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THE KING OF FIGHTERS XII

THE KING OF FIGHTERS XII

KOF15周年に合わせたわけではないのだろうが、
前作KOFXIから3年以上の時を経て登場したKOF正統シリーズの12作目。
ラ イ バ ル な ど 、 い な い 。 とキャッチコピーで言い放つ、
ついに行われた全キャラ描き直しの次世代ドットが最大の売りである。
そのドットの凄味はここで低画質のスクリーンショットを貼るより公式の、
KOFXII 2D DOT GRAPHICS GALLERYを見て貰おう。
遠目に見れば、一見、絵画がそのまま動いていると錯覚しても不思議でない美しさ。
しかし、目を凝らせば確実に一点一点ドットで刻まれている、精巧なドット絵であることが解るだろう。
制作工程の項にある通り、壮大かつ緻密な作業の果てに生まれた新たなKOFキャラ達の姿である。

だが、その天文学的な作業量が犠牲にしたものはあまりにも大きく、
まず、キャラが元祖KOF'94よりも少ない20人(家庭用で+2人)で、尚且つボスもいない。
キャラクターが揃わないのに話を作れるはずもないわけで、今作は、
散々伏線を張ったKOFXIから3年も経ったにも関わらず、ストーリーがない
開幕デモがない。掛け合いがない。挑発がない。勝利ポーズも一種類。キャラ別EDもない。
さらに何と言っても技が少ない。
必殺技は当然、通常技も基本、遠距離攻撃が存在せず、キャラ別に1、2個付いているだけなのだ。
何もかもがボリュームが足りない。

曲やステージも少なく、ストーリーがないから今回はお祭りだ! という雰囲気でもない。
このKOFXIIは、どう見ても作りかけである。

そんなこともあってか、KOFの新作なのにも関わらず、
アーケードではまず入荷している店から探さねばならず、家庭用は早々に投げ売り、
ネットではネガキャンの嵐という散々な憂き目に遭うことになった。
冷静に見れば、スト4、BLAZBLUEが好評稼動及び発売中な中、
確かにわざわざ作りかけの後発ゲームをやり込む理由は見当たらない。まるで皆無

THE KING OF FIGHTERS XII OFFICIAL GUIDE

しかし、格ゲーとしての挙動自体は決して悪いものではなく、
むしろPLAYMORE以降に(コピペではなく)一から挙動や当たり判定を作った格ゲーの中では、
最も違和感なく動いてくれるゲームと言って良いだろう。
対戦部分だけなら充分に楽しめる作品である。

中身はパッと見、いつものKOFの延長に見えるが、実は地上戦に特殊なルールが採用されている。
まず、全ての通常技に投げ無敵が付いている。
これによって投げようと思っても小足連打等で簡単に潰されてしまう。
しかし、その弱攻撃は、強攻撃と攻撃判定が接触すると確定で潰され、カウンターヒットとなり、
通常より遥かに長いやられモーションを晒すことになる。
何とカウンター確認後、ダッシュからフルコンが確定するほどの隙である。
加えて、その強攻撃もカウンターヒット後にオリコンが発動する新システム、
クリティカルカウンター(以下CC)の始動技とかち合った場合、確定で負けるようになっている。

つまり、投げに対しては小技等で追い払い、小技に対しては強攻撃でカウンターを取り、
(ゲージがあればCC始動技で一方的にカウンターを取り)
カウンターを恐れて手を出さないのならば投げる、という3すくみが発生しているのである。

最大の狙いは当然、リターンの最も大きいカウンターであるが、
しかし簡単にカウンターが取れてはゲームにならないので、
今作の強攻撃は全キャラ、全技共通で、非常に振りが重い。発生も硬直も長く、空キャンも不可だ。
(なので実際は強攻撃の発生前に弱攻撃で潰す、という選択肢も生きてくる)

カウンターからのコンボは新鮮かつ爽快で、重い通常技を打ち込む地上戦、接近戦が実に熱い。
オリコン発動のCCは、良い一撃が入ったら踏み込んで一気にラッシュをかける
現実の格闘技のようでテンションが上がる。
これが今作のコンセプトとして度々発言された“拳と拳のぶつかり合い”なのだろう。



硬派一徹“拳と拳のぶつかり合い”をやりたかった形跡は20人のキャラ選にも見られ、
空手、柔道、ムエタイ、中国拳法――いずれ劣らぬリアル格闘技の使い手達が顔を並べている。
女性キャラはアテナとレオナのたった二人しかいない。

