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THE KING OF FIGHTERS 2003

THE KING OF FIGHTERS 2003

2001でネスツ編が完結し、2002はストーリーなしのドリームマッチ。
そして今度の2003は新章突入、
現状アッシュ編と呼ばれている新ストーリーが展開することになった。
それに伴ってシステムも大幅に変更されており、今までの団体戦方式ではなく、
リアルタイムで交代しながら闘うマルチシフトというシステムが敷かれている。
簡単に言えば、CAPCOMのvsシリーズのアレ

しかしこれまた交代攻撃が強すぎることは
多くのプレイヤーが概要を聞いただけの段階で薄々解ったのではなかろうか。
無敵付きの交代攻撃が当たると出現攻撃まで繋がり、
さらにそこから交代したキャラの連続技が入ってしまう。
加えて投げに対して無敵のつく状況が極端に減り、
起き上がりに投げと打撃の二択だけで終了などという悲惨なバトルを演出した。
これらの壊れシステムを最大限利用でき、かつそもそものキャラ性能も高いデュオロンと大門は
DDコンビと恐れられ、ゲームバランスを葬り去るのだった。

それ以前に、このゲームに触れた瞬間、全てのプレイヤーが違和感に襲われたことと思う。
プレイ感覚の微妙な変化は旧シリーズでも幾度も行われて来た調整で、
また新作感を感じさせてくれる要素でもあったのだが、
この2003は満場一致で“改悪”であるためにその限りではないだろう。

吹っ飛ばし攻撃がないだとか、空振りキャンセル、押しっ放し先行入力が出来なくなっただとか、
この辺は調整であるとしても、ヒットストップ関連の基本的な挙動がオカシイ。
そしてSVCに続いて技が出ない。音がショボイ。
SE関連は2002で作り直された際にはまだマトモだったのに、SVCよりさらに悪くなっている。
SVC→KOF2003と続いたこの2003年はまさしく暗黒時代真っ只中と言えるだろう。
かくして、“SNK PLAYMOREは旧SNKを冒涜するク●ゲーメーカーである”という
強烈なアンチ感情を一身に背負うことになったのであった。

こうなってしまった最たる原因はやはり開発費(開発期間)であると思うので、
色々と問題もあったEOLITHとの絡みだが、
何だかんだでお金を出してくれるというのは大きかったのではなかろうか。
少なくとも、KOF2002でバランス調整に集中する開発期間を提供してくれたのはEOLITH資金だろう。
そしてそこが致命的に欠けているのがこの暗黒時代の二強(SVC&KOF2003)である。

そもそも一度全てを失ったばかりかグチャグチャになっている状況で
KOFを中心としたビッグタイトルを扱うのは“不可能”だったのだろう。
木造りのナイフで芋の皮を剥くようなものだ。
出来ないことを無理にやった結果がこの暗黒時代の惨状だったのではなかろうか。



PlayStation2版

THE KING OF FIGHTERS 2003 ARRANGE
と、対戦以前の段階ですでに粗雑と言わざるを得ない今作なわけだが、
PS2版では例によってコマンド入力が易しく…… というより正常になっている。
さらに起き上がりの投げ無敵も長くなり、投げと打撃の二択が弱体化。正常化。
当然、DDコンビの一角、大門もおとなしくなったことになる。
さらに曲の質は復活したものの音質は今一歩だったBGMはPS2音源でアレンジされ、
加えてマルチシフトに馴染めなかった層のために従来の3on3モードまで搭載。
あんなに酷かった2003があら不思議、ある程度遊べる出来になっているのである。

とはいえSEのショボさやヒットストップの違和感などはやはり2003なので良作とまでには至らないが、
調整不足のまま発売されてしまったNEOGEO版の無念を晴らしてくれたのは嬉しい。
オプションでNEOGEO版同様のシステムに切り替えも可能で、
明らかにNEOGEO版よりも出来の良い移植である。
どうせならSEも旧作からのコピペで良いので手直しして欲しかったのだが……
やはりコピペで良い部分はコピペせず作り直して欲しい部分はコピペのクオリティは覆せなかった。

KOF2003 STORY

KOFと言えばストーリー。
ということで、今作からアッシュ編が始まったわけだが、
とりあえず触りというとこで謎を提示して終わるに留まっている。
神楽ちづるの八咫の力を奪い取った新主人公、アッシュ・クリムゾンは何者なのか?
ボスのムカイを始めとする『遥けし彼の地』より出づるモノ達とは?
オロチを起こそうとするその目的は? といった所だ。

