んだ目で虚空を見つめるだけだった。

手詰まりとなった不知火舞の元に現れたのはイケメンの青年だった。



どう見ても西洋人だが、彼は「息子の草薙京だ」と名乗った。
どう見ても西洋人だし、原作ゲームに似せる気も微塵もない様子だが、
彼は「草薙京だ」と言い切った。
とても上のおっさんの息子には見えないが、今後もハーフだという設定で押し通す気らしい。

草薙さんにお話があったんですが、まさかこんな状態とは」と嘆く不知火舞。
本当にその通りである。

草薙京に事情を話し、草薙の剣について聞こうとするが、彼はしらを切るように何も知らないと語り、
父さん、寝る時間だよ」と優しい声色で草薙柴舟を寝かし付けた。
眠りにつくまで本まで読んであげるという完璧な介護ぶりである。
良い息子さんである。
もうこれが京で良い気がして来た

車に戻った不知火舞はそのまま眠りにつき、一晩を明かした。
そして翌朝も草薙柴舟の病室を尋ねる。だがそこで意外な人物と出会った。
八神庵である。不知火舞を心配して捜していたのだ。
互いに互いを巻き込むまいとする二人だが、
草薙柴舟に息子がいることを知った八神庵は草薙京に興味を示した。

ついに対面する実写版草薙京と実写版八神庵。
初対面の二人が挨拶を交わすと、八神という名に反応を示したのは草薙京ではなく、草薙柴舟だった。
眠っていたはずの草薙柴舟は血走った目を見開いて、

うんおおおォ! 殺してやる! 殺す! 殺してやる!

尋常ならざる食い付きを見せ、そのまま死んだ





病室で助手のスコット(誰?)に状況の説明を受ける神楽ちづる。
KOFは中止したはずだが、大会はまだ続いている。
KOFはすでに別次元からルガール・バーンシュタインに支配されていた。
選手達の命が危ない。



最初に標的にされたのは誰得年増レズカップルと化したマチュア&バイスだった。
二人が行為に及ばんとしたまさにその時、バイスのKOFイヤホンが光り輝く。
KOFへの参加は神楽ちづるに禁止されている。
だが、イヤホンはマチュアの物も輝いていた。二人タッグで闘え、ということだ。
誰得年増レズカップルと化したマチュア&バイスは色々なものを燃え上がらせ、戦場へとワープする。



不知火舞と同じく衣装も原作ゲームとは程遠いバイオレンスなドレスへと“変身”し、
そして何より何故か二人共トンファーを持っている
しかも変身後の不知火舞は一応髪型だけは原作ゲーム準拠だったのに対し、
マチュアは変身前の方が原作再現度が高いという謎の有り様だ。
もはやマチュア&バイスというより、やはり鉄拳のニーナ&アンナの方が再現の方向性としては近い。
少なくとも監督の好きな対戦格闘ゲームはKOFではなく、鉄拳だろう

二人を待ち構えていたのは何故かアイスホッケーの格好をしたルガール・バーンシュタインだった。
しかしやはり闘い難かったため、マスクとスケート靴を脱いだルガール・バーンシュタインは
炎を纏った蹴りを連発し、ホッケーとは何の関係もなくマチュア&バイスをKOした。
何故ルガール・バーンシュタインが炎――それもオロチのそれではなく紅い炎を使えるのかは不明だが、
このルガール空間では何でも思い通りになるということだろう。

マチュアを殺されそうになり、必死に命乞いを行う年増レズカップルの片割れバイス。
マチュアはそのまま洗脳され、人質となった。
もはやルガール・バーンシュタインの言いなりのバイスは友人に電話し、KOFへの参加を呼び掛ける。
そしてラモンシェルミーデュオロンがまんまと呼び出されて死んだ



テリー・ボガード、CIAだ

神楽ちづるの病室に、ついにその存在を匂わせて来た我らがサウスタウンヒーロー、
テリー・ボガードが現れた。
しかも無職(フリーター)と腐されて久しいあのテリー・ボガードがCIA勤務らしい。
ここは(今更の)設定無視よりも大出世を喜びたいところだ。

しかし、入って来たのはいつかの三種の神器を監視していたおっさんである。



えっ? このおっさんがテリーなの!?

誰!?

