第二章 南斗復活
二章開始早々、やはり歩いているケンシロウ。
20秒ほど進んだ先でザコを倒し、また15秒ほど歩いて「んんっ!?」
村人と会話してさらにまた歩くといういつものパターンを経て辿り着いたるは水鳥の村。

だが、その村はすでに死に絶えていた。
今際の際の老人の最期を看取り、喩えようもない哀しみと共に立ち去ろうとするケンシロウ。
その正面、「たった今、修行から帰って来たところだというのに」
説明的な独り言を話す女が、敵意を灯した眼差しで睨み付けて来た。



女が繰り出した拳は、南斗水鳥拳 飛燕流舞。
空極流舞でそれを躱すも、ケンシロウに確かな驚きが浮かんだ。
女が名乗る。「私は南斗水鳥拳伝承者、ザキ!」



かつて、あの義の星の漢レイが修め、牙一族を刻んだりアミバの正体を見破ったりした拳。

「オレはただこの村を通りすがっただけだ」と無関係を主張するケンシロウだが、
ザキもまた心に漢を飼っていた。「言い逃れは通じぬ!」
そして結局、バトルに雪崩れ込む二人。
しかし南斗水鳥拳を以ってしても、一見、水面に浮かぶ水鳥のように優雅で華麗、
だが、その拳の威は比類なき残虐非道の連射パッドの前には成す術もなく、
この無意味な闘いを止めたのはまた女の声だった。



ケンシロウもよく知っている女、マミヤ。
そして「ザキは赤ん坊の頃、村の入り口に捨てられて〜」
聞いてもないのに人の暗い過去を語り出す謎の老人。

ザキはマミヤをお母さんと呼び、マミヤもまた彼女を娘と紹介した。
美しいエピソードだが、引き取ったはずのアインの娘、アスカはどこへ行った

『水鳥の村』という単語は北斗の拳4にも出ていたので、
同じく原作後の世界であるアレと繋げるのならアスカは一人立ちして
『せせらぎのむらピュアビレッジ』に住んでいるということになるだろうか。

…………


妙に辻褄が合っている

コレを作ったのはやはり、東映動画なのではないか?
という疑念がより一層、大きな波となって走り抜ける。

和解するケンシロウとザキ。
村を襲ったのは、南斗牙猩拳。
六聖拳去りし後、覇権へ乗り出したのは
南斗百八派で最も凶暴な流派と言われる、南斗牙猩拳だった。

目的は南斗制圧。従わぬ南斗は全て滅す。
それが、南斗牙猩拳創始者を名乗るギャランという男だった。
新たに創始したならすでに百九派だと思うのだが……

村の遥か西にダザンという街がある。
老人はそう語った。
そこは人で溢れ、当然情報も生きて飛び交っている。
目的は同じく西。牙猩拳を討つと誓ったザキと共に、ケンシロウは再び歩き出した。
いささか歩きすぎの感がするほど歩き出した。





『南斗に伝説あり! 二千年に一人、額に南斗六星の痣を持つ最強の拳士現れり!
 その時こそ、南斗が天へ君臨する瞬間なり!』


街で得た情報から、今度はギャランに対抗しているレジスタンス、
南斗飛翔拳ゼピアという男のアジトへと歩くことなったケンシロウとザキ。



そこで見たのは目を包帯で覆い、すでに光を失ったゼピアの姿だった。



南斗白鷺拳の流れを汲む拳、南斗飛翔拳。
その拳を志したのは他でもない、あの仁星の漢シュウが聖帝十字陵に散ったあの日、
シュウに未来を託された子供こそがゼピアだったからだ。




ギャランに迫られた仲間達、女子供の未来の光とゼピア自らの光、
いずれか選べという残酷な言葉への選択肢は一つだった。
だが、ギャランはゼピアが自ら目を封じた後、無情の矢を放った。

「南斗乱れる時、北斗現る……
 ケンシロウさん、南斗の栄誉のためにも、ギャランを倒して下さい!」


北斗に倒されては余計に栄誉を失いそうなものだが、
傷が治れば自分も駆けつけると誓うゼピアの心をケンシロウは確かに背負った。

「ゼピア…… 仁の星はお前に受け継がれている。
 南斗牙猩拳……! ギャランは必ずオレが倒そう」

場所は聖帝十字陵の遥か西。
ギャランの城へ向かい、ケンシロウ達は再び歩き出した。


…………




車を使えぇぇぇぇぇ!!
協力してやるんだからレジスタンスから車くらい借りろォォォォ!!