2001からの引きとしては、
龍に「あの龍の気に比べれば、ネスツなど何の魅力もなくなる」とまで言わしめた
椎拳崇に眠った力“龍の気”のことがすっかり忘れられ、
そもそも拳崇自体がリストラされているのが注目点だろうか。
龍及び飛賊絡みと、結局K'の記憶はどうなったのか? 等の放置された疑問の数々は、
次作、KOFXI以降で明かされて行く模様である。

THE KING OF FIGHTERS 2003 FLAME OF NOVA
ゲーム中のストーリー展開とは別に、今回何と言っても外せないのが、
公式ストーリーのテキストだろう。小説的に読み物として楽しめるうえに
あくまでオープニングストーリーとして軽く読める適度なボリュームのテキスト。
当然、文章力も確かで、確実に歴代最高の物が用意されている。
この点では確実に旧SNK産KOFを超えたと断言出来よう。
シリアスなストーリーは乾いた空気が伝わり、ギャグ調のモノは何も考えずに笑える。
女子高生チームのストーリーは何度読んでも笑えるので公式サイトから是非!
ムックには公式サイトにないボスキャラクターのストーリーも載っているのでチェックされたし。

[K]画伯

21世紀のドット絵

僕が、PLAYMOREは決して手抜きしてるんじゃない! 本気でやったうえで駄目だったんだ!
ということに最初に気付いたのが今作KOF2003であり、そしてシェン・ウーのドットだった。
「絵が古い! コピペはやめろ! 描き直せ!」というユーザーとして当然とも言える意見ですら、
「描き直したら余計悪くなるから……」という現実の前にひれ伏した。
コピペ批判派でも、テリーはMOWのコピペにしてくれ! と今回ばかりは思っただろう。
2001、2002の背景辺りに感じた手抜き感とは違う。
2003はガラッとシステムを変えて来たし、制限の中で一生懸命作っているのは伺えてしまうのだ。

とはいえ、実際、ドット絵に関しては何もPLAYMOREの技術だけが低下しているわけではない。
3D全盛のこのご時世、ゲーム業界全体でドット技術が低下しているのである。
すでに失われつつある異能芸術の域に達しつつあるのだ。
新鮮さが欲しいのは当然だが、旧SNKの職人が手掛けた芸術を残すことに
すでに価値が発生していることも事実だろう。

そして、PLAYMORE後にも、素晴らしいドットのキャラも確実に存在する。
SVCのデミトリの\強P時のマントのなびきなど、あまりの美しさにため息が漏れてしまう。
この2003で言えばデュオロンなどもそうだろう。
まだPLAYMOREには異能を極めたドッターさんが存在しているのだ。
ゆくゆくは旧SNKレベルまでの復活、いやそれ以上の21世紀たるドットを期待したい所である。

なかったことにしてください

■アイドル拳法 麻宮アテナ
PLAYMOREになってからアテナがどうもオカシイ。
とりあえず見た目を見ても、“韓国版アテナ”ことメイ・リーを引き立てるためなのか?
と邪推さえしてしまう2001のバッサリショートカット。もはやアテナに見えない。
'99でショートにしただけで概ね不評だったはずなのだが……
2002ではジャージか? これジャージなのか? と思わせる不思議な衣装。韓国での流行り?
2003に至ってはこれは本気か? ギャグでやってるのか? どちらとも付かないレトロなアイドル衣装。
このイラストでは見えないが胸はハート型に空いており、ハートに変わったヘアバンドの飾りと共に、
ハート型のサイコボールを撃ったり等、とことんハートにこだわっている。

この辺はショート好きもいるだろうし、趣味の範囲としても、セリフ群は明らかにオカシイ。
2002ではMAX発動で「ガラガラゲッチュ!」 MAX2で「胸キュン? ですもの!」
勝利ポーズで「もぎたての……プルプルよっ!!」などと意味の解らない言語を用い出した。
詳しくないのだが、どうも現実のアイドルのパロディらしい。



攻撃時に笑顔を見せるようになったのはいつからだろうか。
少なくとも旧SNK時代は気合の漲った良い表情をしていたように思う。
確かにアイドルではあるのだが、格闘に関しては正義と平和のため、
真剣に取り組んでいたはずなのだ。
それ以前に、満面の笑みで人を蹴たぐるアイドルなど怖すぎる。
昔置いていた観覧者参加型辞典のアテナの項に、
>プレイモアアテナはきっと楽屋で煙草をふかしながら
>「ジョンやケンスウって超ウザ!」などといってるに違いない。