ここへ来て一番の、一番酷いサプライズだ。
要らないサプライズである。必要のないサプライズである。

テリー・ボガードを名乗るおっさんは快楽殺人鬼である
ルガール・バーンシュタインを逮捕するために神楽ちづるを監視していたのだった。
クソの役にも立たず、ルガール・バーンシュタインを逃したことを責められるテリー・ボガード。
テリー・ボガードは「草薙の剣を奪われるのを阻止したんだ、間違えるな」と言い張るが、
剣は言うまでもなくフェイクの贋作である。クソの役にも立たない男である。

ルガール・バーンシュタインの居所を聞き出したいテリー・ボガードだが、
神楽ちづるに別次元に存在し、オロチに取り憑かれて殺人大会を続け、
あらゆる次元の支配者「キング・オブ・ファイターズ」になろうとしていると説明されても
頭からまるで信じようとしない。

真実を知りたいのならば不知火舞に聞けば良いとテリー・ボガードを諭す神楽ちづる。
不知火舞はテリー・ボガードの部下で、一年前に送り込まれたスパイ捜査官だったのだ。



草薙柴舟の墓の前に寂しそうに佇む草薙京。
八神庵は時間の無駄だと止めるが、不知火舞は草薙京に草薙柴舟の代わりとなる期待を寄せている。
京はハーフだろ、純粋な草薙じゃない
拒絶する八神庵。あくまで実写版草薙京はハーフであるという設定で押し通す気のようだ。

オロチとは真の悪。人に抗えない破壊的な力を与え、そして最後には全てを乗っ取る。
だから引退したのかと、不知火舞は八神庵に問う。八神庵は何も答えなかった。

草薙柴舟は八神庵を見て発狂して死んだ。
何をしたのかと、草薙京は眼に怒りを込める。家同士の因縁。草薙と八神。
だが、草薙京は呆れた表情でその場を去り、バイクに跨った。
頑なな八神庵を見限り、不知火舞もその後を追う。

草薙京はバイクの修理工をやっていた。
留年を繰り返し、ついには職業欄に「なし」と書かれるようになってしまった原作ゲームの彼からすれば、
テリー・ボガードに続いての異例の大出世である。



互いに情報の交換をしようとする不知火舞と草薙京。
しかし「あんたもファイターか?」と聞かれた不知火舞は、
「実はスパイです」と答えるわけにもいかず、アンニュイな表情で背を向けた。

質問に答えろ!

その肩を掴む草薙京!
すると不知火舞は超反応を起こし、振り向きざまの手刀を浴びせたかと思うと腕をねじり上げ、
躊躇なく草薙京の肩を外した―――!


はたと我に返り、草薙京に謝罪する不知火舞だが、何をやっとるんだ、この女は



お前は京を脱臼させるために来たのかと。協力を求めに来たんちゃうんかと。

もはや草薙京を説得するのは不可能かに思われたが、何故か彼はまったく怒りもせず、
大丈夫(だ)、問題ない(アドリブ)」

不知火舞は草薙京をソファーに寝かせ、肩を入れる。
悶絶する草薙京は勢い余って不知火舞を押し倒す格好となり、そこでロマンスが生まれた。
なんでだ
甲斐甲斐しく治療を行う不知火舞をうっとりと眺める草薙京。
その肩を理不尽に外したのはその目の前の女だぞ! と京に教えてやりたい。
この一連の展開の意味が解らないなんでだ

意味が解らないが、ここでまさかの 八神庵→不知火舞←草薙京 という
三角関係が形成されることになった。
しかも不知火舞はあくまでスパイとして八神庵に近づいているためタチが悪い。
魅惑のくのいちにも程がある。
もし本命彼氏のアンディに出番があったなら京も庵も迷いなくオロチに魂を売ったであろう。

意味が解らないが、すっかり打ち解けた二人はKOF、草薙、八神の歴史について話し合う。
封印されていたオロチを最初に解き放とうとした八神家の先祖。
彼が望んだのは「キング・オブ・ファイターズ」。だがオロチに取り憑かれ、支配されてしまった。
そこで草薙と八神は手を組み、彼を殺し、オロチを再び封印した。

微妙に違うが、原作っぽい設定が実写版にも存在したようだ。
ちなみに原作では千八百年前に草薙、八尺瓊、八咫がオロチを封じたものの、
宗家草薙に嫉妬した八尺瓊がオロチの封印を解き、力を手に入れ、八神を名乗るようになり、
以来、八咫は神楽と名を偽って隠し通したオロチの長の封印を護って来た――となっている。

不知火舞の話がルガール・バーンシュタインに及ぶと、草薙京の表情が固まった。
ルガール・バーンシュタインこそが草薙柴舟の心を壊した仇だったのである。
父さんの仇を討つ――燻っていた草薙京の闘志がついに燃え上がる。