ピータン画伯

ドットでも各キャラ筋肉が強調され、一見、現代に甦った武力ONEなのか? とさえ思わせる面子である。
格闘スタイルが魔哭冥斬拳・呪怨抖勁(まこくめいざんけんじゅおんとうけい)の人は恥ずかしい。恥を知って欲しい。

大会解説者も非常に漢臭い。

しかしこのゲーム、実際は“拳と拳のぶつかり合い”にはならない。
“拳と拳のぶつかり合い”が出来ない。
なぜなら、KOFにはバッタがあるから。いくら地上戦が熱くても、KOFにはバッタがあるのだから。

鈍化した強攻撃や吹っ飛ばし攻撃はバッタへの抑止力を失い、
むやみな地上牽制は逆に跳び込む格好のチャンスを与えることになる。
弱攻撃>強攻撃と繋ぐ基本の連携さえも、いとも簡単にジャンプで割られてフルコン確定だ。
基本的に技自体が少ない今作においてはジャンプを抑制出来る牽制技も極少なく、
ジャンプ攻撃から地上技に繋ぐのが非常に簡単なこともあって結局、バッタが強い。バッタが基本。

バッタの餌食にならないためには強攻撃を自重せねばならない。
ここは普通、リーチの長い強攻撃の先端を置くだろう、という場面でグッと我慢せねばならない。
天敵の強攻撃が来ないとなれば、小足が当然、活躍することになる。
小足ならバッタと噛み合ってもガードが間に合うし、当たれば小足コンボで大ダメージだ。
おまけに投げも通らない。

よって、対戦の基本は小足とバッタということになる。
つまり、KOFXIIは“拳と拳のぶつかり合い”ではなく、“小足とバッタのぶつかり合い”。

おけすけさんの友人画伯

とはいえ、キャラが減ったお陰かキャラバランスは歴代最高の調整ぶりだし、
ゲージも1本、ストックなし、技も少なければ複雑なシステムもなし、覚える要素もCCコンボくらい、
キャンセルやヒット確認も簡単で、連続技も楽ちん、難しい目押しもない今作なので、
KOF初心者と言わず、そもそもの格ゲー初心者が触るにはこれ以上ないくらいに適している一作だろう。

問題はその初心者が一人で触って面白い要素が何もないことではあるが……

バランス  空気
顔を見るだけで死を覚悟せざるを得ないのがKOFの強キャラの伝統だったのだが、
今作では最強が揺るがないとされる京ですら大して強くはない。
歴代で最も弱い最強キャラだろう。
システムバランスこそ上手く噛み合っていない印象があるが、
ここまでキャラバランスが良ければバランス面での不満は感じない。
技や仕様の変更で延々とエグい連携や起き攻めループを食らうこともまずないので、
紳士の対戦ツールとして上品な闘いを繰り広げることが出来る。
ただ、やはり技の絶対数が少なく、次第に単調になって飽きがくる感は否めない。



続・21世紀のドット絵

進歩するどころか停滞し、停滞どころか衰退する一方のドット絵界。
徐々にロストテクノロジー化する技術を今一度、進化させるための挑戦。
それがKOFXIIだったのだろう。
そこで誕生したのは、まさしく21世紀のKOF。21世紀のドット絵と呼べる芸術品であった。

劇的にタッチが変わってしまうことなく、
今までのNEOGEOドットから正統進化を遂げたキャラクター達の新たなる姿。
アニメ調でもなく、イラストタッチでもない。間違いなくドットで描かれた姿。KOFらしい姿。
アートディレクターのノナ氏が徹底的に作監し、
3Dから起こしたパターンはデッサン崩れもなく、一枚一枚に見応えを与えてくれる。
ついに、ついにKOFが生まれ変わったと感動するに余りある出来栄えである。

ただし、あくまでドットの手法についての話である。

最初期に発表されたアッシュ・クリムゾンなどは、
今までのイメージから見事に膨らまされた文句の付けようのない絵だった。
アッシュ、紅丸、シェン、ロバート――後、鎮元斎。
この辺りはKOFファンならば誰もがうっとりとする完成度だろう。恋に落ちてしまいそう。
しかし、次々とキャラクターが公開される中、徐々に雲行きが怪しくなり始める。
――何かがオカシイ。
太すぎる、かと思えば細すぎる、顔が怖い、目が怖い、ズボンの裾ダボダボ、口が裂けてる、