といった書き込みがあったのだが、あまりにリアルですでに生々しい

キデ画伯

中国拳法の達人だった頃の面影はもはやなく、すっかりなんちゃってアイドル拳法になってしまった。
とりあえず、なかったことにしてください



PICKUP
DARK
アッシュ・クリムゾン
 
決め台詞 弱いしウザイしその上しつこいし、
生きてる価値あるの? アハハ♪
新章突入ということで新たに設定された緑色の炎を使う新主人公。
そのキャライラストが公開されたとき、界隈は阿鼻叫喚に包まれた。
キモイ。実にキモイ。
こんなのがKOFの新しい主人公なのか。これからこんなのと付き合わなければならないのか。
一体何がどうなっているのか。KOFは本当に大丈夫なのか。
草薙京、K'と文句なしにヒーローだった面々が張って来た主役を、
これからはこんなキモイのが張ろうというのである。PLAYMOREの考えがまったく解らない。

それが多くの第一印象だったのは間違いないだろう。
しかしこのアッシュ・クリムゾン…… 何かの間違いでキモイのではなく、狙ってキモイのである。
公式ストーリーで「美男子かといえばそうではないが」とまで書かれている主人公を僕は知らない。
そう、彼はそもそもヒーローではないのである。
彼はそのキモイ顔の通りに狡猾で、何を考えているのか解らない。
緑の炎や立ち振る舞いは謎に満ちていて、キモさがなければ成り立たない。キモさこそがステイタス。
その辺をイメージして作られたキャラだと判明した後、コケティッシュな言動もあいまって、
彼は“キモカワイイ”という不思議な単語と共に受け入れられていた。
女性ファンを中心にして、すでに間違いなくKOFの人気キャラの一角である。

xyz画伯

ただ個人的には、この2003ではどうも使っていて面白くないのが残念。
かつての旧SNKには確かに“使ってみて初めて解る”魅力という物があったのだが、
アッシュは秀逸なデザインに実際のゲームでの彼が負けているように感じる。
主人公なのに溜めキャラというのはまぁ良いとしても、
どうもイラストのイメージに比べて足が短くなかろうか。どこか決まらない。

加えて、超必が何の芸もないサマー連発というのが頂けない。
旧SNKは例え流用技を作ったとしても、庵の析爪櫛のように見る価値のある一芸を見せる。
何個か例外はあれども、確かにそれを美徳としていたはずだ。
アッシュに限らず、2003の新キャラはデザイン負けが多いので、
やはりまず根本はゲームなのだと改めて思うのである。

尚、決め台詞の項はボイス入りではない、ただの勝利メッセージなのだが、
あまりにも“アッシュ・クリムゾン”を印象付けるそのインパクトゆえか、
あるいはロケテへ行った人達に早い段階でネットにUPされたせいか、
アッシュの名言として幅広く浸透している。
こんなことをサラッと言ってのけるのが主人公というのはやはりただ事ではない。

PICKUP
DARK
まりん
 
決め台詞 やっちマスッ!
萌え! 萌え! 萌え!
旧SNK末期時にすでに侵食されつつあり、批判も生んだキャラ萌えへの傾倒だが、
その後、時代はネットの普及もあってか日本規模で空前の萌えブームに入ってしまった。
しかも何故かギャルゲーが同人で格ゲー化されるのが流行り、
キャラクターファンではなく、格ゲーマーの領域にさえ萌えの人が入り込んで来たのである!

ギャルゲーを格ゲーにするという発想が僕には全く解らないのだが、
市場としてすでに無視出来ない存在である“萌え”を取り入れないのはメーカーとしての損失であり、
絶滅しつつある2D格闘の生き残る道のひとつでもあるのは事実だろう。
元々KOFは餓狼や龍虎のようにド硬派な世界観ではないので、
萌えキャラの入り込む余地も充分にある。
旧来のファンはこういうテイストが入ることに腹立たしい思いがあるかも知れないが、
その辺は時代の流れとして許容するしかないだろう。
極端な話、2D格闘は“萌えるか、滅ぶか”という二択を突き付けられているに等しいのである。

SNK PLAYMOREも当然、新作を出す度に新たな萌えキャラを次々と投入して行くのだが、
何故かその度に空気キャラが生まれることになった。
その第一弾が、このまりんだろう。
女子高生チームらしく制服で現れて戦闘コスにチェンジ、かわいいボイスにかわいいセリフ。
明らかに狙った萌えキャラだったと思うのだが…… コスがジャージだったのが悪かったんだな、多分。
設定資料に「ジャージと同じ」と書かれているので、“ジャージに見える”のではなく、本当にジャージ
個人的は結構好きなのでコスチュームチェンジで化けて貰いたいところである。やっちマスッ!

ちまち画伯