草薙京と八神庵の仲を取り持とうとする不知火舞だが、
草薙京には父親を発狂死させた八神庵への不審がある。
八神庵は草薙の自覚がない草薙京へ対しての苛立ちと、不知火舞を寝取られた嫉妬がある。
上手く行くはずがなかった。

そこに現れるテリー・ボガードという名のおっさん。
テリー・ボガードはPCを開き、ラモン? シェルミー? デュオロン? ――達、死体の山を見せる。
全てルガール・バーンシュタインに殺されたKOF出場者だ。

しかしルガール・バーンシュタイン――否、オロチを倒すには草薙の剣しかない。
それをやはりお伽話と認めない草薙京。頭ごなしに別次元を否定するテリー・ボガード。
場は険悪になるだけで話は一向に進まない。
テリー・ボガードは実際に別次元へ行ったと主張する不知火舞の言葉に呆れ果て、
彼女の任務を解く旨を伝える。

恋人の不知火舞がスパイだったことにショックを受ける八神庵。
不知火舞のジャケットからKOFイヤホンを奪い取り、耳に当てる。
八神庵は炎が揺らめくようにフッと掻き消えた。



赤いパンツに月のマークが入ったジャケット、ちょんまげ頭も髪を降ろし、
そこはかとなく原作ゲーム風味のする姿に変身する八神庵。

待っていたのはルガール・バーンシュタインだった。
八神庵を“同類”と呼び、やはりいつかのように勧誘するルガール・バーンシュタイン。
八神庵の返答もまたいつかと変わらない。

洗脳されたマチュア&バイスが八神庵に飛び掛かる。
しかしブランクがあるせいか、やはり八神庵は弱い。
2対1とはいえニーナ&アンナに鉄拳でお馴染みの投げコンボで締め上げられ、あ、違った。
マチュア&バイスに関節技で締め上げられ、ギブアップ寸前にまで追い込まれる。

八神庵の絶叫が響いた。苦痛の呻きではない。
同時に放出された衝撃波によって吹き飛ぶマチュア&バイス。
宙に現れる蛇の塊――オロチ。
暴走する八神庵はマチュア&バイスを痛め付け、圧倒してルガール・バーンシュタインへと向き直る。
同類の復活を拍手で祝うルガール・バーンシュタイン。

現実世界に戻った八神庵だが、やはりその眼は尋常ではなく、獣のように息を荒げるのだった。



翌朝、草薙京の家に現れたのは八神庵だった。
お前には草薙の自覚がない。草薙である以上、オロチと闘うのは使命だ。
なのにお前はそれを恐れている。

朝っぱらから説教を受ける草薙京。
実写版では八神庵は責任感の強い男性であり、草薙京は見栄っ張りだが心優しい青年である。
八神庵の挑発に乗り、草薙京もまたKOFイヤホンを耳に当てる――



すると何と京が学ランに変身したではないか!
京も驚いているが、KOFファンが一番驚いている!
男子の憧れ指抜きグローブの再現度も完全に本物としか言いようがない!
これが草薙京だ! 西洋人で真ん中分けでもないがこれが俺達の草薙京だ、これ!

何故ここへ来て原作ゲームを再現する気になったのかは判らないが
草薙京の眼前にはルガール・バーンシュタインの姿があった。

ついに愛する父、草薙柴舟の仇と相まみえる草薙京。
だが、一瞬でピンポンのように吹っ飛ばされ、マチュア&バイスにクススー(笑)と笑われる有り様だった。
ついにKOFのステージに立った草薙京は、みっともないくらい弱かった。
あまりにも弱かったため、ルガール・バーンシュタインに命だけは助けて貰えた。

敗北を経て、草薙京は父の墓の前で吹っ切れた表情を浮かべていた。
不知火舞の説得を受け、生来のへそ曲がりと、恋愛感情の裏返しで反発こそするも、
父に託された最後の草薙としての覚悟は決まっていた。

家に戻り、古い木箱をゆっくりと開ける。
中に収められていたのは一本の刀――草薙の剣。



今やルガール・バーンシュタインはKOFイヤホンを介さずとも、
選手という名の生贄の召喚が可能となっていた。
その第一号に選ばれたのは――不知火舞。

ルガール次元へ連れ去られた不知火舞と合流し、
三種の神器を取り戻し、そしてルガール・バーンシュタインを、
オロチを倒すために草薙京、神楽ちづるがKOFイヤホンを手に取る。

だが、八神庵の手は神楽ちづるが止める。
神楽ちづるは何があっても八神庵とオロチの接触を避けたいのだ。
八神庵の代わりにはクソの役にも立ちそうにないがテリー・ボガードが向かうことになった。



またここへ来て原作ゲームに酷似したファッションに変身するテリー・ボガードを名乗るおっさん。
要らないファンサービスである。まったく必要のないファンサービスである。

いい加減にしろ! 訴えるぞ!



