美形会議SPECIAL
「やぁ! 餓狼伝説の美形キャラ、アンディだよ」




「ぃよっしゃ! わいが龍虎の拳の美形キャラ、
 誇り高きヤングタイガーことロバート・ガルシア様や」




「…………」




「右京さんや」




「サムライスピリッツの美形キャラ、橘右京さんだね」




「八神庵だ」




「なんでお前、最初から来とんねん」




KOF MAXIMUM IMPACTの収録まで俺はまだ少しあるんでな。
 今はNEOWAVEの他に特別な仕事はない」




「ん? 僕も出演するNEOWAVEは解るけど、
 MAXIMUM IMPACTとやらは何だい?」




「何だ、知らんのか。今度PS2で発売になるオリジナルKOFのことだ」




「それはリンク先を見れば解るけど、僕がいないじゃないか。
 出演依頼の連絡もまだ入っていない」




「まぁまぁアンディ、これからやろ。
 見たところ美形キャラはまだ公開されてへん(2004/4/26)みたいやし、
 わいらはトリもトリの大トリっちゅーこっちゃ」



「ま、まさかロバートさんにはすでに出演依頼が!?」




「いや来てへん」




「…………」




「むぅ…… 初めてのポリゴン化だから緊張してしまうな。
 すでにポリゴン化している貴様等の心構え等を俺に教えろ」




「ガハァ!」




「血を吐いた!」




「右京さんが血ぃ吐きよったで!
 せ、せや! あかんかったんや! ポリゴンとか言うたらあかんかったんや!
 侍キャラにポリゴンちゅー単語は何よりも禁句やったんや!
 ポリゴンだけは言うたらあかんかったんや!!」


「ウゴハァ!」




「な、何だ、心的外傷だったのか……
 俺としては高画質ビジュアルや気味が悪いほどの滑らかな動き等、
 ポリ…… いや、高次元映像への指導要領に準拠した体験談が
 参考になればと思っただけなのだが、ならばアンディ・ボガード、貴様が教えろ」


「僕かい? うーん……」




「まぁアンディはそもそも高画質ビジュアルやなかったからな」




「……そうだね」




「しゃあない、わいが教えたろか。
 モーションキャプチャーやったらわいの専売特許や。
 倒れた相手のドツキ方から裏拳で垂直に浮かす方法までなんでも聞いたってくれ」



「何を言っている。
 貴様はこのメンバーの中でただ一人ポリゴン化していないだろう。
 相方のリョウ・サカザキは二度もポリゴン化しているが貴様だけしていない」



「何やアンディ、こいつ調子乗っとるで」




「ホントにな」




……!?




……!?




「あ?」




「き、貴様、京! 何をしにこの美形会議に現れた!?」




「……空気読め!」




「何って、紅丸に頼まれちまってな。聞いてねぇのか?
 何でもSPECIALだからゲストが要るだとかで、それで俺なんだとよ。
 俺もこんな場所に八神が居るとは思わなかったぜ。
 で、何? 美形会議?(笑)」


何を笑っているキョオォォォォッッ!!




「や、八神君、落ち着いて!」




「せや、ここはまず冷静に状況を整理するんや!」




「で、八神はともかくアンタらのポリゴン化って何? 背景?」




キョオォォォォッッ!!




「ロ、ロバートさんも!」




「何だ、テンション高けぇなぁ。
 まぁそういうわけだからよ。テキトーにゲストしてやっからテキトーに進めてくれ。
 ギャラでユキに服買ってやる約束なんだ」



そのまま死ね




「何だよ、態度悪ぃぞてめぇ、荒らし扱いかよ。俺はゲストだっつーの。
 で、ポリゴンはどうなったんだよ」




「……ポリゴンは……駄目だ……」




「ああ、草薙君。もうポリゴンの話題は終わったんだ。
 僕らも次のステップに進もう。
 ずばり美形キャラの定義を完全に煮詰め、
 そしてこれからの美形業界に必要な物を模索して行きたい」


「……RPGも……駄目だ……」




「ああ、わかっとる…… わかっとるて、右京さん」




「ふん、気に入らんが仕方がない。
 京とはこの会議が終わってから決着をつける」




「いや、っていうか何で八神がこっち側にいんの?」




「こ、こっち側!?




「こっち側て何や!? こっち側てどういうこっちゃ!?」




「いや、こっち側はこっち側だろ? アンタらは八神とはポジション違うじゃねぇか」




「な、なんちゅうことを!」




「おま、お前は何を言っている!?」




「……八神庵は……仲間だ……!」




「そうだ! 今まで苦楽を共にして来たんだ!
 八神君は誰が何と言おうとかけがえのないこっち側だ!!」




「貴様等…… 良い奴だったんだな……」




「えっ!? 騙されてるぞ、お前!
 コイツらは間違っても善意で言ってんじゃねぇぞ!?
 むしろ陥れようとしてんだぞ!? 目ぇ覚ませ!!」



「目ぇ覚ますのはお前の方や!
 草薙お前こっち側て、美形キャラと時代遅れの寒いキャラで
 勝手に境界線引いとんやないぞ!」



「そうだ、そこまでだ京! 俺はこういう無駄な時間が嫌いだ!」




「何言ってんだ、八神! お前は違うだろ!?
 お前は暗い路地裏で乾いた風とすれ違うような
 今を生きる若者の感性にフィットした俺と双璧の人気キャラだろ!?
 お前は地味で不人気かつ影も薄いのに
旧世紀の名残りで設定上は美形キャラということになっている
もはや存在するだけで屈辱的な気恥ずかしささえ漂って来るような
長髪オールバックや長髪真ん中分けの生き恥キャラとは違うだろ!?」


「ガハァ!」




「血を吐いた!」




右京さんに謝れぇぇぇ!!