恐るべし歩くゲーム。
これで連射パッドがなかったら夢にまで怯えるはめになったであろう。


聖帝十字陵――
かつて聖帝サウザーが師父オウガイのために築いた愛の墓標。
崩れ落ち、廃墟となったはずのそれは何故か建て直され、警備兵がウロついていた。
歩き、警備兵を倒し、歩き、また歩くケンシロウにサウザーの霊が語り掛けて来る。


「許せ…… 我が子よ…… 我が子、ザキよ……」

こ、怖ぁー! そして衝撃!
「お前を捨てたのはこの聖帝サウザーだ」と、
謝罪しながらもどこか高圧的なサウザーの霊によりザキの出生が明らかにされた。

「サウザーが、私のお父さん……?」
ザキにも見えているらしい。霊感の強い二人だった。

会話はたったそれだけで、再び歩き出すケンシロウ達。



ギャランの街で得た情報は、リンがギャランに捕らえられているかも知れないという
一石二鳥のものだった。足早にギャランの城へ向かうケンシロウ。
宿命が鼓動を、血を揺さぶる。
尚、足早というのは表現上のことであって実際は変わらず緩やかに徒歩です。

城へ到着した頃にはもう深夜だった。
歩き、ザコを倒し、歩き、歩いて歩いてギャランの間へと辿り着く二人。

そこで目にしたのは……



リン!
だが、カランコロンと倒れるリン。
「人形!?」

リンを捕らえたという情報はケンシロウを誘き出すための罠だった。
「おのれぇぇ!」と怒りを露わにするケンシロウ。嘲笑うギャラン。



だが、平静を欠いたケンシロウを制したのはザキだった。
村の皆の仇。ギャランを許すわけにはいかない。

激突するサウザーの娘とサウザーのコピペ。
南斗水鳥拳、そして南斗牙猩拳がぶつかり合い、敗れ散ったのは水鳥だった。
ザキの額を覆っていた布切れが弾け飛ぶ。

そこには……



ギャランと同じ、南斗最強拳士の証、六星の痣が!

こ、これは恥ずかしい!
ギャランはサウザーのコピペなので気にならなかったが、女性の額にこの痣は確かに恥ずかしい。
ザキが常に布切れで額を隠していたのも頷けるというものだ。
あと、この時点ですでに二千年に一人ではない

同じ痣、サウザーの娘、そしてサウザーのコピペ。
ここまで揃えば答えは一つだった。
ギャランはサウザーの遺児、そしてザキの兄。

「妹とて、実の妹とて容赦はせぬぞ!」

だが、非情のギャランは妹萎えだった。
父と見紛うほどの踏み込みを伴って、ケンシロウさえ間に挟まず、ザキにトドメを刺す。
ケンシロウは「おのれぇぇ!」と怒りに震えた。

「二千年の歴史の中で、南斗は常に北斗の後塵を浴びて来た!
 だがその屈辱に今日、終止符が打たれるのだ……!」


南斗最強拳士 対 地上最強の拳 北斗神拳
頂上決戦の結末は、連射パッドによって容易く導かれた。
ギャランが倒れると同時に何故か崩れ出すギャランの城。
尚も手を伸ばすギャランの先にはザキがいた。

「ケンシロウ…… 妹を…… ザキを頼む……!」

ギャランはザキを殺してはいなかった。情を捨て去ってはいなかった。
「わかった」と頷き、ザキを抱え上げるケンシロウ。
だがそこで、ついに天井が巨大な岩石となって襲い掛かって来た。
雄叫びを上げて上着を弾き飛ばし、半裸となって立ち上がるギャラン。



その姿は、聖碑を支える父の盟友、シュウのようだった。
気がついたザキが兄の名を叫ぶ。
だがケンシロウはザキの叫びを無視して城を去った。
岩を壊してやれば良いのに……

「南斗最強拳士の伝説は崩れた……
 またしても南斗は北斗の後塵を浴びるのか……!」


その態度に不快感を持ったのか、また北斗への恨み辛みを言い出すギャラン。
そこに再び、サウザーの霊が降臨した。

『それで良いのだ、ギャラン。
 ギャラン、お前の身体の無数の傷…… それは愛を断ち切るために自らつけた傷。
 お前もまた愛深き故、愛を断ち切って生きて来た。
 最強拳士の伝説は崩れた。
 だが、ザキが、あるいはその子がその伝説を受け継ぐであろう。
 それで良いのだ、ギャラン』


書き出して、何度か読み返したが何が良いのかよく解らないサウザーの霊の言い分。
結局のところ、サウザーは死んだ後も打倒北斗を諦めていないらしい。



あの潔い最期は何だったのだろうか?

ギャラン、お前弱いし使えねぇよー
まぁこれは南斗最強拳士関係なくお前が弱かったってことで良いんじゃね?
南斗は強いっつーの。オレの時代はもっと強かったっつーの。
そもそもまだ一応、最強拳士伝説はザキがいるわけだし。
でもザキはギャランよりもさらに弱いんだよなぁ。
あ、そうだ、ザキの子供。オレの血筋は生きるしそいつが北斗を殺れば全然OK。
『それで良いのだ、ギャラン』

という風にしか解釈出来ないのだが……

「ギャラン…… お前もまた、極星の孤独の宿命に生きた男……
 安らかに眠れ……」

ケンシロウの言葉が物悲しかった。

あと、ゼピアは結局、来なかった



第二章 完