ゆっくりとルガール・バーンシュタインが現れる。
お楽しみはこれからだ
KOFファンには馴染みの深いルガール・バーンシュタインのその言葉を皮切りに、
草薙京が父の形見、草薙の剣を抜刀した―――!

草薙京とルガール・バーンシュタインが入り込んだ次元は何とも奇妙な和室だった。
ルガール・バーンシュタインも袴姿に変身し、まるでギース・ハワードのようになっている。
まだ原作ゲームの技と判る技が何ひとつない実写KOFだが、烈風拳を繰り出す舞台は整った……!

かに思われたが、ルガール・バーンシュタインはそそくさと武器を手に取るのだった。
オロチの力を手にし、次元の支配者となってもやっぱ素手で刃物の相手は無理ゲー。

持ち出したのはバットだった。
草薙京ですらまだ炎を出していないというのに火の球ボールをガンガン打ち込む。
さながらバットを使ったブリッツボールといったところだろうか。



袴姿の外国人が和室で火の球ボールの千本ノック。
クライマックスなのに、そろそろちょっと何とかしてくれませんかね、この人。

紙一重でボールを躱し、ついには刀で真っ二つに斬り裂く草薙京。
すると今度はルガール・バーンシュタインも日本刀を取り出し、武士道トハ 死ヌコトト見ツケタリ、
まさかのサムライスピリッツが始まった。KOFの映画なのに、サムライスピリッツが始まった

しかし、やはり決定的に実力が不足している草薙京。
ついに力尽き、トドメを刺されかけたその時、次元の扉から飛び出して来る影――



孤高の紫炎――八神庵だ。



一方、神楽ちづるは分身して四人となり、奪われた三種の神器を探しに出掛けていた。



シュールな絵だが、これがゲーム版ちづるの代名詞的超必殺技、裏面壱活・三籟の布陣だろうか。
戦闘に用いず、分身して物を探すという日常で役立ちそうな使い方も出来るようだ。
リモコンがなくなったりしても自分が四人も居ればすぐに見付かるに違いない。
それにしても原作要素のない立ち姿である。ズボンが黒いくらいしか共通点がない。(>参照

不知火舞とテリー・ボガードの相手は今やルガール・バーンシュタインの忠実な下僕、
誰得年増レズカップルのマチュア&バイス――そして、街にうずくまる異様な眼をした浮浪者達だった。
ここは別次元の中なのか、それとも現実世界なのか。
否、ルガール・バーンシュタインの力で二つの次元が繋がり始めているのだ。

始まる舞無双にテリー無双。
元々強い不知火舞はドラム缶を振り回したりと浮浪者には無敵の様子だが、
テリー・ボガードを語るおっさんも意外にも強く、
舞&テリーvsマチュア&バイスのタッグマッチとなっても充分に渡り合えている。
当然、バーンナックルもパワーウェイブもないが、充分に渡り合えている。
オッケェイ!(アドリブ)」



草薙の宿命に目覚め、巨悪ルガール・バーンシュタインに挑む
草薙京に感化された八神庵には、すでにブランクなど関係なかった。
二人の闘いは熾烈を極めた。
蒼い炎を腕に纏う八神庵と、それを真似るように紅い炎を腕に纏うルガール・バーンシュタイン。
烈風拳こそ出なかったが、これが相手の技を自らの物とするルガールの原作ゲーム設定だろうか。
そこまで考えてない気もするが。

せっかく格好の良い打ち合いだったのに、ルガール・バーンシュタインが空気を読まずに、



何かレインボーファイヤービームみたいなのを出したので八神庵は劣勢に立たされ、ついに倒れる。
しかしそこに一足で駆け込んで来る男――



火炎祓濯! 今度は草薙京だ。

だが、ルガール・バーンシュタインは草薙京に、八神庵と草薙柴舟の真実を語り出す。
ある時、神楽ちづるは一族の長達を呼び集めた。神楽ちづる、草薙柴舟、八神庵の三人だ。
ルガール・バーンシュタインはKOFで優勝し、キング・オブ・ファイターズになる権利を得た。
だが、現役で王座に立つ草薙柴舟はオロチを解き放ったこの邪悪な男を認めなかった。
3対1でルガール・バーンシュタインに襲い掛かるどちらが邪悪か判らない一族の長達。
それでもオロチを宿したルガール・バーンシュタインは強く、止められなかった。