なぜかショボーンとしている、


ワイラーになっている 等、

ドット絵としては非常に良いのだが、画風が実に奇妙なのである。

デフォルメがあまりにも極端なのだ。
結果、手こそ込んではいるが、万人受けには程遠いドット絵達が生まれてしまった。
どうしたことだろうか。
もし全員がアッシュクオリティだったなら、全てのKOFファンが諸手を上げて歓迎したはずなのだが……

極端なデフォルメは、やはりドットで描かれている背景にも滲み出ていて、
どのステージを見回しても、普通の体型、頭身の人間が一人もいない
全員が全員、極端に背が低かったり、痩せていたり太っていたり、魑魅魍魎にしか見えなかったりと、
その様はまるで一条あかりの潜在奥義、劾鬼・百鬼夜行のようだ。エンドレス百鬼夜行のようだ。
この妖気、瘴気……! 完全にかつて物議を醸したノナ節の再来である。

しかも一部ステージはキャラが背景に溶け込んでしまい非常に見辛い。
さらに暗がりに入ってしまうと見辛さに拍車がかかり、もはや小足を見切るのは困難。

見えんがな!

これらが相揃って、KOFXIIのグラフィックは非常にアクが強いと言わざるを得ない。
機能的でもない。第一印象で人を選ぶ。賛否両論を生むのは仕方がない。
最大の売りだったはずのグラフィックが、
逆に第一印象を疑わしくしているというのが皮肉であり、そして何よりも残念。
何も特別なことは要らないのでもっと普通にして下さい。



舞'詐欺

家庭用発売時に何と、完全新規に2キャラが追加されるとの噂が流れた。
先の通りの、XIIドットでキャラを作る大変さを鑑みれば破格の追加要素だろう。
KOFXIIIに先駆けて、まったく新しいドットで新キャラ達が加わるというのだ。

ならば、その2キャラとは間違いなく不知火舞とK'であろう。
単純に人気や知名度、ヒロイン、元主人公といったポジションの重要性は当然、



KOF公式サイトで、時を同じくしてXII規格の舞、K'のイラストが公開されたのだ。
これはもう、公式でアナウンスされたも同然。正式発表前の小粋なファンサービスである。

家庭用KOFXIIには舞とK'が追加される……!
XIIドットの舞が生む迫力(揺れ)は如何ほどのものだろうか? 肌色の面積は? CEROは大丈夫か?
シンプルなキャラの多いXIIの中で、攻め手の多いK'はどう動く?
誰もが想像し、期待した。

だが、追加されたのはエリザベートとマチュアだった。




……誰得!?

いや、この二人も確かにファンの付いている人気キャラだろう。
だがしかし、舞、K'と比べたらどうかッ! 知名度とか重要度とか比べたらどうかッ!
普通に考えたらこの二人より先に舞、K'を作るのではないのかッ!
というか、あの公式絵は何だったのか? あの絵は何のために存在したのか。

K'などは15周年ロゴに抜擢されていながらこの仕打ちである。
おまけにマチュアは必殺技が実質二つしかなく、またあからさまに作りかけであった。
結局、家庭用でも作りかけ感が否めないKOFXIIであった。




だが、それでも、それでもDLCで何とかしてくれる……!
意味不明の惨状に涙した漢達はそれでもDLCに縋ったが、
現状、配信されているのはPS3の場合、1パック150円のカスタムテーマのみである。
(※ 現在はKOFXIIアレンジBGMも配信中)

しかもこのカスタムテーマ、有料なのに各社の無料カスタムテーマ以下の内容で、
実際はただのランダム壁紙でしかない。
アイコンもSEも変化なく、ただ1パック4キャラの壁紙がランダムで表示され、
後は字体がポップ体になるだけである。これを4キャラずつ5パック売っている。

壁紙は4キャラの強制ランダムで、自分で選択することは出来ない。
京の壁紙を目当てで買っても、京、アンディ、デュオロン、ケンスウと強制ランダムなのである。
お金を払ったのに、なぜか1/4の確率でしかお目当てのキャラが登場しない。
字体がポップ体になるのも意味が解らない

だが、テーマ1の京パックはまだ良い方で、アテナメインのテーマ2などは収録キャラが、
アテナクラークジョーライデンである。
アテナ目当てでテーマを買っても、75%の確率で男が出て来る
しかも内わけがガチムチ、パンツ、太ったオッサンである。これは酷い
アテナを餌に売れそうもないキャラを詰め込みましたとでも言わんばかりである。

これらを見るに、今後もDLCでの追加は期待出来そうもない。
追加キャラをとは言わないから、過去BGMでも配信してくれれば良いのですけどね。
(※ 現在は過去BGMも配信中)