八神ィィィ!!




ごぉおおぁ!!




うぅぉりやぁぁ!!







「なんだか、会議のはずなのに闘いが始まってしまったね」




「せやな。ホンマ仲悪いな、こいつら。わいもよう付き合わんわ」




「まったくだね。最近の若者は教育がまるでなっていないよ」




「せや。まったく親の顔が見てみたいで。しょーもないことでキレすぎや。
 気ぃ短いヤツは金も貯まらん。人気も逃げてくで」




「彼らもそれさえなければ僕らのように
 美形キャラとして確固たる地位を確立できただろうに……
 いくら厳しいこの業界で生き残るためとはいえ、
 こういう美形キャラの醜い蹴落とし合いは本当に嘆かわしいよ」


「ぬばたまの 闇にうかぶる不知火の かぼそきいのちの あはれなりけり」




「まぁこれからの美形業界のためにもわいらはわいらで会議進めよやないか」




「うむ、全く進んでいないので進めるというより
 始めると言った方が表現的には正しいけど、
 より良い美形キャラのために、健全な美形業界の在り方を話し合おう」



「ゴ、ゴホッ」




「何や右京さん、それはこれからの美形業界には吐血が必要っちゅう
 一種のボディランゲージでっか?」




「……いや……単に……体調が……」




「確かに、美形キャラと吐血は大根おろしとしょう油のようなものだ。
 右京さんはもちろん、僕や八神君も吐血で多くの女性ファンを魅了している」




「わいは吐血はせぇへんな。ええもん食うとるからやろか?」




「いや、食べ物の話はただの例えですよ……」




「ゴ、ゴホッ」




「ホンマ大丈夫でっか? 右京さん。
 ボディランゲージがダイイングメッセージちゅうオチはあんまオモロくないですよ」




「……いや……暑い……」




「そうか、草薙君と八神君だね」




「ったく、しょうのないやっちゃ。
 おい、お前ら! いつまでドツキおうてんねや!
 お前らのドツキ合いは暑苦しゅうてごっつ迷惑なんじゃ!
 そろそろええ加減にせぇ! 暑苦しい美形キャラがおるか、ボケ!」


「右京さんも怒っている!」




「いや、すんませんでした」




「え!? 何謝ってんの、お前!?」




「まぁ実際、君達の謝罪などはどうでも良いんだ。
 ところで草薙君も居ることだし、ちょっと話しておきたいことがある。
 KOF2003の主人公、アッシュ・クリムゾン君は知っているよね?」



「いや、むしろアンタが知らねぇんじゃねぇか? リストラされてるし」




「話の腰を折るな! 僕だってEDで出演している!!」




「そういやアイツ、溜めキャラなんやな。
 っつーか、技が溜めキャラ時代のわいのパクリやんか。
 こらエゲツないで。モロパクリやんか。かつてのわいそのものや。
 ルックスではわいが圧勝しとるし、そんなんで主役張れるんやからこら相当裏で金回しとるで」


「さすがはロバートさん、そこが問題なんだ」




「やっぱ金かいな!」




「……いや、お金の話はいいんだ。
 アッシュ・クリムゾン君も、そして草薙君も主人公なのにも関わらず、
 いわゆる正統派、波動(旋風脚)昇龍(弾)キャラではない。
 そこへ来て僕らはどうだろう?」


「コ、コマンド飛び道具に無敵技に突進技!
 せ、正統派や! わいらは完膚なきまでに正統派やないか!」




「そうなんだ!奇をてらって主人公が正統派から外れる近代格闘ゲームでは、
 正統派であることが美形キャラの証なんだ!!
 美形キャラは入門用要素を備えたスタンダードなキャラクターなんだよ!!」



「…………」




「あ……」




「あ……」




「そう言えば橘右京はむしろマニアックな性能だな。
 およそ入門用とは言い難い」




「ガハァ!」




「あ、謝れ、八神庵!」




「右京さんに謝れ!」




「な、何を言っている貴様等!?」




「右京さんに謝れ!」




「貴様は黙れ。
 そもそも俺は正統派と言えるかも知れんが、貴様等は本当に正統派なのか?
 最初の飛び道具からして貴様等はKOFでは飛んだり飛ばなかったりではないか。
 それにロバート・ガルシアはたまに突進技も無い。
アンディ・ボガードに至っては出番もたまに無い」


「な、なんということを!」




「出番のある餓狼伝説ではマニアックな技が多いな。
 ロバート・ガルシアの龍虎の拳ではビルトアッパーに無敵などはないし、
 飛び道具で飛ばせて落とすなど夢のまた夢だ。
 そもそも貴様等は技が変わりすぎだろう。
そんなにコロコロ技が変わるキャラが入門用の正統派キャラなのか?」


「おま、お前は何を言うとんねや!!」




「いや、だからアンタらが美形キャラなのは形の上だけだろ」




「…………」




「…………」




「…………」




「こらヒドイ荒らしや。警察庁ハイテク課に通報せな」




「!? ちょ、ちょっと待てよ!?」




「サイバーテロだね」




「サイバーテロや」




「サイバーテロじゃねぇって! なぁ八神! 俺が間違ってるか!?」




「サイバーテロだな」




「……サイバー……テロだ……」




「……俺が悪かったです。ごめんなさい。
 先生には言わないでください。お願いします」