敗北し、屈辱を舐めた若い八神庵は禁断の力に手を伸ばす。
宙に浮かんだ不気味な蛇の塊。真の悪たる悪霊オロチ。
だが、八神庵は力を抑えられなかった。暴走し、破壊衝動のままに暴力を振るう八神庵。
それは、止めに入った草薙柴舟へも向けられた。
草薙柴舟の心を殺したのはルガール・バーンシュタインではなく、八神庵だったのだ。



ところで、十年無言だったという草薙柴舟がまだ健在ということは、
これは十年前のエピソードということになるはずだが、
面々にまったく若さがない(主に神楽ちづる)のはどういうことだろうか。
実写でそのポイントに触れること自体が野暮なのだろうか。

閑話休題。

草薙京が驚愕のままに八神庵へ振り返ると、八神庵の眼はすでに、ヒトのモノではなくなっていた。
――暴走。
八神庵は未だオロチの力を制御など出来てはいなかったのだ。
草薙京を組み倒し、ひたすら拳を打ち付ける八神庵。
どうした!(アドリブ)」

止めに入ったのはこの次元への扉を潜った不知火舞だった。
だが、それは逆効果だった。当然だ。不知火舞は八神庵を騙していたのだ。
このクソビッチが! 憎しみの力が増幅される。首を絞め、不知火舞を殺そうとする八神庵。

その背を、草薙京の草薙の剣が斬り裂いた。
ドス黒い怨念を吐き出し、苦しむ八神庵。だが外傷はない。
草薙京は恩讐を越え、八神庵のオロチのみを斬ったのだ。

それを見て、余裕を浮かべていたルガール・バーンシュタインが怒りの形相へと変わる。
新たなステージへと三人を放り出し、今、最後の闘いが始まった。





ルガール・バーンシュタインが放った巨大な炎の塊を稲妻バリアで封じる不知火舞。
今作の主人公、不知火舞一番の見せ場と言える派手なCGシーンだが、
本来はむしろ舞こそが炎の使い手のはずである。何度でも言うが、稲妻は出さない
さらに言えば、仲間を守るために広域バリアを張ったのかと思いきや、
草薙京と八神庵はしっかりと被弾している

そこに現れる、三種の神器を取り戻した神楽ちづる。
神楽ちづるが八咫の鏡を構え、八神庵が八尺瓊勾玉を翳し、そして草薙京が草薙の剣を構える。
放電する三神器トライアングルにルガール・バーンシュタインを捕らえた。
だが、それでもルガール・バーンシュタインは封じられない。
逆に炎をまともに浴びせられた神楽ちづるが深刻なダメージを負ってしまった。

調子に乗ったルガール・バーンシュタインは力を弄ぶかのように炎を発射する。
周囲が炎上し、仲間達と分断される不知火舞。
ならば、一人で闘うまで……!
雄叫びと共にルガール・バーンシュタインへと飛び掛かり、
餓狼&KOF史上最も強く、頼りになる不知火舞はこの無敵の男と互角の打撃戦を演じて見せる。
やはり最後に決めるのは主人公か―――!

と思ったが、ここでも邪魔に入るマチュア&バイス&浮浪者達。
不知火舞もいつの間にか行方不明になっていたテリー・ボガードと合流し、
また舞無双&テリー無双が始まった。このレズビアン共はどんだけしぶといんだ。

一方のルガール・バーンシュタインの相手は今度は草薙京、八神庵のコンビが行っていた。



が、やはりまともに闘いになるのは
ジャンピングファイヤーボール(闇払いとは言いませんよね?)等の必殺技を持つ八神庵のみ。
ポン刀を振り回してさえ草薙京では問題にならない。
ちなみにオロチの力から解放されたのに蒼い炎のままだが、その辺に深い意味はなさそうだ。
ゲームで庵の火は青いんだから青で良いんだよ、ということだろう。

THE KING OF FIGHTERS

ポスターで普通に紅い炎出してるのはそんなん聞かれても知らん。

俺には無理だ……
ついに泣き言を言い出す草薙京。
しかしそれも無理はない。草薙京は本来、闘いには向かない、父親思いの心優しい青年なのだ。

不知火舞は浮浪者達を掻い潜り、神楽ちづるの元へ駆け付ける。
傷口は炎で焼け爛れ、彼女はすでに瀕死の状態だった。
不知火舞に後を託し、神楽ちづるは遺体も残らず、ゆっくりと光の中へ消滅する。
この空間で死ぬということは、そういうことなのである。

神楽ちづるの遺志を受け取った不知火舞は八咫の鏡を手に取り、草薙京、八神庵の元へ走る。
再び行われる神器トライアングル。



不知火舞が普通に神器を使っているのが気になるが、別に一族じゃなくても使えば使えるようだ。

今度は効果があったか――に、思われた。
しかしルガール・バーンシュタインはさらに深く魂をオロチに捧げた。
暗黒のオーラが降り注ぎ、凄まじい衝撃と共に弾き飛ばされる三人。
結局、散々引っ張った三種の神器はクソの役にも立たなかった。
ちなみにクソの役にも立たないと言えば、現在、一人でマチュア&バイス&浮浪者と戦うハメになっている
テリー・ボガードはフルボッコにされているのだが誰も気に止めようともしない。酷い。

闘志こそ死んではいないが、意識が混濁している様子の不知火舞。
獣臭のする息を吐きながら、そんな彼女にゆっくりと忍び寄るルガール・バーンシュタイン。
だが、それを止める男がいた。

俺が相手だ……!

草薙京である。
実写版草薙京は弱い。下手したらMr.BIG? よりも弱いかも知れない。
やはり力の差はどうしようもなく、いいように嬲られる。
頼みの草薙の剣さえ奪われ、叩き折られてしまった。
血塗れの姿。痣だらけの顔。情けない。弱い。みっともない。見苦しい。

『俺はバイクの修理工だ。ヒーローじゃない』

そんなことは解っていたのに、自分を愛してくれた父が、八神庵との宿縁が、不知火舞への想いが、
草薙京に奇跡の力を与える―――!
トドメを刺すべく放たれるルガール・バーンシュタインの極大の炎!
青白く輝く草薙京の手には日本刀の柄が、鍔が、刃が―――!
今、この瞬間生み出されたまったく新しい「草薙の剣」が、草薙京の腕に宿っていた!

甦った草薙の剣はルガール・バーンシュタインの炎を一刃で斬り払う――!
再び振り仰いだ刀にはついに真紅の――! ついに草薙の炎が宿る――!



草薙の炎が、オロチの暗黒パワーを斬り裂いて―――




燃えたろ?(アドリブ)」

ルガール・バーンシュタインは炭化して爆発霧散した。
燃えたろ?」ではない。燃えたどころではない

いささか燃やしすぎの感があるし、結局、主人公・不知火舞ではなく
主人公でもない草薙京がルガール・バーンシュタインを倒してしまったが、
これによりマチュア&バイス&浮浪者達の洗脳も解け、彼女達、浮浪者達、
何より集団リンチを受けていたテリー・ボガードも救われることになった。

そして当然、世界の危機も救われたのだ。



現実世界。
犠牲になってしまった神楽ちづるのため、精霊流しを行う
不知火舞、草薙京、テリー・ボガード、そしてスコット(誰?)達。

草薙京は草薙柴舟、神楽ちづるの代わりに伝統を守ってKOFを続けることを決意する。
任務を終えた不知火舞とテリー・ボガードはCIAへと戻り、
結局、八神庵→不知火舞←草薙京の三角関係は、舞が二人とも振る、という顛末となったようだ。
さすがは魅惑のくのいち忍法帖。所詮は任務によるお遊びだったのだ。
オロチよりもルガールよりも、恐るべきはビッチだった。

しかし、精神的に大きく成長した草薙京にはもはや亡き父、草薙柴舟の霊さえ視えていた。

京よ、宿命と向き合うときだ。この旅で得た真の友を――信じろ

草薙京の視線の先には離れのベンチに佇む、八神庵の姿があった。
父、草薙柴舟を殺した男、八神庵。交差する視線。
闘う宿命の草薙一族と八神一族。因縁の二人。今後、また敵対することもあるのかも知れない。
だが、草薙京にはもう、憎しみもわだかまりもなかった。



京「炎が――お前を呼んでるぜ!(アドリブ)」

つまりは BLエンドである
ベンチでこのポーズは完全に「やらないか」の人だし。仕方ないね。




よっ! 日本一!(アドリブ)」